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「Project ANIMA」特集|松倉友二(J.C.STAFF)×上町裕介(Project ANIMAプロデューサー) 「ウテナ」「とある」シリーズを手がけたプロデューサーが語る 求めるのはフォーマットに縛られない、オリジナリティのある作品

一般からアニメの原作を広く募る大型企画・Project ANIMAの募集第2弾「異世界・ファンタジー部門」。本部門で特別に審査員を務めるのは、J.C.STAFFの執行役員制作本部長・松倉友二プロデューサーだ。特集第1弾に引き続き、DeNAの上町裕介プロデューサーと、「敷居が低い分、作品数が多く難しい」と語る「異世界・ファンタジー部門」について談義。小説投稿サイト「小説家になろう」をきっかけに爆発的にその数を増やした“異世界転生もの”についても語り合ってもらった。

取材・文 / はるのおと 撮影 / 島袋智子

チャレンジし続けるJ.C.STAFFだから、新しい作品に興味があった(松倉)

──第1弾「SF・ロボットアニメ部門」の応募が4月15日に締め切られ、6月の中間発表に向けて選考中だと思います。どれくらいの応募がありましたか?

左から上町裕介プロデューサー、松倉友二プロデューサー。

上町裕介 想定の倍以上の応募がありました。一般的なSF小説のコンテストって500か600の応募があれば多いと言われている中で、その数倍の規模になったのはありがたいですし、まさに死ぬ思いで選考を進めております(笑)。

──応募作品の印象は?

上町 もっとメカものが多くなると予想していましたが、皆さん思った以上にいろいろな形のSFを模索していますね。応募形式で印象的だったのが、1970年代か80年代に撮られた8ミリフィルムを掘り返してきて、その映像をデジタルデータにして送ってきてくださったもの。ほかにも紙に手書きしたものをスキャンして送ってきてくれた方もいて、応募すること自体にドラマ性を感じられてとてもうれしいです。

松倉友二 正直、ロボットものならともかくSFという括りでそこまで反響があったのは意外でした。SFって日本国内だと衰退しつつあるマイナージャンルになって久しいですよね。Project ANIMAはアニメ化を目指すという明確なゴールがあるおかげで、応募が集まったのでしょうか。

上町 作家やファンにもその思いはあるみたいで、「SFの創作を盛り上げるような活動をしてくれてありがとう」「SFの新しいファン層を開拓してくれるような企画をありがとう」という声はいただきました。

──なるほど。それでは第2弾「異世界・ファンタジー部門」について伺います。まず上町さんが松倉さんに審査員のオファーをした理由を教えてください。

上町 J.C.STAFFはファンタジー作品をたくさん作られていて、いずれもクオリティが高いことにくわえ、別の意図もあります。今、アニメ市場の事業構造が大きく移り変わる中で、アニメ制作をきちんと事業としてやっている制作会社さんがかなり少ないと感じています。しかしJ.C.STAFFさんは社員雇用もしっかりしていて、事業として成り立たせている。Project ANIMAは2020年以降もアニメ業界が良き形で進む一助となりたいと思っているので、そういうところにも魅力も感じてオファーしました。

松倉友二プロデューサー

松倉 ありがとうございます。てっきりいろんなところに断られて、うちに回ってきたのかなと思っていました。

上町 いや、優先順位は最上位ですよ(笑)。「とある」シリーズは好きで観ていましたし、毎年夏に行われるアニサマ(「Animelo Summer Live」)に行っても、未だに「超電磁砲」のオープニング曲なんかはファンの興奮度が違いますよね。放送開始から10年近くも経っているのに、そんなにみんなが興奮するアニメをたくさん作られているのはやはりすごいですよ。

松倉 うちはたくさんやっていますからね。基本的には「ロリコンもの以外はなんでも作る」という考えなんです。

──「うらら迷路帖」や「ツインエンジェルBREAK」は大丈夫だと。

松倉 その辺は小学生じゃないからOKでしょう(笑)。「アリスと蔵六」も古き良きSF感漂う原作でしたしね。

上町 僕は「ウィッチクラフトワークス」も好きでしたし、「WIXOSS」シリーズも業界内ですこぶる評判が高い作品です。古くは「少女革命ウテナ」もありますし、やっぱり名作揃いです。

松倉 その「ウテナ」とか、日常系4コママンガのアニメ化元祖である「あずまんが大王」とかもそうですが、うちは幅広くチャレンジをするというスタンスですね。そういう意味では、Project ANIMAから生まれる新しい作品をアニメ化するというのは興味のあるところです。

“異世界転生もの”というフォーマット以上に大切なものがある(上町)

──松倉さんは、Project ANIMAの審査をするというオファーに、どのような印象を持たれていましたか?

