コミックナタリー PowerPush - 中道裕大「放課後さいころ倶楽部」
アナログゲーム×女子高生マンガ登場! 作者によるおすすめゲーム紹介も
ゲッサン(小学館)にて連載されている、中道裕大「放課後さいころ倶楽部」の1巻が発売された。女子高生がボードゲームやカードゲームなどのアナログゲームをプレイするという、新たな題材に挑む意欲作だ。
アナログゲームという一見馴染みのないジャンルを女子高生の日常と絡め、心温まるストーリーへ仕立て上げている中道に、コミックナタリーはインタビューを実施。中道とゲームとの出会いから、今後の展開までを語ってもらった。ゲーム愛あふれる作者による、創作秘話をお楽しみいただきたい。
取材・文/安井遼太郎 撮影/唐木元
中道裕大 インタビュー
ゲーム会にぜひ来てみてほしい
──「放課後さいころ倶楽部」は女子高生たちが、ボードゲームやカードゲームといった、いわゆるアナログゲームをわいわいプレイしていく作品です。「マラケシュ」「ごきぶりポーカー」「ハゲタカのえじき」など、知る人ぞ知る名作が毎回次々と登場してきますが、これからもどんどん新しいゲームが出てくるんでしょうか?
そうですね。これからも1話につきひとつのゲームを題材にするというのを基本にやっていこうかと。
──マンガに登場させるゲームを選ぶときの、基準ってあるんですか?
基本はやっぱり、自分が遊んで面白いゲームです。でもマンガにしたときに面白くなるかというのはまた別で。だから、マンガで描いて面白くなるかというのは大きな選考基準ではあります。
──どういうタイプのゲームが描きやすいんでしょう?
やはり、キャラクターやストーリーとマッチするものですかね。例えば7話目で「ねことねずみの大レース」を扱ったときの、猫好きなお姉さんが出てきて、最後に猫がゲームをぐちゃぐちゃにする、という流れのように。だから「このゲーム面白いけど、話が思いつかないなぁ」というものは手がつけにくい。あとルールが複雑なものもちょっと敬遠してます。
──やはりルールが簡単なほうが描きやすいと。
そうですね。基本的にルールはひとつかふたつで済むゲームを選んでるんですけど、やっぱり少しルールが多いものでも、有名なタイトルはたくさんあって。これからはそれも描くようにしたいとは思います。
──今まで何種類ぐらいのゲームをプレイされてきたんでしょう。
どれくらいかな……多分200は行かないと思います。だいたい百数十ぐらいじゃないでしょうか。
──そんなに種類があるんですね。プレイ歴はどれくらいですか?
本腰を入れてやりだしたのはここ1年半ぐらいのことです。結構にわかなんですよ(笑)。ゲーム会に行ったら参加者がいろいろ持ち込んでくるから、いろんな種類のゲームを遊べるので。すごく軽めで5分で終わるようなゲームから、2時間かかるようなやつまでいろいろあるんです。そういうのを全部数えると大体100から200ぐらいかと。
──ゲーム会というのは……。
僕の友達が常連だったバーで、アナログゲーム部を作りたいっていう話があって、その友達に紹介してもらって、ゲーム部を主宰することになったんですよ。そこで定期的に常連さんを集めてゲームをやってるんです。
──いつも何人ぐらい集まるんですか?
だいたい15,6人くらいかな?
──なかなかの規模ですね。
Twitterのフォロワーさんも来てくれたことがあるんですが、あっという間に常連になってくれたりして。やっぱりアナログゲームはすぐに仲良くなれる、すごい力があるんですよね。普段テレビゲームをやらないっていう人でもできちゃうし、これからまだまだ広がるコンテンツだと思います。松戸で月イチでやってるので、ぜひ来てみてください!(笑)
昨日も一晩中「人狼」をやっていたんですが
──お話を聞いていると、中道さんはもう、すごくゲームにハマってらっしゃるのがよくわかります。
アナログゲームのファンって、多分全国で見ても1万いるかどうかだと思うんですよ。「ゲームマーケット」っていう、コミケのアナログゲーム版みたいな催しがあるんですが、去年の来場者数が確か5000人ほどだったんですよね。そう考えると、アナログゲームを買ってまでやりたい人っていうのはまだまだ少ないと思います。でもその分、「さいころ倶楽部」を読んで初めてアナログゲームを知ったという人が、興味を持っていただければと。
──このマンガを読んで、実際にゲームをプレイしてみてほしいと。
Twitterでも「このゲームを買って、やってみました」みたいなメッセージをいただいたりして、ちょっと貢献できた感じがしてうれしいです。アナログゲームって、面白いと人に勧めたくなりますからね。
──なるほど。中道さんが個人的に得意なゲームや、苦手なゲームってありますか?
「人狼」みたいな、嘘をつく系のゲームはすごく苦手です。実は昨日も一晩中「人狼」をやっていたんですが、一緒にやった人がものすごく強くて何を言っても見破られるから、最後は疑心暗鬼で吐きそうになりました(笑)。
──それは恐ろしい……。
ええ。もう一生この人とは「人狼」やりたくないと思いましたもん(笑)。「人狼」系のほかにも、いかに早くカードを取るかっていうのを競うゲームもあるんですが、それだけは絶対誰にも負けないという人もいました。
──そういう反射神経だけで勝てるゲームもあるんですね。
でも不思議なもので、全ジャンル苦手っていう人はいないんですよね。どんな人にでもこれだけは得意っていうのはあるんです。そういう、自分に合ったゲームを見つけるという楽しさもあるんですよ。
春の京都─────
見知らぬ街に引っ越してきた女子高生の綾。
ひょんなことから彼女と友達になった、引っ込み思案な同級生の美姫。
ある日の放課後、2人がクラスの委員長の翠の後をこっそりつけて辿り着いたのは、
アナログゲーム専門店…その名も「さいころ倶楽部」!!
思わずやってみたくなる、本場ドイツのボードゲームも満載。
「楽しい」を探す少女たちと、心躍るゲームの世界へようこそ!!
中道裕大(なかみちひろお)
京都府北桑田郡出身。AB型。2002年、「風」にて第50回小学館新人コミック大賞を受賞し、同年に少年サンデー超8月号(小学館)に同作が掲載され、デビュー。2006年より週刊少年サンデー(小学館)にて「ハルノクニ」を連載開始。その後、ゲッサン(小学館)に移籍し2009年より「月の蛇~水滸伝異聞~」を連載。「放課後さいころ倶楽部」がゲッサン移籍後、2作目の連載となる。