コミックナタリー PowerPush - 中道裕大「放課後さいころ倶楽部」
アナログゲーム×女子高生マンガ登場! 作者によるおすすめゲーム紹介も
ゲッサンの箸休めとなるものを描けたら
──確かにアナログゲームを題材に選んだとき、「カイジ」シリーズのような殺伐としたギャンブルマンガを描く方向もあったかと思うんですが、そういうことは考えなかったんですか?
実はその方向は、最初に除外したんです。前作の「月の蛇」が、結構殺伐とした世界を描いたもので……。僕自身そういうマンガは大好きなんですけど、自分で描くと消耗が激しくて。あとゲッサンを読んだときに結構重めのマンガが多くて、その箸休め的なものを描きたいというのもあって。だから「さいころ倶楽部」は、殺伐とした展開には絶対しないし、悪い人も出さないと思います。
──なるほど。この作品で描きたいテーマ、みたいなものはありますか?
実は僕、ここ1年で一番読んだ作品が「孤独のグルメ」なんですが……。この作品って、壮大な物語がずっと続いていくとか、主人公が悪いやつをやっつけるとかではなくて、日常にある「癒やし」や「楽しい」ことを探していく話だと思うんですよ。「さいころ倶楽部」でも、そういう日々の中にある楽しいことを、みんなでできたら幸せだよね、ということを描いていけたらと思います。
──まさに楽しいことを知らないミキが、アヤのおかげでいろいろ楽しいことを知っていくという……。
最初はそういう流れだったんですけどね。意外と今はもう、ミキが周りに馴染んじゃってるので(笑)。あんまり内気な部分が出てないから、これからどうしようとは思っています。
──男の子は翔太くん以外には出てきますか?
「カイジ」を5冊読んだ合間に読んでほしい
──お話を聞いて、ゲーム会にちょっと足を運んでみたくなりました。
ぜひぜひ。
──カモられそうだけど(笑)。
いや、そんな怖くないですよ(笑)。賭けたりしないので。アナログゲームのファンはみんな、基本あったかいんです。人がいないとプレイできないから、仲間をとにかく欲していて。だから興味を持った人にはすごく優しいんです。
──人がいないとできないがゆえに、人を大事にするコミュニティができあがってるという。
そうそう。どこに行っても、すごく親切にしてくれますよ。マンガを読んでリアルにゲームをやりだして、仲間もできたって人が出てきたら非常にうれしいです。描いた意味があったと思いますね。
──賭け麻雀とかの世界は、殺伐としてますよね(笑)。
ああいうのって、もう殺し合いじゃないですか。もちろんあれはあれで、男の子だから血が騒いで大好きなんですけど、やっぱそれだけだと疲れちゃうと思うんです。だから、「カイジ」を読んだあとには「さいころ倶楽部」を、と。
──箸休めとして(笑)。
そうそう(笑)。「カイジ」「カイジ」「カイジ」「さいころ」「カイジ」「カイジ」みたいな感じで読んでいただくと、すごくバランスいいんではないかと思います。「カイジ」を5冊読んだら、その間に「さいころ倶楽部」を1冊ぐらい。そんな感じで読んでいただければ。
春の京都─────
見知らぬ街に引っ越してきた女子高生の綾。
ひょんなことから彼女と友達になった、引っ込み思案な同級生の美姫。
ある日の放課後、2人がクラスの委員長の翠の後をこっそりつけて辿り着いたのは、
アナログゲーム専門店…その名も「さいころ倶楽部」!!
思わずやってみたくなる、本場ドイツのボードゲームも満載。
「楽しい」を探す少女たちと、心躍るゲームの世界へようこそ!!
中道裕大(なかみちひろお)
京都府北桑田郡出身。AB型。2002年、「風」にて第50回小学館新人コミック大賞を受賞し、同年に少年サンデー超8月号(小学館)に同作が掲載され、デビュー。2006年より週刊少年サンデー(小学館)にて「ハルノクニ」を連載開始。その後、ゲッサン(小学館)に移籍し2009年より「月の蛇~水滸伝異聞~」を連載。「放課後さいころ倶楽部」がゲッサン移籍後、2作目の連載となる。