コミックナタリー Power Push - “ネオ懐マン”復刊ムーブメント
90年代の少年たちへ捧ぐ! いま読むべき作品を徹底解説
●あらすじ海沿いにあるコンビニエンスストア「コングルGood」の息子であるカカオが、毎回コンビニ内の食品やお菓子を使ってアイデア料理を作り出すグルメギャグマンガ。コミックボンボン(1995年~)初出。上巻が発売中で、下巻が12月発売。
子供専用のパラダイスで生まれる、お手軽コンビニグルメに舌鼓
「ボンボン」の大ヒット作となった「OH!MYコンブ」(秋元康原作、かみやたかひろ作画)の流れを汲むグルメマンガ。コンビニグルメ、略して「コングル」の名の通り、「小枝」チョコをレンジでチンして溶かし、そこに柿ピーを混ぜて冷蔵庫で冷やす「辛さと甘さのびっくりコンビ・柿の小枝」、「雪見だいふく」を軽く焼き、おしるこの中に入れる「クリーミーしるこ」などといった、小学生にもマネができるカンタンお手軽レシピが人気を博した。一口食べると、あまりの美味しさに「コングルGood(グー)!!」と叫びながらポーズを決めるのがお約束。
また平日は通常のコンビニ営業だが、毎週日曜だけ主人公のカカオが店主となり「子供たちだけのコンビニになる」という設定もたまらない。店内にはファミレスのようなテーブルとソファ、ゲーム筐体やエアホッケー、さらにはウォータースライダーがあり、滑ればそのまま海に飛び込める! そこには子供専用の秘密のビーチが……、というパラダイスっぷりは、子供心に憧れまくりだったことは言うまでもない。読者が「実際に試せる」「こんなところがあったら……と夢想できる」という2つの要素は児童マンガの王道であり、小学生時代の大事なメモリー! 復刊リクエストのコメントが熱いのも納得だ。
大ボケキャラの「ババア」やヒロインの「アンズ」(幼稚園の時引っ越しちゃった幼なじみ!)、料理用ロボット「ポテトト」(かわいい)、さらにどうみても半魚人(マンボウの頭に人間の体)のライバル「万方太郎」など、脇を固めるキャラクターも魅力的。また、ケガした親のために子供たちがカカオの手を借り一生懸命コングルするエピソードのような人情味溢れる話も多く、大人になった今でも、ノスタルジーだけでなく読める良作である。
●あらすじ謎のロボット・ホープ1号から渡されたスーパーバトンを武器に、小学生5人が敵と戦うアクションギャグ。今回、未発表原稿を含め、初めての単行本化となった。2011年1月発売予定。コミックボンボン(1994年~)初出。
決めゼリフはダジャレ! 棒を手に牛魔大王とバトル
なぜこの作品が今まで一度も単行本化されなかったんだろう? と不思議なくらいの良いマンガ!
スーパーバトンを武器に、牛魔大王と戦う小学生たち。そのバトンも各々の性格に合わせた「あわてん棒」「あばれん棒」「いばりん棒」といったもので、敵キャラも「ふけい鬼」「いんち鬼」「かぜひ鬼」といったネーミングセンスがとにかく最高すぎる。倒すときの決めゼリフも「バタンQだーっ!!」とダジャレがメイン。
また、「棒」という身近すぎるアイテム(小学生時代、棒を持つとなんかテンション上がらなかった?)を使ったアクションバトルや、キャラクターたちの造形のかわいさ。6回に渡って行われる、ラスボス・牛魔大王とのスリリングな最終決戦など、すべてがもうド真ん中すぎるほど王道のストーリーギャグ! 「ボンボンやコロコロのマンガって、やっぱこうじゃなくっちゃ!」と心の底から実感できる、児童マンガスタンダードの隠れた名作なのである。
作者のあおきけいは80年代から2007年の休刊まで、長きに渡ってボンボンを支え続けてきた大黒柱の一人であり、今もゲーム誌デンゲキニンテンドーDS(アスキー・メディアワークス)で「星のカービィ プププヒーロー」や「スーパーカセキホリダー」などを(奥さんのみかまると共同名義で)連載している。つまりずっと小学生に向けてマンガを描き続けている、児童マンガ家の鏡なのだ。なのにボンボンに掲載された作品で単行本になったものはかなり少ないという状況が悲しい! この「バトンQ」の復刊を機に、あおき作品をもっともっと読める環境になることを求めてやまないのは僕だけではないはずだ。