コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第2回 咲坂伊緒「アオハライド」「ストロボ・エッジ」
少女マンガ家として、ときめきに徹する
咲坂伊緒が恋や友情をみずみずしく描く青春ラブストーリー「アオハライド」がついに完結。別冊マーガレット3月号(集英社)にて、4年にわたる連載に幕を閉じた。そして早くも同誌7月号で、新連載「思い、思われ、ふり、ふられ」をスタートさせる。
コミックナタリーでは大型連載の完結、そして新連載を控える咲坂にインタビューを敢行。完結後の率直な気持ちや、「アオハライド」「ストロボ・エッジ」と立て続けに実写映画化を果たした思い、さらには新連載の読みどころを聞いた。
取材・文/門倉紫麻
気付きがあっても、ブレる。そういう生々しいところを描きたい
──「アオハライド」の4年にわたる連載を終えられて数カ月たちますが、今どんなご気分ですか。さみしさが強いのでしょうか。
「ストロボ・エッジ」が終わったときよりは、さみしさは少ないかもしれません。ちゃんと洸を成長させられたので、自分の中での達成感はありました。最初は洸のことを「子供だなあ」と思いながら描いていたんですよ。「もう、何やってんの!」みたいな(笑)。それも含めてかわいいなとは思うんですけれど。私自身がまだできていないことを洸がやってくれたっていう面もあるので、いつのまにかちょっと置いていかれた部分もありますね。
──双葉ちゃんも成長したのでは?
そうですね。恋愛のいろいろがあって、何段階かで変わっていった感じがしますね。双葉も、自分の器というのか、限界を感じている部分があって。割と最初の段階でそれを突破できたところはあったんですが、突破してもまだぐじぐじ悩んで(笑)。でもそんなにバキッと変わることはできないですよね。気付きがあっても、ブレる。そういう生々しいところも描きたかったので。
──咲坂先生の作品は、ふわっとしたムードが漂いつつ、ハードだったり、生々しい部分も描かれていてドキッとさせられます。
それが、私も描いていて楽しい部分です。
──読者としてはずっと2人を見てきて「やっとうまくいった!」という喜びがありました。
私も描いていて、同じく「やっと」と思う部分はありますね。「ストロボ」もそうでしたけど、私、なかなかくっつけてあげないので(笑)。描いていて自分でもじれったいなあと思ってるんですけど……じれったいのが好きなんです。もうっ!て思いながらも描き続けていますね。
──以前、お話を伺った時に「ひとつのセリフを何度も微調整することもある」とおっしゃっていました。「ストロボ・エッジ」の最終回では、駅のホームで蓮に抱きしめられた仁菜子が、蓮に「私も…ぎゅってしたい…していい?」と聞くと蓮が「して」と答えている。「うん」とか「いいよ」じゃないくて「して」じゃなくちゃだめだ……とこだわったとのことでした。「アオハライド」でも特にこだわって微調整したような部分はありましたか?
今回は12巻のラストの病院のシーンで、単行本化の際に4ページ分くらい「間」を足しました。何かひっかかりが足りない……という気になって。
──2人がようやく……のシーンですね。
ここは大事な回だから、と思って描き足しました。照れ臭さが増すといいなと思って。
意外とちゃんとお話を組み立てられてるな、と思った(笑)
──過去の作品をご自分で読み返したりされますか?
ほとんど今はないですね。「ストロボ」は映画になるときに久々に読んだんですが、懐かしかったです。
──変わったなと思いましたか?
絵は変わったと思いますね。でもお話は意外とちゃんと組み立てられているなと……自分で言っちゃうタイプです(笑)。
──おっしゃるように、「ストロボ・エッジ」は非常に完成度が高くてかつものすごくキュンとするものだったのに、「アオハライド」でまたこんなにもキュンとする作品を始められるとは!と思いました。
「ストロボ」は初めての長期連載だったので、どんなネタも初めて描くものですよね。なのでやりやすかったんですが、「アオハライド」を始めてみたら、ふっと思いつくネタが「これはもうストロボでやったなあ」っていうのも出てきてしまって……もちろんそのシーンに必要だと思ったら、似たネタでもバリエーションをつけて描くこともありますけど、まったく同じことをやってもしょうがないので。でも自分の中から出てくるものなので、どうしても似ちゃうんですよね。そういう意味では難しかったですね。
2次元ならではの表現もないか、常に考えています
──昨年から今年にかけて「アオハライド」「ストロボ・エッジ」と続けて実写化されましたが、いかがでしたか。
実写化には漠然とした憧れがずっとあったので、すごくうれしかったです! 2次元の絵が生身の俳優さんにやってもらうとどうなるのかにすごく興味があって。監督さんが2作で違ったんですけど、そうすると全然風合いの違う作品になるんだなあというのをすごく思いましたね。役者さんたちはどちらもすごくかわいくて。「ストロボ」は演出の仕方もかわいらしかったと思うんですけど、「アオハライド」のほうはもう少し大人っぽいかもしれませんね。三木監督の構図が好きだなと思いました。
──やはり普段から映画やドラマを観ていても構図は気になりますか。
なりますね。このアングルは私には描けない、とか難しいなあっていうのを観ていて思います。映像はカメラを動かせばその絵になる、っていうのはうらやましいですね。
──マンガでしかやれない構図というのもありそうですが。
うーん、今は映像の技術もすごいからなんでもできちゃいそうですよね。でも2次元ならではの表現も何かないかなあとは常に思ってはいます。……そんなにポンポン思いつくものでもないですが(笑)。
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咲坂伊緒(サキサカイオ)
6月8日生まれ。B型。東京都出身。「サクラ、チル」でデビュー。代表作は、2007年から2010年まで別冊マーガレット(集英社)にて連載された「ストロボ・エッジ」。2013年には劇場アニメーション「ハル」のキャラクター原案を務める。別冊マーガレット2011年2月号より連載された「アオハライド」は2014年7月にTVアニメ化、同年12月には実写映画化。また2015年には「ストロボ・エッジ」も実写映画化された。同年6月発売の別冊マーガレット7月号にて新連載「思い、思われ、ふり、ふられ」がスタート。
2016年1月22日更新