お嫁さんにするなら断然ウッちゃん
──次はサブキャラについて伺いたいです。「うる星やつら」や「めぞん一刻」の例を出すまでもなく、高橋留美子先生が描くヒロインの魅力の1つに、焼きもちを焼いて怒る姿がかわいい、という面があると思うのですが、この「らんま1/2」でも、ヒロインの天道あかねが、素直になれない乱馬や彼に言い寄ってくる女の子たちを見てイライラするさまがかわいいと思います。足立さんはあかねというヒロインにどんな印象を持っていますか。
まず、あかねちゃんも乱馬と同じくらい恋愛に対して不器用なところが本当にかわいいと思います。それと腕っぷしの強い女の子だというところにも惹かれますね。ヒーローに守られるだけのヒロインじゃないというのがカッコいい。そのうえで、どうしようもないピンチのときだけ乱馬が助けてくれる。この構図が最高に萌えるシチュエーションなんですよ(笑)。あとはなんといっても最初はツンケンしてた彼女が、物語が進んでいくにつれ、女の子に変身する部分も含めて乱馬という男の子を好きになっていく。その過程も素敵だなと思います。
──あかね以外の脇役で好きなキャラクターはいますか。
みんな大好きですけど、1人だけ挙げるならウッちゃん(久遠寺右京)かな。乱馬に思いを寄せてる女の子たちの中では、私は彼女が最も“お嫁さんにしたいキャラ”だと思います。シャンプーもかわいいんだけど、わがままでいろいろ面倒くさそうだし、黒バラの小太刀はちょっとでも怒らせたらシビレ薬とかを盛られそうで怖い(笑)。あかねちゃんももちろんいいけど、料理がヘタなところがマイナスポイント。その点、ウッちゃんは料理も上手だし、空気も読めるし、きっといいお嫁さんになれると思う。って、なぜか完全に男目線で語ってますけど(笑)。
──物語的にはどのエピソードが印象に残っていますか?
それもまた選ぶのが難しい質問ですね(笑)。どの回も面白いと思いますけど、今パッと頭に浮かんだのは「伝説の道着」のエピソードでしょうか。伝説の道着というのは、着た人の潜在能力を引き出してくれる、意識を持った道着なんですけど、それがあかねちゃんになついていく姿がかわいいんですよ。冒頭で言ったみたいに私は子供の頃、少林寺拳法を習っていたものですから、あの回を読んで「この道着、着てみたい!」と真剣に思いました(笑)。最後のオチもいいんですよね。クライマックスの場面で乱馬とあかねちゃんが空中から落下していくんですけど、その落下点にあるのがペンキ塗りたてのベンチで。そこで乱馬は彼女が汚れないようにさっとかばってあげるんです。ああいう場面で見せる彼のさりげない優しさにはキュンときちゃいますね。
──先ほど挙げられた右京もそうですけど、物語が進むにつれ、乱馬サイドにもあかねサイドにも恋のライバル的なキャラが次々と出てきて、三角関係どころか五角関係、六角関係とどんどん人間関係が複雑になっていきますよね。乱馬もあかねも好きだという足立さんは、そうした展開はやきもきしながら読んでいましたか、あるいは楽しみながら読んでいましたか。
断然後者ですね。だって乱馬とあかねちゃんがくっついちゃったらマンガが終わっちゃうじゃないですか(笑)。何しろ私は素直になれない2人の姿に萌えていたので、邪魔者と言ったら悪いですけど、シャンプーやウッちゃんみたいなライバルキャラがいろいろ出てきて、2人の関係を邪魔していく展開については楽しみながら読んでいました。それにしてもあの長い巻数の物語を、そのパターンを繰り返しながら間延びさせず、最後まで高いテンションで楽しませてくれたというのは、やっぱり高橋先生はすごいストーリーテラーなんだと思いますね。
──足立さんにとって「らんま1/2」という作品の魅力はどういうものですか。
なんと言っても、男の子が水をかぶったら女の子になって、お湯をかぶったらもとに戻る、というアイデアの斬新さではないでしょうか。一見単純なアイデアにも思えるかもしれませんが、それはすでに「らんま1/2」という作品を知ってしまっているからなわけで、この設定を最初に思いついた高橋先生はやっぱり天才です。それとこの作品にはバトルマンガのワクワクと恋愛マンガのドキドキ、つまり、少年マンガと少女マンガのいちばん良い部分が組み合わさっていますよね。この点もまた高橋先生にしか描けないマンガだったと言えるんじゃないでしょうか。とにかくバランスがいいんですよ。格闘マンガだけ、あるいは恋愛マンガだけを上手に描けるマンガ家さんはたくさんいると思いますけど、その両方を1つの作品のなかでバランスよく、しかも面白く描けるマンガ家さんは高橋先生だけだと思います。
日常的につけたい香水と、ここぞという時につけたい香水
──さて、ここからは実際に「らんま1/2」のコラボ香水を試していただいて、その印象をお聞かせ願えますか。具体的にいえば、乱馬(男)、らんま(女)、あかね、シャンプーという4人のキャラクターをイメージした香水があるのですが、まずは男の子の乱馬の香水の感想からお願いします。こちらはライトな香りにフェミニンな香りを融合させたものだということです。
なるほど、これは女性がつけてもいい香りだと思いますけど、個人的には彼氏につけてほしい感じかな(笑)。ほのかに甘くて、爽やかで、男らしくてセクシーという、まさに早乙女乱馬って感じですね。もちろん彼氏うんぬんは置いといて、自分でも毎日つけたくなるような香水でもあります。ずっと嗅いでてもまったく嫌にならないし、朝出かける前に軽くシュッと首筋にかければ、スッキリして「よし、今日もがんばるぞ!」っていう前向きな気持ちになれそう。
──では女の子のらんまの香水はいかがですか?
