「セブンティドリームズ」の1巻が、5月9日に発売された。タイム涼介が月刊コミックバンチ(新潮社)で連載している本作は、幼稚園児の娘を持つ高齢夫婦の子育てマンガだ。
コミックナタリーでは単行本の発売を記念し、作者のタイムとNON STYLE・石田明の対談をセッティングした。幼い女児の父親という共通点がある2人。お迎えに行ったときの子供の笑顔、おもちゃのブロックを踏んだ瞬間の激痛など、子育てあるあるに花を咲かせる。
取材・文 / 西村萌 撮影 / 曽我美芽
65歳の夫・朝一と70歳の妻・夕子という老夫婦が、超高齢出産に挑む姿を描く「セブンティウイザン」の続編。2人の娘・みらいちゃんは3歳となり、今年の春から幼稚園へ通うことになった。髪を結ったりお弁当を作ったり、自転車で幼稚園に送り迎えをしたり……夫婦にはまだまだたくさんの夢がある。
1歳8カ月、フォルムが一番かわいいときですね(タイム)
──今回は、おふたりが幼い娘さんを持つパパ同士ということで対談の場を設けさせていただきました。まず、娘さんの年齢をお伺いしてもいいですか?
石田明 うちの子は双子で、1歳8カ月です。
タイム涼介 ああ、じゃあ今が一番フォルムがかわいいときですね!
石田 そうなんですか?
タイム それぞれの年齢で違ったかわいさがあるんですけどね。うちの子は4歳なんですが、振り返ってみると、やっぱり1歳半から2歳ぐらいまでの体型が最高だと思います。あの、ヒヨコみたいな感じ。
石田 あはは(笑)。歩くにしてもおぼつかない感じというか。最近だと言葉も覚え始めて、嫁のことを「ママ」と呼ぶようになりました。僕は「父ちゃん」って呼ばせてるんですけど、なかなか「父ちゃん」とは言えない。「とっとー」とか「とちゃ」とか、ギリギリわかるぐらいで呼んでくれてますね(笑)。
タイム でも双子同士だと、コミュニケーションがとれて言葉の習得も早そうです。
石田 今のところは、双子同士にしかわからない独特の言葉では通じあってますけどね(笑)。タイムさんのほうは、4歳だとコミュニケーション取れまくりじゃないですか?
タイム もう、すごいです……。日に日に言葉を覚えていって、大人たちの会話をほとんど理解してしまう。ごまかしが本当に通用しないので、いかに嘘にならないように本当のことをぼかすかっていうので困ることもあります(笑)。
生まれた瞬間お揃い買いに行きました(石田)
──「セブンティドリームズ」に登場する、朝一と夕子の娘・みらいちゃんは幼稚園に通う3歳です。石田さんから見て、ご自身の娘さんと通じるシーンはありましたか?
石田 夫婦の空気が微妙になってる中、みらいちゃんがいつも通りに振る舞うシーン。うちでも僕と嫁さんが真剣な話をしているとき、子供がめちゃめちゃ“構って”してくるんです。特に最近引っ越したばっかりだったので、役所の手続きとかがあるじゃないですか。「それは俺がやっとくから」「印鑑証明だけ頼むわ」みたいなやり取りを嫁さんとしてると、こっちに来て何かわからへんけどしゃべってるんですよ。「はいはい、ちょっと待ってねー」ってスルーしてしまうんですけど、みらいちゃんみたいに僕らとおしゃべりしようとしてたんやなあって思うと、けっこうキュンときました。
タイム たぶん、子供なりに役に立とうと思ってる節があるんですよね。こっちが真剣に話してると、「ケンカしてるのかも?」と勘違いして、ちょっと和ませようとしてくれる。うちの家庭でもありました。
石田 親がいつもと違うトーンだから、子供のトーンも少し違うんですよね。
──みらいちゃんは自分のことをプリンセスと言ったり、髪型が崩れたら幼稚園に行きたくないと駄々をこねたり、女の子らしい部分が多々あります。おふたりが思う、女の子を育てるならではの楽しみってありますか?
石田 やっぱり洋服ですね。女の子って、服のバリエーションめちゃめちゃ多いじゃないですか。ましてやうちは双子だしお金はめちゃめちゃなくなっていくんですけど、それを買うのがもう楽しいですよね。自分の服なんか、ほんま買わんくなりました。
タイム 全部お揃いで買ってるんですか?
