「魔術士オーフェンはぐれ旅」
富士見ファンタジア文庫より「我が呼び声に応えよ獣」から「我が聖域に開け扉(下)」まで全20巻で刊行された長編シリーズにして本編。現在はTOブックスより新装版が全10巻で刊行されている。続編となる「新シリーズ」も、本編全10巻、番外編全2巻で発売中だ。
1994年に第1作が刊行された、秋田禎信のライトノベル「魔術士オーフェン」。原作小説25周年、アニメ放送20周年を迎える2019年に、まさかの新アニメ化が決定。主人公オーフェン役は、1998年よりオンエアされたアニメと同じく、森久保祥太郎が演じる。
コミックナタリーでは、「魔術士オーフェン」のコミカライズ「無謀編」「プレ編」の各1巻発売を記念し、森久保のインタビューを実施。森久保が現在取り組んでいる、Audible(オーディブル)での原作小説「はぐれ旅」の1人全役による朗読や、声優人生を形作った先輩からの助言、新アニメへの思いなど、20年寄り添ったオーフェンについてじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 前田久 撮影 / 高原マサキ
富士見ファンタジア文庫より「我が呼び声に応えよ獣」から「我が聖域に開け扉(下)」まで全20巻で刊行された長編シリーズにして本編。現在はTOブックスより新装版が全10巻で刊行されている。続編となる「新シリーズ」も、本編全10巻、番外編全2巻で発売中だ。
「魔術士オーフェン」の短編シリーズ。「はぐれ旅」の半年前を舞台に、コメディ調で展開される。初出は富士見ファンタジア文庫。TOブックスより「魔術士オーフェン しゃべる無謀編」として、ドラマCD付き完全限定生産の新装版が刊行された。
──2019年で「魔術士オーフェン」シリーズ原作1巻の刊行から25周年、また、森久保さんが主演されたTVアニメも来年、2019年で20周年を迎えます。今日はそんな節目のタイミングに合わせて、森久保さんにお話を伺えればと思います。
いやあ、すごいことですよね。TVアニメに出演していたとき、プロデューサーの方が「長く続くコンテンツにする」とおっしゃっていたのをよく覚えているんです。そう発言されたのは、ラジオ番組だとか、キャラクターソング、ゲームといったいろいろな形でのメディアミックスを担当されていた女性のプロデューサーだったのですが。今ではそこまで珍しくない考え方ですし、「スレイヤーズ」という先例もありましたが、小説発でそうした展開をやっているアニメは当時はかなり珍しかった。
──ですよね。そして実際、作品は長く愛されるものとなり、今も展開が続いている。では、ちょっと遡らせていただいて、改めて「魔術士オーフェン」という作品、ならびに役との出会いからお話を伺えますでしょうか?
オーフェン役にはオーディションで決まりました。ただ、本当に運命というか、偶然の出会い……縁がきっかけでオーディションを受けさせていただくことになったんです。
──というと?
「オーフェン」で音響監督を務められた鶴岡陽太さんのことを、僕は恩師だと思っているんですよね。「オーフェン」の直前に、劇場アニメの「スプリガン」という作品で、ブラインドオーディション……プロフィールを一切伏せた状態で、声だけを関係者の方が聞いて決めるオーディションで主役に選んでいただいた。その頃僕はまだ全然駆け出しの、ちょっとずつアニメの主演が決まり始めたぐらいで、そうした形で主演に選んでいただけたのは、すごく光栄だったんです。しかも、その「スプリガン」の現場で鶴岡さんと出会って、声優としてみっちり鍛えていただけた。そうした流れがあった直後に、「オーフェン」のオーディションがあって。で、後から聞いた話なんですけど、最初、僕はオーディションの候補としてエントリーされていなかったそうなんです。それが、オーディションがやや難航していたところに、鶴岡さんが「森久保という若くて元気のいいのがいるぞ」と、名前を出してくださったとか。まさに「鶴の一声」じゃないですけど(笑)。それで急遽オーディションに呼ばれ、結果、役に決まって……と。つまり、鶴岡さんとのいい出会いがなかったら、オーフェンとも出会えなかったんです。
──素敵なお話ですね! 役の、第一印象は覚えてらっしゃいますか?
まずは原作小説から役を読み取っていったんですが、秋田(禎信)先生の文体はすごく特徴的で、どんどん秋田ワールドに引き込まれていくような感じがありました。で、僕はそれまで割と元気のいい少年役を演じることが多かったんですよ。青年を演じるときも、実況役とか、声を張っていく明るい役が多かった。でもオーフェンは、いわゆる「ザ・二枚目」だとか好青年というよりは、皮肉屋……というか、はっきりいって、性格が悪い(笑)。そんなダークヒーロー的なところがあるんだけど、でも、ダークヒーローと呼ぶほどには悪じゃなくて、割とリアリティのある、人間臭い青年という印象でした。だから役作りに関して、特に悩んだり、難しいと思ったこともなかったですし、ディレクターから演出を受けた覚えもないですね。すんなりと役に入れた記憶があります。
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ステファニー役の玉川砂記子から言われた
「つまんない芝居してるね」