劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」キャラクターソング集 Eternal Collection 今千秋(監督)×月蝕會議(「Moon Effect」作詞・作曲・編曲)|テーマは愛・夢・希望! エターナルセーラー10戦士のキャラソン「Moon Effect」の魅力と誕生秘話に迫る

劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」キャラクターソング集 Eternal Collectionが2月10日にリリースされた。同アルバムには劇場版の内容にちなんだ多彩なキャラクターソングを収録。セーラー10戦士が揃って歌唱を担当する「Moon Effect」など全11曲が詰め込まれた。

コミックナタリーではキャラクターソング集の発売を記念し、2016年に放送されたアニメ「『美少女戦士セーラームーンCrystal』<デス・バスターズ>編」に続き、劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」で監督を務めた今千秋と、劇場版後編のクライマックスシーンに流れる「Moon Effect」の作詞・作曲・編曲を手がけた月蝕會議との対談をお届けする。月蝕會議からはエンドウ.(G)、Billy(G)、楠瀬タクヤ(Dr)が参加。「Moon Effect」の魅力や制作過程について語り合ってもらった。特集の最終ページにはこのキャラクターソング集に収録された曲のテーマや聴きどころがわかるレビューも。併せてチェックしてほしい。

取材 / 岸野恵加 文 / カニミソ 撮影 / 高原マサキ

今千秋(監督)×月蝕會議(「Moon Effect」作詞・作曲・編曲)対談

映像に秒単位で合わせる、パズルを組むような作業

──「Moon Effect」はキャラクターソング集に収録されている楽曲ですが、劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」後編クライマックスシーンで使用されています。あらかじめ映画で流すことが決まっていて曲が作られたのか、曲が完成してから映画で流すことになったのか、どちらですか?

今千秋 前者ですね。クライマックスのシーンで、何か楽曲を通しで使用したいという構想がまずあったんです。私がセーラー10戦士のキャラソンが欲しいって伝えたら、原作の担当編集者で今回の劇場版のシニアプロデューサーも務める小佐野文雄さんが「いいね」と言ってくれて、まずは月蝕會議さんに楽曲制作を依頼したという流れですね。

──なるほど。では今監督から月蝕會議さんに、曲のイメージを細かくリクエストしたんでしょうか。

 最初の打ち合わせはリモートだったんですけど、まず、メンバー代表で参加していたエンドウ.さんが、すごく塩対応で……(笑)。

エンドウ.(G / 月蝕會議) えー、そんなことないですよ!(笑) いろんな関係者の方がいたので、緊張してたんですよ。

今千秋

 そうなんですか?(笑) 以前、他のお仕事でもご一緒させていただいたことがあるんですが、あれ?私忘れ去られてる!? って。ま、そんな感じで本題に入りつつ(笑)。「例えばどんな曲ですか?」って最初のイメージを聞かれて、劇場版「美少女戦士セーラームーンR」の楽曲「Moon Revenge」のような、「熱いシーンが熱く盛り上がるような曲が欲しいです!」と。

エンドウ. 自由に作れるわけではなくて、1曲を劇中で丸ごと流すので、すでに決まっている尺や絵の動きに秒単位で合わせないといけないという縛りがあって。クライマックスでシーンの盛り上がりや展開もいろいろある中で、その課題をクリアするのに必死でした。

楠瀬タクヤ(Dr / 月蝕會議) パズルを組み合わせていくような作業でしたね。セーラー戦士たちが変身するカットに曲のサビを持ってきたくてもそうはいかなかったり、「あと1拍足りない!」とかそんなのばっかりで(笑)。テンポごと変えたり、工夫した結果、うまく1本の流れの中で、物語に追随するような形にできたと思います。

──作曲は誰かが主導で行うというよりは、メンバー全員でディスカッションをしていったんですか?

エンドウ. そうですね、僕らは基本的にみんなで作るコライトチームなので。コロナ禍でもありましたから、主にオンラインでやり取りしていましたね。

劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」場面カット

Billy(G / 月蝕會議) 僕は構成をほかのメンバーがある程度決めてくれた後でギターのフレーズを作ったんですけど、曲が6分11秒と長いので、繰り返しにならないよう転調したり、ギターソロを多めに加えたりしましたね。あとはやっぱりこれだけ多くの人に愛されている作品なので、90年代当時の音楽を意識したギターのフレージングや、ちょっと懐かしい感じを意識して、作品の世界観に寄り添うような音を意識しました。

エンドウ. 6分超って、一般的な歌としてはだいぶ長いほうなので、いろいろと考えなきゃいけないところも多かったです。

タクヤ 飽きないようにかなり工夫したよね。制作期間が2カ月あって、じっくり作らせていただいたので、その中で監督から「このギターソロがカッコいいから、もっと欲しい」とか「こっちのパートが伸びたからその次のBメロは半分でいこう」と逐一意見をもらって、アップデートしていくのも楽しい作業でした。

歌詞のテーマは愛・夢・希望

──キャラソン集に収録されていると言っても、キャラソンというよりは挿入歌というか、もはや劇伴を作る作業と言っていいでしょうね。監督は最初に聴いたときにどんな印象を受けましたか。

月蝕會議・エンドウ.(G)

エンドウ. まず全部作る前に、曲の方向性を確認していただこうとラフをお送りしましたよね。

 まだまだ一部という感じでしたが、最初から「いいな」っていう印象でした。

──歌詞については、監督からどのようなイメージを伝えたんでしょうか。

 歌詞は責任重大で……。「えっ私だけの意見でいいの? ねえホントに?」って、ずっと周りに言ってました(笑)。

タクヤ めちゃくちゃ気持ちがわかります(笑)。

エンドウ. 監督から最初に言われたのは、「愛・夢・希望」でいきたいと。そんな熱いテーマでした。

 ですね! で、いただいた熱い歌詞の中に自分なりの「セーラームーンらしさ」を付け加えさせてもらった感じです。

──監督的にお気に入りのワードはどのあたりでしょうか。

 もう、至るところにキラキラしたワードが詰まっているので「全部!」です。あとは歌詞とは違うんですが、エターナルセーラームーンに変身する山場のところで、普通は大サビを持ってくるであろうところを、Dメロっていうんですかね、ちょっと抑えた感じにしているのが、「おお! そう来たか!」って、意外性にキュンとしました。