コミックナタリー PowerPush - 全国書店員が選んだおすすめコミック2015
第1位に輝いた「魔法使いの嫁」誕生秘話
全国の書店員の投票によって決定される「全国書店員が選んだおすすめコミック2015」の結果が発表された。第1位に輝いたのは、ヤマザキコレ「魔法使いの嫁」。人外の魔法使いエリアスと、彼に買われた少女チセを描くファンタジーだ。コミックナタリーでは受賞を記念して、ヤマザキへのインタビューを敢行した。
取材・文/坂本恵
1700書店2360名の書店員が投票に参加。2014年11月末日までに単行本巻数が5巻以下だった作品を対象とし、 書店員1人につき3作品に投票した。投票数が同数の場合は、1位3点、2位2点、3位1点で集計。
エリアスの大きな身体と、チセの華奢な身体が並んでいる姿に心躍る
──まずは「全国書店員が選んだおすすめコミック」の1位獲得、おめでとうございます。
ありがとうございます。ありがたくも、壮大なドッキリ大作戦なのではないかと怯えております。
──ご自身では、書店員の皆さんから熱い支持を得た理由はどこにあると思われますか?
なぜ書店員さん方に支持をいただいたのか、私からぜひお聞きしたいくらいでして……。今でも自分ではよくわかっていないのですが、応援していただけている皆様1人ひとりの気持ちが結果としてこういう形になったのかなとは感じております。今はその気持ちがありがたくて、どう返したらいいかわからないくらいです。
──2巻のあとがきに、書店回りのエピソードを描かれていましたね。
ええ、書店さんを回らせていただいていたとき、担当さんと移動中「打ち切りにならないといいですね」「仕入れたら売れ残ったじゃんって怒られないかな」などと話をしていたくらいで、張本人たちに一番自信がなく……。そんな私たちに力強い励ましのお言葉をいただき、むしろ書店員さんたちのほうが自信を持ってくれていて、とても救われる思いでした。あとは当たり前のことなのですが、マンガというものは、さまざまな人が関わって、やっと世に出る事ができるのだなと改めて気付かされました。
──では「魔法使いの嫁」について色々とお伺いできればと思います。まず作品が生まれたきっかけをお聞かせいただけますか。
昔から、いつかファンタジーマンガを描けたらいいなと考えていました。ある日、創作同人誌イベントで出す予定だった別作品が上手くまとまらず締め切り間際にうなっていたとき、ふと思い浮かんだ会話と情景から描き出したキャラクターたちがこの作品の原型でした。現在とは少し違うデザインで、立場も現在とは反対のエリアスとチセでしたね。結局その原形も使われはしなかったのですが。
──その原型となった、浮かんできた情景とは、どんなものだったんでしょうか?
夕暮れの石造りの街の中、ガス灯に照らされた石畳、そこを歩く大きな影と、トランクを両手で持ちながらついていく小さな影。それが最初のチセとエリアスです。
──エリアスのビジュアルは、かなり特徴的ですよね。
エリアスに関しては、もともと「人狼と女の子」で話を考えていたのですが、人狼はすでに描き尽くされているなあ、と。どうしたら読む人たちに少しでも新鮮味を出せるかなと考えていたときに「被っている皮をなくそう!」と思い付きました。当初は牛骨を想定していましたがディテールに違和感があり、山羊頭だとそのまんま悪魔すぎるとなって、最終的には大型犬の頭蓋骨に山羊の角という形に落ち着きました。
──なるほど。エリアスは表情が出せない分、描くのが難しそうです。彼を描くときに気を付けているポイントはありますか?
「ガタイの良さをいかに描くか」でしょうか。大きく男性的な身体とチセの華奢な身体が並んでいるのは非常に心躍るものがありますから。ただ、体格差があり過ぎて同じコマに並んで入りづらいという問題点もあります。
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全国の書店員が「たくさんの人に薦めたい」「皆に読んでほしい」作品に投票して決定されるマンガ賞。2015年度は1700書店2360名の書店員が投票に参加。2014年11月末日までに単行本巻数が5巻以下だった作品を対象とし、 書店員1人につき3作品に投票した。
あらすじ
羽鳥チセ15歳。
身寄りも、生きる希望も、術も、何一つ持たぬ彼女を金で買ったのは、悠久の時と寄添うヒト為らざる魔法使いだった——。
彼に「弟子」として、そして「花嫁」として招き入れられた時、少女の中で停まっていた針がゆっくりと動き始めてゆく……。
ヤマザキコレ
北海道生まれ。2013年、月刊コミックブレイド(マッグガーデン)で「魔法使いの嫁」の連載をスタートし、現在はオンライン雑誌・コミックブレイドと、月刊コミックガーデン(マッグガーデン)にて同時連載中。