コミックナタリー Power Push -「坂本ですが?」
ツッコミが存在しない「変」なマンガをアニメ化することへの挑戦 監督・高松信司、声優・緑川光、原作者・佐野菜見鼎談
ネタ切れするのはスタイリッシュじゃない
佐野 そうですね。「こういうのもアリなんだ」って。あとは、これはもう後付けなんですけど、たぶん今の世の中、ツッコミの人口のほうが圧倒的に多くなってるんですよ。だったらもう、ボケに集中したほうが需要があるんじゃないかなって思いまして。
──ネットだとそれが顕著で、「こんなのありえないだろ」というツッコミ甲斐のある要素が含んだ画像が拡散されたりします。
佐野 かといって、ボケようボケようと思って描くとどうしても狙ってる感じがでちゃうんですよね。だからあまりギャグマンガだと思わないで描こうと努めました。
──狙いすぎたボケよりは、ナチュラルに間違ってるっぽいものを見たほうがツッコミたくなりますからね。そのあたりのバランス感覚を大事にされてると。あと「坂本」はずっと1シチュエーションでのボケなのがすごいと思います。大喜利で言うなら「カッコ良すぎる高校生の坂本くん。そのエピソードとは?」という1問のお題にずっと答えているという。ネタ切れはなかったんですか?
佐野 いやあ、それはありまくりです。
一同 あははは!(笑)
佐野 だからこれ以上続けてね、切れ味がなくなっていくのはスタイリッシュじゃないなと思って。
高松 さすが!
佐野 「ぎりぎりスタイリッシュを保てる範囲で終わらせるべきだな」と思って。それがちょうど4巻ぐらいの分量だったんです。
現実世界の中で坂本くんだけがファンタジー
──なるほど。アニメの話に戻しますと、「『坂本ですが?』アニメ化決定、坂本役は緑川光」というニュースを出したときに、坂本役が緑川さんであるという部分に反響が大きかったんですよ。緑川さんは「スラムダンク」の流川楓や、「新機動戦記ガンダムW」のヒイロ・ユイなどクールでカッコいい役柄が多いイメージがあるので、「坂本にぴったりじゃん!」っていう声が多くて。
緑川 ありがたいですね。
──こういう聞き方をしていいのかわからないんですが、「坂本ですが?」を読んだとき、「坂本の役、自分は得意そうだな」とか思ったりするものなんでしょうか?
緑川 それはぶっちゃけ……ありました(笑)。
一同 (笑)。
──とはいえ坂本は、単純にクールでカッコいいわけではなく、「カッコよすぎるのが結果的にギャグ」という、結構特殊な役ですよね。その場合、普通にカッコいいだけの役を演じる場合と意識は変わりますか?
緑川 いえ、坂本くんは自分の中では全然普通にしてるだけなわけで。だから捉え方としては「マンガのキャラクターが普通の世界に来ちゃった」って感じですね。
佐野 まさしくそういうことだと思います。
緑川 SFとかでやってる芝居のキャラクターが、日常に来ちゃったから浮いてるように見えるかもしれないけど、普通にカッコよくやってるだけ。別に狙ってもないですね。
──ヒイロ・ユイが普通の学校に来たらギャグに見えるってことですね。
佐野 坂本くんだけがファンタジーなんですよ。だから坂本くんの声は、現実世界にいないようなタイプの声がいいと思ったんです。緑川さんみたいなイイ声、いないじゃないですか。この世には。
一同 あははは(笑)。
緑川 年々、ほかの現場でも「できすぎてる感があるから1人だけ浮いてる」みたいに言われることも増えましたからね(笑)。
──ならば坂本役はピッタリですよね。
緑川 僕も坂本とはすごく波長が合ってるなって思ったんですけど、僕以上に周りの声優さんから「すごいピッタリだね」って。そんなこと、そうそう言われることもないんですけどね。番組に関係してる声優さんだけじゃなく、関係してない方からも言われたりして。
──佐野さんは、坂本役が緑川さんに決定したときはやはり「ピッタリだ」という感じでした?
