コミックナタリー Power Push - 石井あゆみ『信長協奏曲』
担当編集者が惚れ込み世に問う、カテゴライズ不能な痛快戦国デイズ
月刊少年サンデー(小学館・以下ゲッサン)が創刊したのが今年5月。そのしばらく後に、編集長代理を務める市原武法氏と面会する機会があった。そのとき市原氏から「とにかく読んでみてくれ。間違いなくすごい才能だから」と渡されたのが、石井あゆみ「信長協奏曲」だ。単行本1巻の発売を迎え、あらためて担当編集の市原氏に作品の魅力と、石井あゆみという才能について話を聞いた。
取材・文・撮影/唐木元
「聖☆おにいさん」が何マンガか説明できますか
──「信長協奏曲」読ませていただきました。や、お世辞抜きで抜群に面白かったです。だけどこの面白さ、どう言い表したものでしょう……。
ほんと困るでしょう(笑)。
──主人公は戦国時代にタイムスリップしてしまい、顔が似ているというので信長とすり替えられて生きていく。言ってみれば戦国タイムスリップものです。でもそんなフレーズじゃ、このマンガの面白さはちっとも伝わらないですよね。
そう。でも、それでいいと思うんですよ。「聖☆おにいさん」が何マンガか、説明できる人がいますか?「うる星やつら」だってそうです。宇宙人ラブコメ?「読んでみてよ」としか言い様がないですもん。読んだあとみんなで「すごいよね、高橋ワールド」となる。だからこれは石井ワールドと言うしかないんでしょう。
──カテゴライズ不能、ってことですね。
何マンガだっていいんです、キャラクターが魅力的で生き生きとさえしてれば。同業者には「歴史ものやるんだったら今流行りのBL系のカッコいい絵でやらなきゃダメだよ」なんてよく言われたんですけど、そんなこと知るかっていう(笑)。
──石井さんの絵がまた、独特ですもんねえ。
本当にそうなんです。不思議な絵です。あまりにも見たことがない絵なので、何なんだかよくわかんないんですよね。
──古いようで新しいようで……読者にはどう受け取られてるんですか。
アンケートではもう、尋常じゃない人気です。「帰蝶かわいい」「横顔が新しい」とか書いてあるんですけど、でも感覚としてはもう僕にはわからないですよ。そう見えるんだ……そんなにいいのこれが? みたいな。や、当然僕は僕で惚れ込んでるんですよ。けどこれほど10代・20代から熱烈な支持を受ける理由は、ちょっとよくわからないのが本当のところですね。だからコミックナタリーの読者の人にも絵を見せて、「これどう思います?」って問うてみたい。
──わかりました。じゃあ絵をいっぱい出してみましょう。
あらすじ
勉強嫌いで日本の歴史になんの興味もない高校1年生・サブローは、ある日突然、戦国時代にタイムスリップしてしまう。そこで出会った本物の織田信長は病弱で、顔はサブローにそっくりだった!
その信長に「体の弱い自分に代わって織田信長として生きてくれ」と頼まれてしまい……!?
織田信長を衝撃の新解釈で描く、時をかける風雲児サブローの戦国青春記、待望の第1巻!!!
石井あゆみ(いしいあゆみ)
1985年9月24日生まれの24歳。神奈川県出身。2003年に17歳で初投稿。2004年「佐助君の憂鬱」でサンデーまんがカレッジ入選。2009年5月のゲッサン創刊号から、弱冠23歳にして「信長協奏曲」で人生初連載をスタート。