石田 お揃いです。でも生まれる前は、「いや、バラバラのほうがええって! わかりやすいから」ってずっと言ってたんです。嫁さんも。双子で洋服が一緒っていうのはやめようって。だけど、生まれた瞬間お揃い買いに行きましたもんね!(笑)
タイム あはは(笑)。僕は、女の子ならではという話から逸れてしまうんですけど、最近ね、今更ながらすごくいいことを発見したんです。頬にチューしてもらうとか、頬と頬を合わせるのもよかったんですけど、疲れてるときに自分のおでこに子供のほっぺたをくっつけると……もう、たまらんですね!
石田 ははは(笑)。ほっぺにおでこ。
タイム どうしておでこのほうがいいかと言うと、ほっぺとほっぺだと柔らかい同士なんですよ。
石田 なるほど、柔らかさが相殺されていると。
タイム そう。おでこのほうが硬いから、あのプニプニをより感じられます。
石田 へえ、今度やってみよ!
おもちゃのブロックを踏んだ瞬間、共感です(石田)
──石田さんはTwitterを拝見していると子煩悩なイメージがありますけど、お話を伺ってるとタイムさんも相当娘さんにメロメロですね(笑)。
タイム むっちゃくちゃです。だって我が子の姿をチラリとでもいいから見たすぎて、まさに昨日幼稚園の役員に立候補してしまいましたもん(笑)。
石田 すご!(笑)
──では、父親として朝一に共感したシーンはありますか?
石田 細かいところで言うと、みらいちゃんのブロックを踏んでしまう瞬間です。あれ、めちゃくちゃ痛いっすよね。
タイム (無言で大きく頷く)
石田 重力というものがね、あの小さいブロックに全部集中するわけですよ。だから急いでるときとかは最悪です! 踏み込みがさらに強くなってしまいますから。
タイム たぶん、火渡り祭よりブロック渡りのほうが苦行だと思います。
──……なるほど(笑)。心情の面で、共感したシーンはありましたか?
石田 うーん、共感することが多すぎますね。ひとつ挙げるとしたら、朝一と夕子さんが幼稚園にお迎えに行ったとき、みらいちゃんが「パパとママなんで2人なのよー!」ってうれしそうにしてたじゃないですか。うちも子供を両親のところに預けたとき、俺1人で迎えに行くのと、嫁さんと2人で迎えに行ったときの顔って違いますもん。あのときの子供といったら、めちゃくちゃ眩しいですよね。スパーン!って。
タイム わかります。幸せすぎて、「俺は、すでに死んでいてここは天国なんじゃ?」って思うぐらい。
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70歳という年齢が、エッジを強くさせている(石田)
- タイム涼介「セブンティドリームズ①」
- 発売中 / 新潮社
定年退職を迎えた江月朝一は家に帰ると妻、夕子から信じられない事実を告げられる。「私、妊娠しました」。こんな突然すぎる言葉から始まる前作「セブンティウイザン」は、70才の妊娠から出産、娘の入園までを描いた子育てマンガ。大好評につき、「セブンティドリームズ」となって帰ってきた!
- タイム涼介「セブンティウイザン①」
- 発売中 / 新潮社
- タイム涼介(タイムリョウスケ)
- 1976年神奈川県横浜市生まれ。1995年に投稿作「タオル」「お前のそれは万引きとは言えない!!」がヤングマガジン(講談社)主催の月間新人漫画賞を受賞、同誌に掲載されデビューとなる。同年、「フランス」を短期連載。1997年からは「日直番長」を連載し読者の注目を浴びる。以降ナンセンスなショートギャグを中心に講談社以外でも活動を始め、2001年に月刊コミックビーム(エンターブレイン)にて「あしたの弱音」を連載開始。また同誌では2007年から2010年にかけて、架空の格闘技をテーマにした「アベックパンチ」を発表する。2016年には新潮社のWebマンガサイト・くらげバンチにて「セブンティウイザン」を連載スタート。同作の続編にあたる「セブンティドリームズ」が、2018年9月に月刊コミックバンチ(新潮社)で始動した。
- 石田明(イシダアキラ)
- 1980年2月20日生まれ、大阪府出身。中学、高校の同級生である井上裕介と結成したNON STYLEではボケとネタ作りを担当しており、2000年にプロデビューを果たす。2006年に行われた第4回MBS漫才アワードで優勝し、以後多くの漫才コンクールで新人賞を獲得する。2008年には活動拠点を東京に移すとともに同年のM-1グランプリで優勝し、4489組の頂点に輝く。近年は漫才、テレビ出演のほか、舞台や映画の脚本、演出なども手がけている。2019年3月から4月にかけて舞台「つかこうへい復活祭 2019 VOL.1『熱海殺人事件』LAST GENERATION 46」、4月から5月にかけて「春のつかこうへい復活祭 VOL.2『銀幕の果てに』」に出演。5月には声優の石田彰とタッグを組み、「Wイシダ朗読劇『USHIROMUKI』」の公演を行う。