こちらは乱馬の香水に比べて、かなり甘さを強調した感じでしょうか。
──そうですね。甘さだけでなく、呪泉郷の竹をイメージしたバンブーテイストの香りも入っているそうです。ただその竹の香りが強く主張するのは最初のうちだけで、時間が経つとさわやかな香りに変化していくそうです。
それは面白いですね。たしかに竹っぽさが香るかも。今、甘さっていいましたけど、決して甘すぎはせず、ちょっとスパイシーな香りも入ってますよね。(もう一度嗅ぎながら)うん、この香りも嫌いじゃないです。ただこちらは日常的に使うのではなくて、ここぞという場面でつけたい感じかな。別の言い方をすれば、出かける前や仕事中には乱馬の香水をつけて、仕事が終わったあとの遊びの時間にはこちらをつけて楽しみたい(笑)。
──あかねをイメージした香水はどうですか?
一言で言えばまさに女の子って感じ。フルーティーでさわやか。男たちをバッタバッタと倒していく強いあかねちゃんじゃなくて、好きな男の子に対して素直になれない恋する少女のかわいさが表れている気がします。パッケージにも、フリフリのついた衣装を着た女の子っぽいあかねちゃんの絵が入っててかわいいですね。個人的にはこの香水はいつも持ち歩いて、つらいときや気分を変えたいときに使ってみたいです。あかねちゃんみたいな女の子に応援されたら、「よし、がんばってみよう!」って気になるじゃないですか。
──それではシャンプーの香水はいかがですか。
ある意味ではこれが一番キャラのイメージとしてわかりやすい香水かも。キュートでありながらセクシーで妖艶。かわいい色気を感じます。4つの中では一番個性的な香水かもしれませんね。確かにシャンプーが実際にいたらこんな香りが漂ってきそう(笑)。色気といっても別に下品なものじゃなくて、匂いの奥で上品な色気が漂っている感じです。マンガに出てくる惚れ薬のイメージもあるのかな。これもらんまの香水と同じで、ここぞという場面でつけたいタイプの香水ですね。
──さて、すべての香水を嗅いでいただいたうえで、足立さんが最も気に入ったのはどれでしたか。
1つだけ選ぶならやっぱり乱馬の香水ですね。さりげなく良い香りがする、というのが私の理想の香水の使い方なので。乱馬の香水の香りは体臭なのか香水なのかわからないくらいナチュラルなものですから、日常的に使用するならこれが一番いいかなと。なので、繰り返しになりますが、朝出かける前などには乱馬の香水をさっとかけて、ほかの3つは時間や場所によって選ぶ、というのが自分としてはベストな使い方だろうと思います。
──ちなみにこの4人以外で香水を作ってほしいキャラはいますか。
売れるかどうかはわかりませんけど、乱馬のお父さん(玄馬)をぜひ(笑)。あ、もちろん通常のおじさんの状態じゃなくて、パンダに変身したときの姿をイメージしてください(笑)。なぜかあのでっかいパンダが昔から好きなんですよ。竹の香りが再現できるのでしたら、それをさらに強調して、ウッディな中国の森林の香りを前面に押し出したような香水はできませんか? 渋い大人の男性の色気とパンダのかわいさを合体させた香りが作れたらいいですね(笑)。あとは良牙の香水もあるとうれしい。乱馬の次に好きな男性キャラが彼なんですよ。子豚のときの姿もかわいいし、あかねちゃんに対する一途な思いもいじらしい。方向音痴という困った面もありますけど、高橋先生が描くイケメンの男子はただカッコいいだけじゃなくて、どこか1カ所ボケの要素があるというのが魅力の1つですからね(笑)。香水という商品の性格上、どうしても女性キャラをイメージしたものが多くなるのかもしれませんが、ファンの心理として「推しキャラと同じ臭いになりたい」という気持ちもありまして。だから乱馬だけじゃなくて良牙の香水もあれば日常的につけていたい気がします。
──それでは最後に、読者の皆さんに向けて一言お願いします。
私自身そうだったわけですけど、「らんま1/2」というマンガはこれからも親子代々受け継いで読んでもらいたい傑作です。いつの時代でも古びることがないといいますか、読み返すたびに新しい発見があるといいますか。いずれにしても連載が終了した今でもこうしたグッズの数々が新たに作られているという、その“現役感”はただものじゃないですよね。やっぱり普遍的な魅力を持ったコンテンツの底力はすごいなと。だから私も、今日教えていただいた4つの香水をうまく使い分けて、「らんま1/2」のキャラクターたちが持っているような強さやかわいさを、自分なりに身につけていけたらなと思います。