ジャンルの定義なんて気にせずに応募してほしい(上町)
──今回、部門名を見て気になったのがファンタジーの定義です。幅広く考えられる言葉だと思いますが、どう捉えるべきでしょうか?
上町 科学的な考証に基づいてなんらかの非現実な事象が起こっているものはSF、それ以外の超自然的な現象をベースに非日常的なことが起こっているものをファンタジーと考えています。あまり細かな定義をし始めると作る側にとって制約になるでしょうし、今回アニメ化を目的としたプロジェクトではあるものの、ほかのメディア展開にふさわしい作品が出てきてもいいと思っているので、わかりやすさ重視で定義しました。
松倉 細かくジャンル分けして「どれがファンタジーにふさわしいか」なんて考えても非常につまらない。剣と魔法のファンタジーだけでなく、別に未来都市で銃を撃っていても異世界ファンタジーだと言えるものもあるでしょうし。
上町 サイエンス・ファンタジーというジャンルもありますからね。そういった難しい定義は全部取っ払って、好きなものを仕上げて応募してくれるとうれしいです。それこそ映画の「アバター」なんて、SFかファンタジーかと言われると判断は難しいでしょうし。
──たとえば「とある」シリーズだと「禁書目録」はファンタジーだと直感的にわかるのですが、「超電磁砲」はSFなのかファンタジーなのかと一瞬考えてしまいました。
松倉 「科学の」って付いてますから(笑)。
上町 「とある科学の超電磁砲」は、あの世界の中で科学的根拠が存在するのでSFです。でも「とある」シリーズは科学と魔法が共存している世界じゃないですか。それを示した前例もあるし、ファンタジーとSFが共存した作品も全然問題ないと僕は思いますね。
──部門名に「異世界」とありますが、現代社会を舞台にした、いわゆるローファンタジー作品も対象内でしょうか?
上町 ありです。ファンタジーの代名詞的存在である「ハリー・ポッター」も現代にいるときはローファンタジーで、ホグワーツ魔法魔術学校に入った瞬間にハイファンタジーになりますよね。その境界線もそれほど気にしません。
松倉 そんな感じですごく間口が広いコンテストなので、自分としては「異世界・ファンタジー部門」となっているけど、作品によっては異世界が舞台でなくてもいいか、くらいに考えていますよ。
「ウテナ」にだっていろんなモチーフがある(松倉)
──ここからは審査員の1人である松倉さんについて少し伺わせてください。松倉さんがプロデューサーとして最初に手がけられたのは「ウテナ」でしょうか?
松倉 仕事としては20歳からプロデューサー的な仕事をやってましたが、名刺にプロデューサーとついたのは、映画「MAZE☆爆熱時空 天変脅威の大巨人」ですね。
上町 20代後半から30代前半の世代のクリエイターは、「ウテナ」を観て育った人も多いですからね。しかもそんな作品を若いうちから手がけていて……レジェンド中のレジェンドですよ。
松倉 俺、メチャクチャ頑張り屋さんだったんで。「ウテナ」を作っていたときは、幾原邦彦という人間が持つ異質感みたいなものが自分にも衝撃的でした。結局20年経ったけど、あれに代わるものは世に出ていない。Project ANIMAで生まれる作品もそういうレベルのものを期待しています。応募者が自分にしか出せない企画を出して、それをこのチームでしか作れないアニメにしないと意味がない。
──20年残るものとなると、やはり何か強烈な、作り手の個性が滲み出るものが必要でしょうか?
松倉 それも必要ですが、幾原さんが作っていた「ウテナ」にだっていろんなモチーフがあります。それをどう料理したか、という部分も重要ですよね。オリジナリティも大切だけど、「これもいいものだ、取り込んでみよう」と思える勇気というか。それらが合わさり、20年代わるものが出なかったから「ウテナ」は大成功なんでしょうけど、Project ANIMAではそういった核になる面白さをこちらが見極めていかないといけないのが大変でしょう。「これは何かに似ているから」だけで弾いちゃうと、拾いこぼしが出るだろうし。
上町 しかし「ウテナ」ってよく考えたらとんでもない作品ですね。挿入歌として「絶対運命黙示録」が流れるんですよ。すごい決断です。
松倉 自分でもわけがわからないと思いながらも、とりあえず幾原さんの思うように作ってもらいました(笑)。サブカルとしてのアニメーションを作るのが許された時代だったし、俺も30代前半くらいまではいろいろとチャレンジしていました。
──企画書や原稿、イラストなどに、応募者はどれだけ個性を出せるか、審査員はどれだけ個性を読み取れるかというのは難しそうですね。
上町 でもオリジナリティのある作品は、紙切れ1枚でもわかりますよ。最近、クリエイターさんから「オリジナリティってなんですか?」という質問をすごく受けるんですけど、僕らが最近編み出した答えが「140文字以内でその作品をクイズにしてください」というものです。たとえば「サーフィンに乗って戦うメカロボットアニメと言えば?」というクイズなら「交響詩篇エウレカセブン」しか答えがない。「巨人が攻めてきて壁を破壊し、人を食べる作品は?」と言われたら「進撃の巨人」だけ。そんな風に答えが唯一無二になるクイズが作れるような作品はオリジナリティがあるよね、と。そう考えると、紙切れ1枚でもすごい熱量を放つものは充分にわかると思います。
松倉 ああ、確かにそれはいいお題ですね。
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原作ものもオリジナルもどちらも楽ではない(松倉)
第2弾「異世界・ファンタジー部門」募集要項
- テーマ
- 異世界・ファンタジーをテーマとした作品であれば、時代設定やコンセプトは自由。
- 募集期間
- 2018年5月1日(火)~7月15日(日)
- ※作品募集は終了。
- 賞金
- 「小説・脚本選考」「マンガ選考」「企画書・イラスト・動画選考」それぞれで金賞・銀賞を決定。金賞は賞金15万円、銀賞は賞金5万円を贈呈。更に最終選考にてアニメ化作品として選ばれた作品には賞金100万円を贈呈。
※アニメ化作品は各選考の金賞・銀賞以外から選ばれる場合もある。
- 募集形式
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- 小説形式
- 1万字以上の小説本編(未完結でも可)、もしくは3000文字以上のプロット(完結必須)
- 脚本形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の第1話の脚本
- マンガ形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、連載作品としての冒頭1話分以上(20ページ前後)の完成原稿、もしくは同程度のページ数のネームおよび作画見本。
※商業誌での掲載がないオリジナルの同人作品についても上記要件を満たしていれば応募可能。 - 企画書形式
- 800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介にくわえ、作品の世界観やプロットのわかる企画書。
- 世界観(時代背景や社会情勢など)の説明
- 各話のあらすじ、及びストーリーの大まかな流れ(物語の起承転結)
- 主人公・敵勢力の目的、もしくはゴール
- 審査員
- DeNA、創通、文化放送、MBS、J.C.STAFF
- 結果発表
- 各選考中間発表:2018年9月
各選考入選発表:2018年10月
大賞発表:2018年11月
2018年8月6日更新