「幼女戦記」が3クールやったら「オーバーロード」の続きも考える(丸山)
──TVアニメ「オーバーロードIII」が間もなく最終話を迎えます。3クールの物語に一旦の区切りが付きますね。
丸山 KADOKAWAの誰かがね、2期を制作するという話をされたときに「『オーバーロードII』は2クールやります」って言ってくれて、俺は笑っちゃったんだよね。無理だろうって。でも、よく3クールもやってくれました。感謝。3期の最終話は小説で言う9巻の終わりなので、それ以降は原作で読んでくれればうれしいです。
カルロ でもアニメでも続きを観たいですよね。
丸山 じゃあ「幼女戦記」が3クールやったら、「オーバーロード」のアニメも続きを考えるということで(笑)。
カルロ それ、「オーバーロード」ファンに僕が殺されるか応援されるか、どっちかじゃないですか。
丸山 俺が殺されなきゃOKです(笑)。
──この特集を通じて、ファンがお互いの作品を応援してほしいですよね。
丸山 でもさ「幼女戦記」のファンと「オーバーロード」のファンって重なっていると思う?
KADOKAWA担当者 めちゃくちゃ重なってると思います。
丸山 嘘? 重なってる? ぶっちゃけ旧エンターブレインのホビー書籍編集部の本って、全然ファンが重なってないんじゃないの。「オーバーロード」「幼女戦記」「ニンジャスレイヤー」「ログ・ホライズン」ですよ?
カルロ そんな感じは若干ありますよね。旧エンターブレインは、みんなが集まるハブ空港じゃないんですよね。ハブ空港とハブ空港の間にある連結点くらいの感じ(笑)。
──コミカライズ版が同じ月刊コンプエース(KADOKAWA)で連載されているのもあって、近いイメージがありますね。
丸山 コンプエースで言うと、アニメ合わせで「オーバーロード」のリザードマンが表紙を飾るのが夢だったんだよね。でも無理だった(笑)。
カルロ やっぱり丸山先生、人間ならざるもの好きじゃないですか。
丸山 変わったものが見てみたいの。伝説を作りたかった。歴代の表紙をずらっと並べたときに、1つだけ変なのがあったらいいじゃん。
──続いて劇場版「幼女戦記」について伺わせてください。どんな作品になりそうですか?
丸山 今回オリジナルなの?
カルロ はい、全部新作です。一応アニメの第1期が終わってから新しい物語にいくまでの幕間の物語ではありますね。もし第2期をやるなら、劇場版が接続点になるくらいの感じでしょうか。
──ではTVアニメの第2期を楽しみにしてる人は劇場版を観るべし、と。
カルロ ぜひ観ていただけたら……って、ありきたりな宣伝だなあ(笑)。真面目な話をすると、今回は少し難しかったです。オリジナルでやるにしてもまったく違う時代の話がいいのか、2期への接続となる話がいいのかを考える必要があったし。しかもこれを観ないと2期がわからないとなるとダメじゃないですか。仮に2期があったら、の話ですけど。あとアニメはチーム作業だから、原作者がどう関わるべきかも悩みましたし。そういう意味ではTVシリーズで一度アニメに関わっておいてよかったです。
──いきなり劇場版からアニメに関わっていたら……。
カルロ 怖いですよ。やっぱりアニメは手間とコストがかかるものなので、例えば細かい映像を作りたくても、マンパワー的に難しい場合もあるじゃないですか。そこをよくわからない原作者が言い過ぎるのはよくないですよ。そういう意味では、アニメって今ある材料で何を作れるかですよね。僕はチャーシュー豚骨ラーメンが作りたいけど、チャーシューじゃなくて鶏肉しかなかったらどうするか。
──先ほどから、よくラーメンに例えますよね(笑)。
カルロ 好きなんですよ。僕、あっちこっちのお店に行っては人に教えているんですけど、いかんせん変なラーメン屋ばかり布教してて。
丸山 だから体悪くなっちゃうんだよ。まだ若いからいいかもしれないけど、もう少ししたらどんどんいっちゃうよ。血液検査の結果、肝臓の値はどうなの?
カルロ お酒もタバコもやらないし結構いいですよ。
丸山 肝臓の値が悪くないのはいいな。肝臓はすぐによくなるよ、ダイエットしたら一気に数字が正常値になった。ビックリしてる。
カルロ 肝臓は強い子、がんばる子。
丸山 壊れたらもう戻らないらしいから、気を付けたほうがいいよ。
──その話は飲み会でお願いします(笑)。
異世界転生ブームは形を変えて続く(カルロ)
──おふたりは今もWeb小説を読まれていますか?
丸山 読んでいます。今のなろうはざまぁ系(ざまあみろと憎い相手を嘲り笑う作品)が流行っていて、あとは悪役令嬢ものか。悪役令嬢ものだったら「謙虚、堅実をモットーに生きております!」がトップだよね。
カルロ あれは結構前ですよね。
丸山 うん。っていうかあれを書いてる人、何者なの? 「謙虚、堅実」は文章のレベルが高いんですよ。言葉の使い方が間違っていないし、物事をよく知っていてすごいよね。
カルロ 僕もいろいろ読んでいるけど、二次創作が多いですね。
──いわゆる異世界転生のジャンルの人気がここまで定着すると思われていましたか?
