原作ものもオリジナルもどちらも楽ではない(松倉)
──J.C.STAFF作品は原作ものが多いです。それらのほとんどに制作側のプロデューサーとして関わっている松倉さんにとって、オリジナル作品はどんな印象がありますか?
松倉 クリエイターとしての立場で考えると、自分の中に溜まった創作欲をぶつける、非常に楽しいものです。反面、自分は経営者のひとりでもあるので、すべてイチから作り出さないといけない非常に大変なものでもあります。それをリスクと捉えるかどうかはその都度変わってくるでしょうし、原作ものは原作もので大変な要素もいっぱいあるので……どちらもメリット、デメリットがあって、楽ではないですね。
上町 ちなみに松倉さんは「オリジナルで好きに作っていい」と言われたら、やってみたいことはありますか?
松倉 過去に自分がかなり好きに作ったオリジナルがね、全然売れなかったんですよ(笑)。「よみがえる空 -RESCUE WINGS-」。自分がアニメに求めるもの、なんて言うと偉そうだけど、「視聴者の心に何か残したい」とは思っているのでファンタジーものでも単に女の子がかわいいだけだと作りたくない。そのファンタジー世界で起こった何かが視聴者に届いて、何かしら残るものを作りたいですね。そういうことを考えず、100%自分が好きなように作っちゃうと「よみ空」になっちゃう(笑)。でもね、誰もいないサッカー場は、すごくいいドリブルをしていいゴールが決められるんですよ。
上町 なるほど、ちょっと絵が浮かびました。
松倉 「気持ちいいシュート撃っちゃったな」ってときに観客が誰もいない、となると悲しいですけどね(笑)。
作品において、キャラクターの魅力が最重要(上町)
──「よみ空」も6、7話をはじめ、名エピソード揃いの作品でした。では逆に、どんな企画が売れると感じますか?
松倉 キャラクターが生き生きしていて話が面白い。基本的にはこれが売れるもの、面白いものに共通している鉄則だと思います。設定をいっぱい語られるよりも、キャラクターの心情が視聴者にちゃんと伝わるかどうか、みたいなところがやっぱり一番大きい。
上町 僕もキャラクターの魅力が素晴らしくないと、作品としては面白くないと言い切ってしまってもいいと思います。「ソードアート・オンライン」はキリトがカッコいいからみんな観るんだし、「コードギアス」だってルルーシュの生き様を見たくて観ているわけで。そういった愛されるキャラクターをどう作り出していくかは、すごく難しい課題ですけどね。
松倉 特にキャラクターのカッコよさは、時代によって変わるから。自分たちにとっては松田優作がカッコいいけど、今の若い人が見たら変な人だと思うかもしれない。
上町 確かに、三船敏郎を見て「めちゃくちゃカッコいいと思うか?」と問われても、僕は少し怪しいです。
松倉 その辺は、時代に合ったものを提示しなきゃいけないよね。最近だと「主人公の成長ものとか見たくない」という風潮もあるし。
上町 最近の主人公は努力しないですよね。
松倉 努力したけど大して成長しない、というのがリアルでいいなと個人的には思うんですけど。「人間、そんなに変わんねえよ」みたいな話。
──(笑)。最後の質問です。Project ANIMAは2020年代にアニメ化する作品を創出するというテーマですが、その頃のアニメ業界はどうなっていると思われますか?
松倉 スクラップ&ビルド的に言ってしまうと、今がスクラップ状態ですから(笑)。これからはチャレンジし甲斐のある10年になると感じています。それと同時にアニメ業界もいろいろと傷んでいて、法律的なことだったり予算面であったり、単純に新しく入ってくる若手のレベルの話だったり。そういった部分のリペアも同時にしないといけない10年になるのではないでしょうか。
上町 海外展開という点はどう考えられていますか? 5月に日中共同映画製作協定が結ばれるなど、日本のアニメがまたグローバルに展開していく時期にはなるのかなと思っていますが。
松倉 作品がワールドワイドに展開するとなると、世界的な大資本に負けるかもしれない恐怖もあります。
上町 世界基準の作品を作らなきゃいけない、というプレッシャーですよね。
松倉 アメリカをはじめ海外勢の研究熱心な姿勢が恐ろしくてしょうがないです。彼らは日本アニメをリスペクトしてる分だけすごく研究しています。その反面、日本の中堅以下のクリエイターはほとんど研究をしない。アニメを描くのも大事だけど、座学でアニメを勉強するという面が非常に欠けています。河森さんも言われていましたけど、日本のアニメ、映画は確実に退化している。勉強熱心な海外の方がチャレンジしてきたときに、どのくらい吹き飛ばされてしまうのか不安です。
上町 我々がどれだけ日々アニメを勉強できるか……アニメへの愛が試される10年となる可能性もありますね。
- 松倉友二(マツクラユウジ)
- 京都府出身、1972年2月27日生まれ。J.C.STAFF所属。20代でプロデューサーを任され、「少女革命ウテナ」「あずまんが大王」「ゼロの使い魔」「とある魔術の禁書目録」など数々のアニメ制作に携わる。夏からは「プラネット・ウィズ」「ハイスコアガール」などが控えている。
- 上町裕介(カミマチユウスケ)
- 大阪府出身、1985年1月16日生まれ。株式会社ディー・エヌ・エー所属。「Project ANIMA(プロジェクトアニマ)」総合プロデューサー。アニメ、ゲーム、ラジオとさまざまなコンテンツの立ち上げを担当しているほか、音響監督や声優志望者向けのワークショップなど幅広く活躍。そのほか元カメラマンや元コピーライターなどの経歴を持つ。現在、「豊永・小松・三上の真夜中のラジオ文芸部」が文化放送にて放送中。
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第2弾「異世界・ファンタジー部門」募集要項
- テーマ
- 異世界・ファンタジーをテーマとした作品であれば、時代設定やコンセプトは自由。
- 募集期間
- 2018年5月1日(火)~7月15日(日)
- ※作品募集は終了。
- 賞金
- 「小説・脚本選考」「マンガ選考」「企画書・イラスト・動画選考」それぞれで金賞・銀賞を決定。金賞は賞金15万円、銀賞は賞金5万円を贈呈。更に最終選考にてアニメ化作品として選ばれた作品には賞金100万円を贈呈。
※アニメ化作品は各選考の金賞・銀賞以外から選ばれる場合もある。
- 募集形式
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- 小説形式
- 1万字以上の小説本編(未完結でも可)、もしくは3000文字以上のプロット(完結必須)
- 脚本形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の第1話の脚本
- マンガ形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、連載作品としての冒頭1話分以上(20ページ前後)の完成原稿、もしくは同程度のページ数のネームおよび作画見本。
※商業誌での掲載がないオリジナルの同人作品についても上記要件を満たしていれば応募可能。 - 企画書形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介にくわえ、作品の世界観やプロットのわかる企画書。
- 世界観(時代背景や社会情勢など)の説明
- 各話のあらすじ、及びストーリーの大まかな流れ(物語の起承転結)
- 主人公・敵勢力の目的、もしくはゴール
- 審査員
- DeNA、創通、文化放送、MBS、J.C.STAFF
- 結果発表
- 各選考中間発表:2018年9月
各選考入選発表:2018年10月
大賞発表:2018年11月
2018年8月6日更新