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「Project ANIMA」特集|河森正治×上町裕介(Project ANIMAプロデューサー) オリジナルの火は絶やしたくない 変形ロボットデザインの第一人者が日本のアニメ界を徹底談義

お客さんが10年ちゃんと熱狂してくれるってことなんです(上町)

──募集テーマを「SF・ロボットアニメ」「異世界・ファンタジー」「キッズ・ゲームアニメ」の3つに設定された理由を聞かせてください。

上町裕介プロデューサー

上町 僕の中でロボットアニメはアニメの原点だという思いがあります。オリジナルアニメの全盛期に、いろんなクリエイターさんが試行錯誤しながら今までにないものを作ってきた歴史がある。創作としての難易度は、ほかのテーマよりも圧倒的に高いかもしれませんが、あえて大変なものに挑むことに、このプロジェクト自体の意義があるんじゃないかなと思います。

河森 ロボットアニメは、ゲームが流行った時点でとても難しくなっているんです。ゲームはプレイヤーがコックピットに乗ってロボットを操縦する体験ができるから、それを経験してしまうとアニメーションで観る意味は薄れますよね。でもロボットの解釈は自由なんですよね?

上町 はい、解釈は自由です。

河森 人型ロボットがロボットだと思ってるのは日本と、日本の影響を過剰に受けた国だけですから。自律的に動けばお掃除ロボットだってロボット(笑)。

──では第2弾の「異世界ファンタジー」部門については?

上町 「異世界ファンタジー」は、ロボットとは逆に創作の敷居が低いと思っています。今、異世界ファンタジーってラノベの文法として語られるケースが多いんですが、ラノベで異世界ファンタジーが受けているのは、現実世界が起点になっていて没入感が得やすいから。先ほど僕が言った「自由に創作してもらいたい」という願いに一番即しているのは異世界ファンタジーかなと思いますね。ただ現状、乱立しすぎなので……。

河森 フォーマットとして活用されすぎてるというか、乱用されてるというか。

上町 そうなんですよ、だからディテールにはしっかりこだわってもらいたいですね。言ってしまえば「ナルニア国物語」だって「ハリーポッター」だって異世界ファンタジーじゃないですか。フォーマット自体は古くから脈々とあるわけで、今流行っている異世界ファンタジーの枠にとらわれないでほしいです。あと「キッズ・ゲームアニメ」部門に関しては、小中高生にしっかり刺さる王道感のあるコンテンツをちゃんと作りたいですね。DeNAはゲーム会社でもあるので、どういう形態のゲームになるかはわかりませんが、ゲーム化にも持っていければと思っています。

──「ポケモン」や「妖怪ウォッチ」など、ヒットすると一般層にも広く届く部門ですよね。

上町 本当にそうだと思います。IPを創る立場として僕が明確に狙っているのは、お客さんが10年ちゃんと熱狂してくれることなんですよ。10年愛されれば、作品はその先ずっと続いていくじゃないですか。そういった作品を目指すために、この3部門を規定しています。

最近のアニメのサイクルの速さ、加速の仕方は恐ろしい(河森)

──この10数年の傾向として、1クールで終わりっていう作品が多いですからね。

河森 最近のアニメのサイクルの速さ、加速の仕方は恐ろしいですよ。

上町 「去年、どんなアニメがやってたっけ」となりますよね。

河森正治監督

河森 分割2クールはすごい怖いと言われますよね。「1クール空いたらもうヤバイ」なんて言われる時代が来るとは思わなかった。そういう意味では、10年続く作品を目指すというのは、今後のアニメ業界にとっても非常に重要なことだと思います。

上町 昔のアニメは4クールとか平気で放映してたじゃないですか。長いと3年ぐらい続いたり。それがいつの間にか短期間でスマッシュヒットを狙う時代になってしまったことで、自分たちの首を絞めているのかなという気はします。

河森 パッケージを販売する方向に進んで、1クールとか2クールで起承転結を求めるようになったんですよね。でも12、13話で話をまとめようとすると、テンポは良くても遊びが入れにくい。例えば4クールもののアニメなら本筋と違う日常回を入れたりすることで、ユーザーにより作品に愛着を持ってもらうこともできるんですが。

上町 学園パートみたいなのが合間に入ったりとか。

河森 そうそう。昔はそうやってキャラクターを浸透させて人気を上げていくスタイルを取れていたんです。僕らはそういう時代に育ってるから、今みたいにキツキツで作るのは若干窮屈なところがあって。であればテレビアニメでなく2時間の映画でいいじゃないかと思っちゃう。でも時代の変化はちゃんと受け止めなきゃいけないところもあるし、バランスが難しいですよね。