上町 よく「正気の沙汰じゃない」とは言われますが……。

松倉 過去に他社さんでやられたコンテストの審査員もやりましたけど、あまりうまく展開しなかったんですよ。だから今回も当初は「どこまで本気なのかな?」と思って。でも、お話しするうちに本気だというのが伝わってきたので話に乗りました。ただ、強いて言えば「なんでうち(J.C.STAFF)が異世界ファンタジーなんですか?」というのは最初に言いましたね。数が多くて選ぶのが大変そうじゃないですか(笑)。

──まさに前回の対談で上町さんが「異世界・ファンタジー部門は敷居が低い分、作品数が多く難しい」という話をされていました。すでに第2弾の応募は始まっていますが、やはり応募数は多いですか?

上町裕介プロデューサー

上町 確かに、初速のスピード感が前回と違いますね。今回が2回目の募集ということで「前回はノリで出したけど、今度はしっかりと作り込もう」という考えの方も多く、後半も伸びそうです。「小説家になろう」や「カクヨム」、「エブリスタ」といった小説投稿サイトの影響で圧倒的に作家数が多いのもあり、最終的には第1弾の倍は応募があるんじゃないかと考えています。

松倉 その代わり、厳しい話かもしれないけどハズレもきっと多いですよね。ハズレというか、すでに世の中に出ているものと似たようなもの、類似作品が多くなるんじゃないかなという懸念はあります。

上町 前回、河森(正治)さんとの対談でも「異世界転生もののフォーマットの乱用はよくない」という話が出ました。あのフォーマットのよさって主人公が現実世界から異世界に行くからこそ生まれる没入感の強さであり、その本質的な部分をきちんと作品に反映できるかどうかが重要だと思うんですよ。例えば今度アニメ化される「転生したらスライムだった件」なんて話がよく書けていて、設定もこだわっているし、転生した先の世界観の構築もきちんとなされているからこそ面白い。

松倉 よくあるけど、現実世界から来た主人公が異文化交流する中ですれ違いが生まれたり、現代人だけが持っている知識が有利に働いたりね。そういう面白さを出すためのフォーマットであって、ただそのフォーマットだけ使うのはよくない。

──近年のヒット作だと「Re:ゼロから始める異世界生活」やMMORPG世界へのダイブを扱った「ソードアート・オンライン」などは、転生や転移といった要素を物語のギミックとしてうまく使っていますよね。

松倉 そういった作品も、設定がすごくよかっただけでなく、やはりキャラクターやストーリーを含めて総合的に素晴らしいと理解する必要があると思います。ただ、うちは意外と異世界転生ものってやっていないんですよ……あっ、「ゼロの使い魔」があるか。

ヤマグチノボルの小説を原作に、4度にわたってテレビアニメ化した「ゼロの使い魔」。主人公の鈍感な男子高校生・平賀才人は、ヒロインのルイズによって異世界に召喚される。現在「ゼロの使い魔 Memorial Complete Blu-ray BOX」が発売中。 © 2006 ヤマグチノボル・株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/ゼロの使い魔製作委員会

上町 確かに。「ゼロ使」は近年の異世界転生ものの元祖ですよね。

松倉 しかもツンデレも元祖ね(笑)。厳密には違うがツンデレでブレイクって意味で。

上町 異世界ものって最近のトレンドだと思われがちですけど、意外と昔からありますよね。「犬夜叉」もそうだし。

松倉 戦国時代にタイムスリップするという意味では、「戦国自衛隊」だって異世界ものだし、昔からずっとある定番ジャンルですよ。

第2弾「異世界・ファンタジー部門」募集要項

テーマ
異世界・ファンタジーをテーマとした作品であれば、時代設定やコンセプトは自由。
募集期間
2018年5月1日(火)~7月15日(日)
※作品募集は終了。
賞金
「小説・脚本選考」「マンガ選考」「企画書・イラスト・動画選考」それぞれで金賞・銀賞を決定。金賞は賞金15万円、銀賞は賞金5万円を贈呈。更に最終選考にてアニメ化作品として選ばれた作品には賞金100万円を贈呈。
※アニメ化作品は各選考の金賞・銀賞以外から選ばれる場合もある。
募集形式
小説形式
1万字以上の小説本編(未完結でも可)、もしくは3000文字以上のプロット(完結必須)
脚本形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、1万字以上の第1話の脚本
マンガ形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介に加え、連載作品としての冒頭1話分以上(20ページ前後)の完成原稿、もしくは同程度のページ数のネームおよび作画見本。
※商業誌での掲載がないオリジナルの同人作品についても上記要件を満たしていれば応募可能。
企画書形式
800字程度のあらすじ、300字以上の登場人物紹介にくわえ、作品の世界観やプロットのわかる企画書。
  • 世界観(時代背景や社会情勢など)の説明
  • 各話のあらすじ、及びストーリーの大まかな流れ(物語の起承転結)
  • 主人公・敵勢力の目的、もしくはゴール
※画像や動画の添付も可 (動画を添付する場合、YouTubeへ限定公開で動画をアップロードし、URLを本文中に付記)
審査員
DeNA、創通、文化放送、MBS、J.C.STAFF
結果発表
各選考中間発表:2018年9月
各選考入選発表:2018年10月
大賞発表:2018年11月

2018年8月6日更新