Project ANIMA特集の最後を飾るのは、第3弾「キッズ・ゲームアニメ部門」で審査員の1人を務める、動画工房のアニメーター・平松岳史。今回もDeNAの上町裕介プロデューサーと対談を行い、子供向けアニメの難しさと奥深さについて語り合ってもらった。「ドラえもん」や「ポケットモンスター」から「ゆるゆり」「NEW GAME!」まで、幅広く手がける動画工房が考える“子供向け”とは。
取材・文 / はるのおと 撮影 / 島袋智子
キッズ向けアニメを手がけ続けてきた動画工房
──まず動画工房さんについて伺います。「キッズ・ゲームアニメ部門」というテーマと、現在は深夜アニメを中心に手がけている動画工房という組み合わせを知ったときは意外に感じたのですが、調べると動画工房45年の歴史の中で、大半は子供向けアニメを制作されていたんですね。
平松岳史 そうなんです。古くは「一休さん」から、「ドラえもん」や「ポケットモンスター」、「世界名作劇場」などもお手伝いしてきました。
上町裕介 「ポケットモンスター」ではオリジナルキャラが出るような回も担当されていましたよね。あとは「風の谷のナウシカ」の作画も手がけられていて。
平松 ジブリ作品も多くお手伝いさせていただきました。その後、2011年のテレビアニメ「ゆるゆり」くらいから、ようやく一般のお客さんに認知していただいてきまして。
上町 「日常ものと言えば動画工房」というイメージが付きましたよね。
──「GJ部」「未確認で進行形」「NEW GAME!」「刀剣乱舞-花丸-」など丁寧な作風でアニメファンからの評価は高いですよね。
平松 恐縮です。
上町 その一方でロボットアニメの「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」なんかもやっていて手がける作品の幅が広い。そんな伝統と実績がある会社とご一緒できるのは光栄です。
──平松さんはいつ頃に動画工房に入社されたのでしょうか?
平松 私は1999年に作画として入社し、その頃は「デジモンアドベンチャー」や「ポケットモンスター」「千と千尋の神隠し」などをお手伝いしました。
──1999年と言うと、動画工房は「まもって守護月天!」にも参加されていたようですね。
平松 「守護月天!」は私が入る前年に参加させて頂いていて、私はその後の「神風怪盗ジャンヌ」から手伝いを始めさせていただきました。当時は東映アニメーションさんの作品をお手伝いする機会が多かったです。
募集対象は「HUNTER×HUNTER」初期くらいのイメージ
──Project ANIMA第3弾の募集テーマが「キッズ・ゲームアニメ部門」になった経緯を教えてください。
上町 元々は女性向け作品の部門なども考えていました。でも動画工房さんと話を重ねるうちに、2020年代を代表する作品を作るにあたって現在のアニメ業界に足りないもの……そこまで低年齢層向けではないにしても、王道感のあるものをしっかりと表現していきたいという話になりまして。往年のジャンプ的な王道の部分ですね。それで第3弾は、15歳以下の少年少女を主人公にした作品、もしくはゲーム向けの作品というテーマで募集することにしました。
平松 うちとしても、昔から子供向けアニメに数多く参加させていただいてきましたので、元請けとしても作りたいという思いが強くありました。「世界名作劇場」や「じゃりン子チエ」のように数年、数十年経ったときにその世代を思い出せるような、長く愛される作品作りに挑戦してみたいと考えています。
上町 イメージとしては「HUNTER×HUNTER」の初期くらいですかね。
──これまで「ロボット部門」「異世界・ファンタジー部門」とジャンルで縛ったテーマが続いていたので、「キッズ・ゲームアニメ部門」という対象年齢的な部分でのテーマ設定に少し驚きました。
上町 第3弾のテーマは、応募者側が考えなければならないことを一段階高く設定している側面もあります。第1弾、第2弾の対談の際は「創作の自由さやクリエイターの熱量を大事にしたい」というお話をしました。でも今回はもう少し商業的というか、「作品がどういった人たちにどうやって広まっていくか」という部分も含めて創作を考えるきっかけになればいいなと思っています。
平松 ゲームだと友達と対戦するとか、キャラクターやアイテムなどを交換し合うといった遊び方がありますよね。それはユーザーにどう楽しく遊んでもらえるかを考えて生まれた仕組みなわけで、アニメでもターゲットがどんなふうに楽しむかを意識した作品作りをしてみてほしいです。
上町 仕組みから考えるという手順はいいですね。作品におけるルールのようなものを最初に考えたうえで、そこにキャラクターや世界観を乗せていく。任天堂さんのゲームはそういう考えで作られていることが多いらしく、例えば「スプラトゥーン」も“塗りつぶす”というゲームのコンセプトがあったからインクを放つキャラクターができていったわけです。わかりやすい楽しさを求められる子供向けの作品は、そういった考え方との親和性が高いかもしれません。
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小学校高学年が頭を使わずとも楽しめるアニメが少ない現状
第3弾「キッズ・ゲームアニメ部門」募集要項
- テーマ
- ①15歳以下の少年少女が主人公のオリジナル作品
- ②RPG/アドベンチャー/TCG等のゲーム展開に適したオリジナル作品
- ①もしくは②のどちらかを満たす作品であれば、世界観やジャンルは不問。
- 募集期間
- 2018年8月1日(水)~11月15日(木)
- 賞金
- 「小説・脚本選考」「マンガ選考」「企画書選考」それぞれで金賞・銀賞を決定。金賞は賞金15万円、銀賞は賞金5万円を贈呈。さらに最終選考にてアニメ化作品として選ばれた作品には賞金100万円を贈呈。
※アニメ化作品は各選考の金賞・銀賞以外から選ばれる場合もある。
- 募集形式
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- 小説形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の小説本編(未完結でも可)、もしくは3000文字以上のプロット(完結必須)。
- 脚本形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の第1話の脚本。
- マンガ形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、連載作品としての冒頭1話分以上(20ページ前後)の完成原稿、もしくは同程度のページ数のネームおよび作画見本。
※商業誌での掲載がないオリジナルの同人作品についても上記要件を満たしていれば応募可能。 - 企画書形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、作品の世界観やプロットのわかる企画書。
- 世界観(時代背景や社会情勢など)の説明
- 各話のあらすじ、及びストーリーの大まかな流れ(物語の起承転結)
- 主人公・敵勢力の目的、もしくはゴール
- 審査員
- DeNA、創通、文化放送、MBS、動画工房
- 結果発表
- 各選考中間発表:2019年1月
各選考入選発表:2019年2月
大賞発表:2019年3月