コミックナタリー Power Push - 大場つぐみ×小畑健「プラチナエンド」
担当編集者が今だから言える「DEATH NOTE」「バクマン。」コンビのこれまで、これから
もう一度3人で作品を作りたい
──「バクマン。」の終了から今回の「プラチナエンド」の連載まで、約3年半とかなり期間が空きました。大場先生が作品作りに取りかかったのはいつごろなんでしょう。
アイデア自体は「バクマン。」の終わり際にはあったみたいです。「バクマン。」に、劇中マンガがたくさん登場したじゃないですか。その中のひとつの案として、天使の話があったんです。そのときは「天使」「翼」「矢」くらいの、漠然としたキーワードくらいだったと言っていましたが。
──そこから具体的なお話にするのに時間がかかったんでしょうか。
ええ。充電期間もあったでしょうし、ゆっくり考えていたみたいで。作家さんは長く描いていくと、変わっていく方と変わらない方がいて。ずっと少年誌で描ける方と青年誌的になっていく方ですね。変わらない方のほうが少ないと思いますけど。自分がジャンプを離れてヤングジャンプに異動したとき挨拶させてもらって、機会があればまたいつかやりたいですねと。僕自身はもう一度3人でやりたいと思ってました。そのうちに、小畑先生には「All You Need Is Kill」のコミカライズをお願いしたり、大場先生にも「となりの怪物くん」「僕と君の大切な話」のろびこ先生と組んで読み切りを1本作ってもらったり。で、またそのうちに今度は僕がジャンプスクエアに異動になって、今に至る感じです。
小畑先生は連載によって絵柄を自由に変えられる
──「プラチナエンド」の天使という題材は、キャラクター性は「DEATH NOTE」の死神と正反対にあるかと思うのですが、デザイン上は翼が生えていたりと近い位置にありますよね。
天使については小畑先生も、モチーフとしては好きだし描きたいと思うポジティブな気持ちと、普通にゴシックに描いたら「DEATH NOTE」に近づいてしまうっていう思いがあったんじゃないですかね。これまでと同じものを描いても仕方ないですし。
──小畑先生はネームをお読みになって、どういったことをおっしゃっていましたか。
小畑先生って読んだときと、実際に自分で描いたときの感想が微妙に違うんですね。「プラチナエンド」はまだ1話を執筆中なので、完結した「All You Need Is Kill」でいうと、もちろん原作小説を読んでもらって、「面白いのでやりたいです」というところから始まったんですが、1回ネームにしたところ、なかなかしっくりこないと相談されて。「バクマン。」のあとに描かれたので、最初はその絵柄の影響が多少あったかなと思いますが、「今回は人が肉体的に何度も死を迎える話なので、もっと暗い絵で読みたいんです」と話したら、そこからはバリバリ絵が上がってきて。
──確かに小畑先生は作品ごとに絵の印象がまったく違いますね。
「DEATH NOTE」と「All You Need Is Kill」は絵柄的には似た方向だと思いますけど、間に「バクマン。」がありますからね。厳密に言えば、小畑先生も絵柄を戻しているわけではなくて、いろんな絵柄で描きながら進化し続けているといったところでしょうか。作品ごとに絵柄を変えるって普通できないですよ。小畑先生がすごいのって、あんなにキャリアを積んでいるのに原作が第一なんですよね。原作のネームの面白さを伝えるにはどうしたらいいかっていうことを常に考えている。
──では「プラチナエンド」では具体的にどのような絵作りを目指していくんですか?
いろいろ打ち合わせはしてたんですが、幾何学的なモチーフを取り入れようという話になってから、見えてきた感じです。「プラチナエンド」は人と天使の話なので、当然天使の輪が出ますが、たぶん小畑先生がゴシックに描くと、細かい金細工の入ったような王冠みたいな輪になると思うんです。でも今回は、シンプルにしようという方向に行き着いて。話としては現代が舞台ですが、幾何学的というか近未来的なイメージを盛り込みたいなと思ってます。
新作のテーマは「幸せ」
──ジャンプスクエアに掲載された予告には「幸せになりたいあなたに贈る。」という煽り文が掲載されていました。これがストーリーのキーワードになってくるんでしょうか。
「DEATH NOTE」のテーマが「悪」とか「死」だったとしたら、今回は「幸せ」になると思います。主人公の少年が幸せになる過程を描いていく。
──事前に1話のネームを拝見させていただきましたが、サスペンス風な展開を予感させるシーンもありますよね。
個人的には、「生」と「死」は表裏一体で、そこのドラマに一番面白味を感じるというのはあります。また、今回のキーは「自由の翼」と「愛の矢」なのですが、登場人物の生き様というか、行く末を追っていきたいなと思ってます。
──このコンビが月刊誌で連載するのは今回が初めてですが、週刊誌とは作り方も変わってくるものですか?
