4月にグランドジャンプ(集英社)で連載がスタートした「プレイボール2」の単行本第1巻が8月18日に発売された。故・ちばあきおの名作を野球マンガの名手・コージィ城倉が引き継ぐ形で始まった同作。第1話が掲載されたグランドジャンプは2017年の売り上げ最高記録を更新し、以降も前年比100%超えを続けているとのことで、「プレイボール」完結から38年ぶりとなる続編に世間からの注目度の高さがうかがえる。
コミックナタリーは1巻の発売を記念し、作者のコージィ城倉と、ちばあきおの実兄・ちばてつやとの対談を初めて実現させた。幼い頃から“2人のちば先生”に憧れ、尊敬してきたという城倉。弟の作品を城倉が手がけることになり、「本当にうれしい」と語るちば。東京都内にあるちばてつやプロダクションで対面した2人は、それぞれの立場からちばあきおと「プレイボール」への思いを交わし合った。
取材・文 / ツクイヨシヒサ 撮影 / 小坂茂雄
「キャプテン」&「プレイボール」を総復習!
「キャプテン」
(別冊少年ジャンプ1972年2月号~79年3月号連載 ※1974年より月刊少年ジャンプに誌名変更)
野球の名門・青葉学院から弱小校の墨谷二中へと転校してきた谷口タカオ。転校前は2軍で補欠という扱いだった谷口は、ひょんなことから青葉でレギュラーを務めていたと勘違いされてしまう。真実を打ち明けることができなかった谷口。しかし、その後絶え間ない努力で実力を身に付けチームを牽引していくことになる。
墨谷二中の軌跡をプレイバック
- 谷口キャプテン時代(文庫版1~3巻)
- 野球の実力者と勘違いされてしまった谷口は父親とともに特訓を開始。先代のキャプテン卒業時に新キャプテンに任命されるほどの実力を身に付ける。就任当初は気弱な部分も見受けられたが、キャプテンシーに目覚め、特訓に次ぐ特訓でチームを強化。全国制覇を成し遂げた青葉学院との日本一をかけた試合で勝利を収める。
- 丸井キャプテン時代(文庫版3~5巻)
- 谷口の後を継いだ激情家なキャプテン。就任後最初の試合となった春の選抜大会では格下の広島・港南中に破れ、初戦敗退に終わってしまう。その後奮起した墨谷二中はスパルタな合宿を敢行し、計36チームとの練習試合で全勝を果たす。丸井キャプテン最後の試合となった地区大会決勝では死闘の末に青葉学院に勝利するが、メンバーの多くが負傷し全国大会を棄権することになる。
- イガラシキャプテン時代(文庫版5~13巻)
- 谷口キャプテン時代の1年生。体格には恵まれないものの、ポジションはひと通りどこでもこなせるという非凡な野球センスを持ち、1年時には丸井からレギュラーの座を奪い取った。キャプテン就任後はこれまで以上にスパルタな練習を課し、夏の大会では青葉学院に変わる新王者・和合中を下し全国優勝を成し遂げる。
- 近藤キャプテン時代(文庫版13~15巻)
- 大柄な体格を生かしたプレーが特徴のキャプテン。入部後は自己中心的な物言いで周囲の反感を買ってしまう。イガラシ退任後に消去法でキャプテンに選ばれるが、チームメイトと衝突を繰り返しながらも育成に軸を置いた練習を取り入れ、墨谷二中の弱点であった選手層の薄さを解決していく。
「プレイボール」(週刊少年ジャンプ1973年27号~1978年31号)
墨谷二中から墨谷高校へと進学した谷口は、中学時代最後の試合での指の怪我により野球を続けることを断念していた。気持ちを新たにサッカー部へと入部した谷口だったが、野球への思いを捨てきれず改めて野球部の門を叩くことに。当初の墨谷高野球部は草野球レベルの弱小チームだったが、谷口の加入により着実に力を付けていく。
谷口のこれまでの歩み
- 高校1年次(文庫版1~5巻)
- 指の怪我によりボールを真っ直ぐに投げられないという問題を抱えていた谷口。夏の公式試合は代打要員としてスタートしたものの、その能力を買われ指のハンデを抱えながらスタメンに。ついには3回戦にまでコマを進めるが、強豪校の東都実業の前に惜敗。夏の大会後には谷口は1年生ながらキャプテンに指名され、チームを託される。