佐野 いやー、それがですね……。
高松 私から「先生のイメージはどんなキャスティングですか?」って聞いたときに、最初に名前が挙がったのが緑川さんなんですよ。だけどほかのスタッフからはいろんな意見も出て、とりあえずいろんな人にやってもらおうってことでオーディションをやった結果、「ああ、やっぱり緑川さんかな」っていうところに落ち着きました。
──佐野さん的には、事前のイメージだけじゃなく、実際聞いてみてもピッタリだったと。
佐野 ピッタリどころか、「違和感なさすぎて違和感」っていうか。すごいハマってました。
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- アニメ「坂本ですが? 」
TBS:2016年4月7日(木)26:28~
MBS:2016年4月8日(金)27:10~
CBC:2016年4月7日(木)27:24~(※初回の4月7日は27:10~)
BS-TBS:2016年4月9日(土)25:30~
CS-TBSチャンネル1:2016年4月17日(日)25:30~
あらすじ
この物語は、とあるクール、いや、クーレストな高校生・坂本の学園生活を綴ったものである──。
キャスト
- 坂本:緑川光
- あっちゃん:杉田智和
- ケンケン:檜山修之
- 黒沼あいな:堀江由衣
- カナちゃん:田村ゆかり
- 八木さん:生天目仁美
- エリカ:高橋美佳子
- 安田:鈴木達央
- 角田先生:中田譲治
- 丸山先輩:稲田徹
- 深瀬さん:岩田光央
- 久保田吉伸:石田彰
- まりお:武内健
- 瀬良裕也:森久保祥太郎
- 藤田恵:中原麻衣
- みーちゃん:植田佳奈
- 田中さん:藤田咲
- 森田:前野智昭
- 小林茂:矢部雅史
- 久保田茂美:くじら
- 8823先輩:遊佐浩二
- 佐野菜見「坂本ですが?」1巻~4巻 / 発売中 / 670円 / KADOKAWA
- 「坂本ですが?」1巻
- 「坂本ですが?」2巻
- 「坂本ですが?」3巻
- 「坂本ですが?」4巻
佐野菜見(サノナミ)
1987年4月17日生まれ。兵庫県出身。2010年4月、Fellows! Vol.10A(エンターブレイン)に掲載された「ノンシュガーコーヒー」でデビュー。2011年1月、同誌の読者プレゼント用小冊子「Costume Fellows! 2011」に、6ページの短編「肩幅ひろし」が収録される。2011年8月、Fellows! Vol.18に読切として執筆した「坂本ですが?」が人気を博し連載化。その後、Fellows!の後継誌ハルタ(エンターブレイン)にて連載、2015年12月に完結した。
緑川光(ミドリカワヒカル)
5月2日生まれ。栃木県出身。1988年にテレビアニメ「キテレツ大百科」で声優デビュー。1991年「新世紀GPXサイバーフォーミュラ」の新条直輝役で初めて名前付きの役を担当する。その後もアニメ「SLAM DUNK」の流川楓や「新機動戦記ガンダムW」のヒイロ・ユイ、「烈火の炎」の水鏡凍季也など二枚目かつクールな役を演じるほか、アニメ、ゲーム、特撮など数多くの番組に出演している。
高松信司(タカマツシンジ)
1961年12月3日生まれ。栃木県出身。1983年にサンライズ入社後、1985年に「機動戦士Zガンダム」で演出デビュー、1990年のOVA「機動戦士SDガンダム SDガンダム猛レース」で監督デビュー。「勇者特急マイトガイン」などの勇者シリーズ、「機動新世紀ガンダムX」などのガンダムシリーズに携わったあと、1998年より「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、2006年より「銀魂」を担当。その他の代表作に「スクールランブル」「美男高校地球防衛部LOVE!」など多数。
2016年5月2日更新