僕自身も月刊誌を作り始めて間もないのですが、1話単位で考えると、週刊誌の20ページ前後に比べれば倍以上あるので、全然違うなと思いますね。1話の読み応えは大事にしないとな、と。「DEATH NOTE」では、来週への引きを第一に考えてたところはありますが。
──1話の中に、1つのエピソードを盛り込んできちんと完結させるというような。
そうですね。そう言いつつも月に1回しかない分、「次回どうなるのか」っていう引きもより強くしなきゃいけないんじゃないかと思ったりしているので、その時々で試行錯誤していく感じですかね。でも、逆に新しい考え方でできるので、そこは楽しみにしています。大場先生、小畑先生もそれは同じ気持ちではないかなと。あと、今までできなかったことをやろうっていうのはあります。話も絵も少年ジャンプよりジャンプスクエアのほうが描ける幅は広いので。
──ジャンプスクエアは「プラチナエンド」がスタートする12月号で創刊8周年を迎えますが、雑誌としての今後の指針のようなものはあるんでしょうか。
少年ジャンプだと「◯◯先生の漫画が読めるのはジャンプだけ」じゃないですか。ジャンプスクエアは「この漫画が読めるのはスクエアだけ」っていう作品が増えればいいなと思っています。マンガ雑誌にはそれぞれイメージがあって、題材だったり絵柄だったりで、その雑誌らしさにつながっていくと思うんですが、スクエアでいえば、こういう雑誌というイメージよりも「ほかの雑誌に載っているのがイメージできないマンガ」「『これスクエアで連載してるの!?』と言われるようなマンガ」が集まった、唯一無二の雑誌にしていきたいですね。「プラチナエンド」も「このマンガやばい」と言われるものを目指していきたいなと思ってます。
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中学校の卒業式当日、同級生が卒業に浮かれるなか独り中学校を後にする、架橋明日(かけはしミライ)。生きることに希望を見出せない彼は、いったいどんな道を歩むことになるのか……。これは、人と天使の物語である。
- 「ジャンプスクエア12月号」 2015年11月4日発売 / 590円 / 集英社
- 「ジャンプスクエア12月号」
ジャンプスクエアの創刊8周年を記念した、大場つぐみ原作による小畑健の新連載「プラチナエンド」が表紙と巻頭カラーでスタート。「DEATH NOTE」「バクマン。」「プラチナエンド」のA4版カラー複製原稿セットが手に入る、3号連続での応募者全員サービスも行われる。また浅田弘幸「テガミバチ」が完結するほか、蒼樹うめの描き下ろしポスターが付属。
今号よりデジタル版も、少年ジャンプ+やジャンプBOOKストア!などの電子書店にて配信中。
- 大場つぐみ×小畑健作品
- 「DEATH NOTE①」 421円 / 集英社
- 「バクマン。①」 432円 / 集英社
大場つぐみ(オオバツグミ)
2003年、週刊少年ジャンプ(集英社)にて小畑健とタッグを組んだ読み切り「DEATH NOTE」で、原作者としてデビュー。読み切りを元にした同名作を2003年から2006年にかけて週刊少年ジャンプにて連載。同作は映画、アニメ、TVドラマ、ミュージカル、小説化などさまざまなメディアミックスが行われるヒット作となる。その後2008年から2012年にかけ、再び小畑とコンビを組み「バクマン。」を週刊少年ジャンプで連載し、アニメ化、実写映画化を果たす。ジャンプスクエア2015年12月号(集英社)にて、三度小畑とタッグを組み新連載「プラチナエンド」をスタートさせた。
小畑健(オバタタケシ)
1969年生まれ、新潟県出身。1985年に「500光年の神話」で第30回手塚賞準入選。1989年に週刊少年ジャンプ(集英社)にて「CYBORGじいちゃんG」で連載デビュー。1991年に連載を開始した泉藤進原作による「魔神冒険譚ランプ・ランプ」以降、主にマンガ原作者と組んで活動している。ほったゆみ原作による「ヒカルの碁」で2000年に第45回小学館漫画賞、2003年に第7回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。ジャンプスクエア2015年12月号(集英社)より、大場つぐみ原作による「プラチナエンド」をスタートさせた。大場原作ではこのほか、「DEATH NOTE」「バクマン。」も手がけている。
吉田幸司(ヨシダコウジ)
2001年、集英社に入社。同年より週刊少年ジャンプ編集部に配属される。2012年に週刊ヤングジャンプ編集部に異動した後、2014年よりジャンプスクエア編集部に所属。これまでの主な担当作品に「DEATH NOTE」「D.Gray-man」「めだかボックス」「All You Need Is Kill」「大斬-オオギリ-」など。