- 高校2年次(文庫版5~11巻)
- 1年の夏に指の手術を受け復調した谷口率いる墨谷高は、キャッチャーの倉橋や中学時代の後輩たちといった戦力を得て、夏の地区予選では準々決勝までコマを進める。大会後には谷口を慕う中学時代の後輩キャプテン・丸井が墨谷高へと編入。秋季大会ではたった10人というチーム人数ながらベスト8に進出するまでに実力を高める。
- 高校3年次(文庫版11巻)
- 墨谷二中のイガラシや、墨谷二中を苦しめた江田川中の井口など新戦力が加入し、さらに勢いに乗る墨谷高だったが、甲子園出場校との練習試合で惨敗を喫してしまう。ピッチャーとして打ち込まれてしまいショックを受ける谷口だったが心機一転、甲子園出場をかけた最後の夏に向けて再出発を誓う。
- コージィ城倉、ちばあきお「プレイボール2①」
- 2017年8月18日発売 / 集英社
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青春野球漫画の伝説が、蘇る──!!
金字塔、復活。
名作「キャプテン」「プレイボール」奇跡の続編! 努力の天才・谷口キャプテンを中心に、墨谷高校の新たな物語が幕を開ける!
- コージィ城倉(コージィジョウクラ)
- 1963年長野県生まれ。1989年に週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「男と女のおかしなストーリー」でデビュー。デビュー時から野球を題材にすることが多く、同年ミスターマガジン(講談社)にて「かんとく」、1995年に週刊少年サンデー(小学館)にて「砂漠の野球部」、2003年には週刊少年マガジン(講談社)にて「おれはキャプテン」など数々のヒット作を生み出している。一方で人間の暗い心理を浮き彫りにするような作品も手がけ、2002年にビッグコミックスピリッツで連載した「ティーンズブルース」では、ホストクラブにはまって転落していく女子高生を描き読者を驚かせた。また森高夕次(もりたかゆうじ)名義で原作も担当し、アニメ化が決定している「グラゼニ」をはじめ、「おさなづま」「ショー☆バン」「ストライプブルー」「トンネル抜けたら三宅坂」などバラエティ豊かな作品を発表している。現在の連載作に「プレイボール2」「モーニングを作った漫画たち」「グラゼニ~東京ドーム編~」「あしたのジロー」など。
- ちばてつや
- 1939年1月11日東京都生まれ満州育ち。本名は千葉徹弥。1956年、単行本作品「復讐のせむし男」でデビュー。1961年に週刊少年マガジン(講談社)にて、原作に福本和也を迎え「ちかいの魔球」を連載開始。翌年少女クラブにて「1.2.3と4.5.ロク」を連載し第3回講談社児童まんが賞を受賞、1965年に週刊少年マガジンで連載した「ハリスの旋風」は翌年アニメ化された。 1968年、同誌にて高森朝雄とタッグを組み、ボクシングを題材にした「あしたのジョー」を連載。ライバルである力石徹が作中で死んだ際には、実際に葬儀が行われるほどの社会現象を巻き起こした。同作は1970年と1980年にアニメ化、1970年と2011年に実写映画化、1980年とその翌年にアニメ映画化がなされた。1973年、週刊少年マガジンにて「おれは鉄兵」、ビッグコミック(小学館)には「のたり松太郎」を連載。2作ともヒット作となり、「おれは鉄兵」は1976年に第7回講談社出版文化賞を受賞、「のたり松太郎」は翌年第6回日本漫画家協会特別賞および1978年第23回小学館漫画賞を受賞した。1981年、週刊少年マガジンにて「あした天気になあれ」を連載する。2001年に文部科学大臣賞を受賞、2002年には紫綬褒章を授与された。現在はビッグコミックにて「ひねもすのたり日記」を連載中。