ロジックを変えていかなきゃ作る意味がない(河森)

──河森監督はSFロボットものを作るにあたって、特に気をつけていることはなんでしょうか。

河森 ほかと似ないこと。以上、終わり(笑)。

一同 (笑)。

河森 似ていていいなら、こんな簡単なジャンルないので。

上町 確かに……。

「マクロス」の主人公・一条輝が乗るVF-1。

河森 私の作品でいうと「超時空要塞マクロス」を「ガンダム」に似せていいんだったらこんなに簡単なことはなかった。別に「ガンダム」を超えてやるとかそういう意味じゃなくて、同じロボットアニメを作るのであれば、ロジックを変えていかないと作る意味がない。メカバトルが好きな人から見たら嫌われるであろうアイドル要素をあえて入れたり、歌う要素を入れたり。そうしないと差別化できないと思ったんですよね。それゆえにおかげさまで30年以上残ることができました。もし差別化しないで純粋にバトルだけやっていたら、ごく一部のマニア以外では10年持たなかったんじゃないかと。

上町 差別化は、我々としても課題です。メカと音楽を掛け合わせたいけど普通にやったら「マクロス」になってしまうわけで。さまざまなモチーフがすでにやり尽くされた中で、さらに新しい切り口を見つけるのは簡単なことじゃないですよ。

河森 でも「マクロス」のときは、中華料理屋の看板娘が歌手になるっていうところまで考えてからスタートしてるんですが、歌で戦闘を解決するというのは、作りながら発想したんです。

上町 そうなんですか!?

河森 はい。しかも周りから反対されながらも押し通した(笑)。ただ、概念自体が新しくないと、オリジナルと言いづらい部分はありますね。「創星のアクエリオン」も従来の「合体ロボット」アニメじゃなくて「合体」アニメにできたのが大きかった。ロボットは増幅装置にすぎなくて、あくまでパイロットが持つエレメント能力が合体することそのものがコンセプト。だから「アクエリオン」の場合は組み合わせによって弱くもなりうるというのがほかとの違いになったと思います。

「交響詩篇エウレカセブン」キービジュアル

上町 いかに今までにない要素を取り入れるかですね。

河森 大事なのはコンセプトなんですよ。キャラクターとか、戦いのやり方、手法が変わるだけでは足りない。たったひと言のキーワードが見つかるか見つからないかで全く違うんですよね。コンセプトで言えば「天空のエスカフローネ」は、占いとロボットとファンタジーですし、デザインで言えば「交響詩篇エウレカセブン」は、サーフィンとロボット。ゼロから生み出すというのは非常に難しいことですが、今まで試されてこなかった組み合わせを考えることでも、差別化が図れます。

上町 やっぱり発明は確実に必要ですね。「ガンダム」もミノフスキー粒子という大発明があるし、「エウレカ」だってトラパーという発明があるわけで。

第1弾「SF・ロボットアニメ部門」募集要項

テーマ
SF・ロボット(メカ)をテーマとした作品であれば、世界観やコンセプトは自由。
募集期間
2018年2月1日(木)~4月15日(日)
※作品募集は終了。
賞金
「小説・脚本選考」「マンガ選考」「企画書・イラスト・動画選考」それぞれで金賞・銀賞を決定。金賞は賞金15万円、銀賞は賞金5万円を贈呈。更に最終選考にてアニメ化作品として選ばれた作品には賞金100万円を贈呈。
※アニメ化作品は各選考の金賞・銀賞以外から選ばれる場合もある。
募集形式
小説形式
1万字以上の小説本編(未完結でも可)、もしくは3000文字以上のプロット(完結必須)
脚本形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の第1話の脚本
マンガ形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、連載作品としての冒頭1話分以上(20ページ前後)の完成原稿、もしくは同程度のページ数のネームおよび作画見本。
※商業誌での掲載がないオリジナルの同人作品についても上記要件を満たしていれば応募可能。
企画書形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、作品の世界観やプロットのわかる企画書。
イラスト形式
A4もしくはB4サイズのイラスト1点から5点。作品の世界観、キャラクターデザイン、メカデザインなど主題は不問。モノクロ、カラー、CGなど様式は不問。
動画形式
60秒以上のアニメーション動画。
※YouTubeへ限定公開で動画をアップロードし、URLを応募フォームより投稿。
審査員
DeNA、創通、文化放送、MBS、サテライト
結果発表
各選考中間発表:2018年6月
各選考入選発表:2018年7月
大賞発表:2018年8月

2018年8月6日更新