コミックナタリー PowerPush - 美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」
豪華アーティスト陣が「セーラームーン」の名曲をカバー! 今明かされる「乙女のポリシー」誕生秘話
武内先生の歌詞は刺激的
──セーラーヴィーナスの「ルート・ヴィーナス」は、キャラソンの中でも人気が高い曲ですね。
深見梨加さんの歌が大人っぽくて素敵でしたね。最近のアニメだとキャラソンはそのキャラクターになって歌うのが主流になってるんですけど、当時は声優さんの素の声で歌っていたから、それがまた良くて。
──「ルート・ヴィーナス」は原作者の武内直子先生が詞を手がけていますが、タッグを組んでみていかがでしたか。
これまた難しい言葉がなくてわかりやすいですし、やっぱりご本人ですから世界観にブレがなくて、すごくよかったですね。詞を先にいただいて作っていたんですが、武内先生の詞は結構長いんですよ。作曲するときはまずはここをAメロにしてBメロにして……って解析していくんですが、それでも余っちゃうところが出たらそれはDメロになったり。
──Dメロ。
普通は何小節で1区切り、ってブロックで分けていくんですけど、小節に収まらない数になってくから調整しないといけない。作業としては大変なんだけど(笑)、刺激的でしたね。サビも毎回言葉が違ったり、作詞家の方にはないセンスで、とても面白かったです。
──武内先生に直接お会いされたことはありますか?
スタッフの慰労会かなんかの場でお会いしましたね。そのときは遅れていらっしゃったんですけど、ポルシェを横付けしてドーンと出てきたのがすごく印象的でした。
アニソンの地位が低かった時代
──「乙女のポリシー」はセールスも30万枚を超えましたが、周りからの反響は大きかったですか。
それが、当時はそうでもなかったんですね。今ほどアニメが市民権を得ていない時代でしたから。音楽家仲間の間でも「アニメなんかやってんの?」って言われるような雰囲気がありました。
──アニソンはエンターテイメントの主流ではなかった。
まったく違いましたね。メーカーの中でもアニメは子供向けという考えが普通で。さっきも言いましたけどアニメセクションの名前は「学芸部」でしたからね。 「みんなのうた」みたいな部署がやってたんですよ。打ち合わせやレコーディングに行っても、席は隅の隅。J-POP担当の人は廊下で会うと一際大きく見えたりして、僕はコソコソしてました(笑)。
──(笑)。
やっと「アニメなんかやってんの?」って言われなくなったのは、1996、7年くらいと記憶してます。
──この「セーラームーン」や、「新世紀エヴァンゲリオン」などのヒット作が終わった頃ですね。
その頃からアニメの社会的な認識が変わって、逆転してきた気がします。もしかしたら今や、アニメが一番大きなセクションになってるかもしれないですね。有名なアーティストさんもアニメ好きって公言してたり、本当にいい時代になりました。それは「セーラームーン」のおかげでもあると思います。
「セーラームーンで何かやりましょうよ」と持ちかけたことがあります
──今回の「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」では、「乙女のポリシー」をやくしまるえつこさんがカバーしています。
もともと相対性理論が好きだったので、非常にうれしかったですね。スウェディッシュ・ポップとか、クロディーヌ・ロンジェっていう女優さんの歌い方が好きでして、やくしまるさんの歌は彼女に似ている気がします。声を張らないで囁くように歌うという。
──サウンド面ではどんな印象でしたか。
僕が認識しているだけで、中川翔子さんも含めて「乙女のポリシー」はこれまでに10回以上カバーされてると思うんですが、その中でも一番個性的でした。
──どのあたりがでしょう。
これまでのはだいたい原曲にすごく近い雰囲気なんですけど、今回のはもうやくしまるさん節というか。想像はしてたんですけど、それを遥かに超える個性で作られていて新鮮でした。クールな部分とオシャレな部分がすごく出ているなと。だんだんリズムの刻みが変わっていくのが印象的ですね。最初はちょっと寂しいかな? と思っていても、聴いているとだんだんマジックにかかっていく感じ。
──今回のトリビュートの中で、もしかしたら一番原曲からガラリとイメージが違う曲かもしれないですね。ファンの方は驚くかも。
そうかもしれないですね。でもやっぱりポップで前向きな「乙女のポリシー」の良さは変わらないと思うので、堪能してほしいです。まだアルバム全体は聴けていないんですけど、ももクロ(ももいろクローバーZ)にも曲を提供したことがあるので(「月と銀紙飛行船」)、彼女たちの「タキシード・ミラージュ」もどうなってるのか、すごく気になります。こうして若いアーティストにカバーしてもらって、「セーラームーン」がまた盛り上がるのはとてもうれしいですね。待ってました、という感じ。僕、実はアニメが終わってから何度か、「『セーラームーン』で何かやりましょうよ」ってコロムビアさん訪れたりしてるんですよ。
──えっ、自主的にですか?
はい。でも当時のことを知ってる方がもうほとんどいらっしゃらなかったりして、なかなかうまくはいかなくて。だから今回こうして、20周年記念ということでトリビュートが出るのが本当にうれしいです。
──永井さんにとって、「セーラームーン」ってやはり大きな存在でしょうか。
すごく重要な作品ですね。アニメのエンディング曲を作ったのはこれが初めてだったので思い入れもすごくありますし、僕にとって今のところ一番のヒット曲なので。世界中に熱烈なファンの方がいるこの作品に関われたことは、感謝するしかないです。日本が誇る作品として、どんどん後世につなげていってほしいですね。
──新作アニメも夏に配信を控えています。
とても楽しみだし、「セーラームーン」に関われることがあればなんでもやりたいな、という気持ちでいます。
- V.A.「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」 / 2014年1月29日発売 / 3000円 / キングレコード / KICA-3218
- V.A.「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」
収録曲
- ムーンライト伝説 / ももいろクローバーZ
- HEART MOVING / 中川翔子
- プリンセス・ムーン / 福原遥
- 乙女のポリシー / やくしまるえつこ
- ラ・ソウルジャー(La Soldier) / Tommy heavenly6
- 愛の戦士 / 後藤まりこ×アヴちゃん(女王蜂)
- タキシード・ミラージュ / ももいろクローバーZ
- “らしく”いきましょ / 桃井はるこ
- セーラースターソング / 堀江美都子
- 風も空もきっと… / 川本真琴
<ボーナストラック>
- ムーンライト伝説(仏語Ver.) / クレモンティーヌ
永井ルイ(ながいるい)
3歳でピアノを始め、14歳からギターを独学で習得。明星学園卒。ソロ活動や「FOLKROCKS」「ROCKROLLY」などのユニット活動のほか、タンポポやミニモニ。、ももいろクローバーZなどアイドルグループの楽曲、「美少女戦士セーラームーン」「ドラゴンボールZ」「魔法騎士レイアース」ほかアニメの主題歌や劇伴も手がけている。なお、今年の春から「ROLLY&GLIMROCKERS」が始動する。