コミックナタリー PowerPush - るーみっくわーるど35~SHOW TIME & ALL STAR~
全作品のカラー画集&圧倒的データ量の大事典! 自宅訪問、35年の軌跡追うロングインタビュー
声優さんに恵まれた数々のアニメ化作品
──ご自分のマンガがアニメ化されることについてはどんな感慨をお持ちですか。
アニメ化は、マンガをがんばって描いたご褒美みたいなものと捉えてます、すごくうれしいです。
──「うる星」の「ビューティフル・ドリーマー」のように原作とはちょっと離れた内容の映画は、ファンの間では長年議論の的になっていたりしますが。
あれは押井守監督の作品と割り切って、楽しく観ましたよ。
──それはそれで「るーみっくわーるど」の一部だと?
アニメはいろんな人が関わって作るものです。テレビアニメにしても複数の作画担当さん、監督さんがいらっしゃって、その人なりのものができるわけですから。アニメに関しては、はじめから私が口出しするものじゃないという姿勢です。毎回、観るのが本当に楽しみで、テレビアニメも必ずオンエアをリアルタイムで観てきました。
──声優さんも当たり役といわれる方をたくさん輩出されましたよね。
どの作品も声優さんにとても恵まれて、それは本当にありがたいです。「うる星」でいうと、古川登志夫さんがあたる役だったのがすごくうれしかったな。海外ドラマの「白バイ野郎ジョン&パンチ」のファンだったので、パンチをやった古川さんが私のキャラを演じてくれるなんて、もう! 面堂を神谷明さんがやってくださったり……こんなすごい人たちが出てくれるのか、と。「めぞん」の響子さんも、ナウシカの島本須美さんがやってくださって感激でした。
──描いているときに、そのキャラがどんな声か聞こえているのでしょうか。
いえ、ネームを切っているときの脳内でも、声はしていません。ただ「めぞん」「らんま」あたりからは、アニメ化が決まると声優さんのオーディションに参加させていただいてますので、こういう声のほうが合ってるな、というのはあります。
──何か先生から特に意見を出されたキャスティングなどありましたか。
「らんま」は当初、男の乱馬も女の乱馬も、女性の声優さんが1人でやることが検討されていたんです。もちろん女性の声優さんで、カッコいい男性の声も出せる方はたくさんいるんですけど、私はできることなら男女別々の声優さんに演じてもらいたいというイメージがあって、それは言いました。山口勝平さんの声は男の乱馬にすごくハマったと思っています。
できる限り長く少年マンガを描き続けたい
──画業35周年という節目を経て、これからの目標などありましたら、伺えますか。
いまはとにかく「境界のRINNE」を描くことに集中しています。目標は……少年マンガをできるだけ長く描き続けたいですね。
──高橋先生にとって、少年マンガはこうあるべし、という哲学はありますか。
基本、明るさがあること。バトルシーンはあっても、やられてしまうキャラの尊厳は傷つけないことです。それは敵キャラであってもね、やっていいことと悪いことがあると思いますし。
──本当に、すべてのキャラに愛情を持って描かれているんですね。
いやな人でもどこか必ず、いいところがあるし、あってほしいし。そもそも、キャラのいいところを見つけられなかったら描く気になれないですから。他人のマンガを読むときは、ものすごく悪くて下衆なキャラも楽しんで読めるんですけど……なぜか自分では描けない。
──それは低年齢の読者を意識しているから?
そうではないです。ただ、自分が描けないだけなんです。私、その辺りのハードルが高いのかなあ(笑)。
──少年マンガということは基本的に少年たちが読むわけですが、その少年たちに作品を通して伝えたいことは何でしょう。
私ね、マンガを描く上で何かメッセージを伝えたいとは思っていないんですよ。ただそのマンガを読んでる間、何かつらいことがある人でも楽しくなってくれればいいな、元気になったらいいな……と、それだけです。
──先生自身が子供時代に、マンガ雑誌の発売日を心待ちにしていた頃のように、ですね。
いまもです(笑)。マンガを読んでいる時間って、ただただ楽しいでしょ。これからもそれをたっぷり味わってもらえるような作品を描きたい。それに尽きます。それこそがマンガの役割じゃないかと思っているので!
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高橋留美子(たかはしるみこ)
1957年10月10日新潟県生まれ。日本女子大学卒業。大学在学中の1978年に「勝手なやつら」で第2回小学館新人コミック大賞少年部門佳作を受賞し、同作が週刊少年サンデー(小学館)に掲載されデビューとなった。同年、同誌にて連載を開始した「うる星やつら」で、1981年に第26回小学館漫画賞、1987年には第18回星雲賞コミック部門を受賞。同作はテレビアニメ化もされ大ヒット、ヒロイン「ラムちゃん」は時代を超えて愛され続ける人気キャラクターとなった。また、劇場版となる「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」は押井守監督の出世作としても高い知名度を誇る。以降も「めぞん一刻」「らんま1/2」など歴史に残る人気作を数多く生み出し、代表作の殆どが映像化され、いずれも不動のヒットを記録している。2002年、「犬夜叉」にて第47回小学館漫画賞少年部門を受賞した。2009年より最新作「境界のRINNE」を執筆中。