カルロ 真面目な話と冗談、どちらがいいですか?
──どちらも気になりますが、では真面目なほうで。
カルロ 異世界転生もの自体は別に新しいものではないんですね。今の作品は世界軸が動いている点だけは新しいけど、例えば古典の「ロビンソン・クルーソー」だって新世界に辿り着いているし、いわゆる海洋冒険小説の冒険家はずっと新しい世界に行くじゃないですか。「ガリバー旅行記」がその典型で、あれも異世界に行っているわけです。
──確かに。
カルロ イギリスからインドに行ってそこで大金持ちになって活躍するだとか、イギリスからアメリカに行って名前を残すだとか。そういったものは無数にあるので、人間は違う社会に行ってどういった活躍ができるのかという思考実験がすごく好きなんでしょうね。と、ここまでが真面目な話。くだらない話のほうをすると……今は現実がクソですから仕方ないですよ(笑)。夢と希望を持って今の社会を変えるという物語が、そこまで説得力を持てないんじゃないですか。もちろんそういった物語を作るのも1つのやり方ですけど、それを自分の物語として読めるかと言われるとキツい。
丸山 で、異世界転生ブームはいつまで続くんでしょう?
カルロ 形を変えて周期的に続くと思います。今のようなトラックに轢かれて異世界に行くという形式は先細りするでしょうけど、今こことは違うところに行くというのは物語の王道ですから。そういう意味では、また誰かが今の形式とは違う新たな鉱脈を見つけて、みんながぞろぞろとそっちにいくんでしょう。今はゴールドラッシュのときのカリフォルニアみたいなもので、みんながこっちに来たけど金脈はあらかた掘られてきて「さあ次はどうするかな」ってところ。誰かが別の場所で「石油があったぞー!」と言うのを待ってる。
丸山 油田を探すのは基本的に出版社とかなんじゃないの?
カルロ でも油田を見つけようという先駆者は僕らみたいな人間ですよ。僕らが見つけた油田を出版社がパイプラインを通して流通させて、いかにも「私たちが掘り当てました」みたいな感じで出すんですよ。
──その油田の前に「オーバーロード」「幼女戦記」の完結を楽しみにしているファンも多いです。最後に、今後の執筆活動への意気込みを教えてください。
丸山 「オーバーロード」をあと5冊で終わらせる。最長5冊! 「最長」を強調しておいてください。
カルロ 「幼女戦記」は9月末に10巻が出ます。最初に「幼女戦記」を出すときに「4巻で終わらせてください」と言われていたのに、少し売れたから「別に気にしないでゆっくり書いてください」「6巻くらいでいいですよ」なんて言われて、今は10巻まで伸びているので、残り何冊とは言われていますがあまり信じていません。
丸山 俺は残り5冊だから、あと3年か、4年かな。
カルロ 2013年に「あと2年ぐらいで終わる」とか言っていた人が何を言っているんですか。「2015年に丸山先生は引退するのか、寂しいな」と思った記憶がありますよ。
丸山 本当に終わらないんだよ。ペースが鈍っちゃっていけないね。1年に1冊ペースはまずいよ。
カルロ それ僕、お会いしたときから聞いてますよね?
丸山 本当に? まあ、あともう少しだよ。
- TVアニメ「オーバーロードIII」
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Blu-ray / DVDを全3巻にて発売。Vol.1は、2018年10月24日にリリース。キャラクター原案・so-binが描く美麗なイラストをあしらった全巻収納BOXと三方背ケースに、ドラマCD、サウンドトラックCD、作中の設定を網羅した設定資料集などを各巻に封入した豪華初回特典仕様になっている。毎回特典にはスタッフやキャストたちのオーディオコメンタリー、ちびキャラアニメ「ぷれぷれぷれあです3」などを収録。各巻に原作者・丸山くがねの新規書き下ろし小説が丸々1冊もらえる全巻購入特典応募券が封入される。
- Blu-ray / DVD「オーバーロードIII①」
- 2018年10月24日発売 / KADOKAWA
- Blu-ray / DVD「幼女戦記①」
- 発売中 / KADOKAWA
- 丸山くがね(マルヤマクガネ)
- 2010年に「オーバーロード」を小説投稿サイトに投稿。書籍1巻が2012年にエンターブレイン(現KADOKAWA)より刊行。同作は2015年7月にアニメ第1期の放送が始まり、現在第3期が放送中。
- カルロ・ゼン
- 2011年に「幼女戦記」を小説投稿サイトに投稿。 書籍第1巻が2013年にエンターブレイン(現KADOKAWA)より刊行。同作のアニメが2016年1月から3月にかけてテレビ放送され、2019年には完全新作の劇場版アニメが公開予定。
©丸山くがね・KADOKAWA刊/オーバーロード3製作委員会
©カルロ・ゼン・KADOKAWA刊/劇場版幼女戦記製作委員会