ラッパー=LP盤に執着?
ヒャダイン そうそう、「これはイジってるなー」というシーンを思い出しました。マッドキラーがラッパーをおびき寄せるために、レコードを木の枝からぶら下げてるところ。ラッパー=LP盤に執着するっていうフォーマットに着眼したのがいいですよね。
インカ帝国 あの場面は、自分で描いておいてさすがに実際のラッパーの人たちに申し訳ないなと(笑)。万が一、このマンガの影響で変なイメージを植え付けてしまったらどうしよう……という気持ちになってます。
ヒャダイン あれをラッパーの真の姿と信じる人はいないでしょう(笑)。ちなみにインカさんは、どのシーンが印象に残ってますか?
インカ帝国 そうですねえ……第7話でみのりがブレイクダンスをするところは、結構描くのに時間がかかりました。ヘッドスピンの動きをどうやったら一枚絵で表現できるんだろうって悩んで。
ヒャダイン あれ、最高ですよね! 前のコマではBボーイのウィンドミルで、みのりが乗っていた自転車のタイヤがパンクして。くだらないっすわ(笑)。いいなあ。
インカ帝国 (笑)。ブレイクダンスでタイヤのゴムが切れたらカッコいいなと思いまして。
──絵に関して言うと、もともと個人で描かれていたときと画風がかなり違いますよね?
ヒャダイン あ、それ僕も思いました。LINEマンガさんでの連載になって、グッとプロっぽさが出たというか。最初は線画のようなタッチでしたよね。意識して絵柄を変えられたんですか?
インカ帝国 そうですね、ちゃんと描かなきゃいけないなあと思って。自分が好きなマンガ家さんの絵をいろいろ参考にしました。
ヒャダイン へえ、それは例えば?
インカ帝国 やっぱりマンガ家として、「DRAGON BALL」のタッチは憧れますね。あととなりのヤングジャンプで連載されている「明日ちゃんのセーラー服」の博さんという方の絵もすごくかわいくて、みのりを描く際のお手本にさせてもらっています。
ヒャダイン なるほど。「大人の手が入った!」「スクリーントーンを使い始めた!」って思いましたもん(笑)。
無風が一番寂しい、とは言え……
ヒャダイン インカさんは「ラッパー漫画」が初の連載ということですけど、それまでは何をしてたんですか?
インカ帝国 もともとは床屋で働いてたんです。それからはフリーターをしながら、新都社という誰でもマンガを投稿できるサイトで、「ラッパー漫画」を連載してました。そこからまとめサイトで取り上げていただいたり、「WOWGOW MUSIC DINER」という音楽番組で、MAN WITH A MISSIONさんのジャン・ケン・ジョニーさんに僕のマンガを紹介していただいたり。そして縁あって、LINEマンガでも連載させてもらえることになったんです。
ヒャダイン 人生何があるかわからないですね。僕も音楽でまったく芽が出なかった時期に、自分の音楽がどこまで通用するのかなって思ってニコニコ動画への投稿を始めたんです。そしたら思いのほか反応がよくって、今こうやって飯が食えているみたいな。ちゃんとした音楽教育を受けたわけではないので、いまだに曲の作り方とかよくわかってないですもん。
インカ帝国 いろんな楽曲を作ってらっしゃるから、どれだけ知識があるんだろうって思ってました。
ヒャダイン 全然ないですよ。あんまり聴いたことないジャンルの音楽は、「こんな感じかなー!」っていうノリで作ってます(笑)。このマンガだって同じじゃないですか? 「ラッパーってこんな感じかなー!」って。
インカ帝国 ははは、その通りですね(笑)。試行錯誤しながらも、読者のコメントに励まされながら執筆を進めてます。Webだとリアクションがすぐに返ってくるのが面白いですよね。
ヒャダイン ですね。直接手応えがあるのっていいなって思います。厳しいことを言われることもありますけどね。僕もニコ動時代はアンチが大勢いて……でもアンチがいるってことは、多くの人に見られてるっていう証拠ですから。誰にも気にされず、無風っていうのが一番寂しいですしね。
インカ帝国 確かに何も言ってもらえなかったら、誰が見てくれているんだろうと不安になります。
ヒャダイン 当時の僕も、周りに同じようなことを言われて励まされたんですよ。でも、いくらポジティブに考えても「……とは言え凹むわ!」って思っちゃって(笑)。立ち直るには、愚直に作品を出し続けるしかないんですよね。ヘイトは絶対になくならないので、消す作業に徹しても意味がない。だから逆にシンパを増やそうと思ってここまでやってきました。
インカ帝国 心が折れそうになったら、その言葉を思い出します(笑)。
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- インカ帝国(インカテイコク)
- 理髪店勤務、フリーターを経て、2017年6月にLINEマンガで「ラッパーに噛まれたらラッパーになる漫画」を連載開始。ヒップホップより、パンクロックのほうが好き。
- ヒャダイン
- 本名、前山田健一。1980年生まれの音楽クリエイター。3歳でピアノを始め、作詞・作曲・編曲を独学で身に着ける。京都大学卒業後、2007年に本格的な音楽活動を開始。前山田健一としてヒット曲を手がける一方、ニコニコ動画などの動画投稿サイトに匿名の「ヒャダイン」名義で作品を発表し大きな話題を集めた。2010年5月には自身のブログにてヒャダイン=前山田健一であることを告白。2011年4月にメジャーデビューシングル「ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C」、2012年11月に初のソロアルバム「20112012」をリリースした。作家としては、ももいろクローバーZ、でんぱ組.Inc、SMAP、郷ひろみらに楽曲を提供しながら、アニメソング・CM音楽・映画劇伴の制作も手がける。テレビ番組「musicるTV」のほか、「ヒャダインのガルポプ!」「ヒャダインのわーきゃーいわれたい」といったラジオ番組にも出演中。
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