コミックナタリー Power Push - “ネオ懐マン”復刊ムーブメント
90年代の少年たちへ捧ぐ! いま読むべき作品を徹底解説
近年、90年代のコミックボンボン(講談社)連載作品に代表される児童・少年マンガの復刊が相次いでいる。手塚治虫、水木しげるなど「マンガ黎明期」の名作(懐マン)の復刻はこれまでも行われてきたがそれらに留まらず、いわば“ネオ懐マン”ともいうべき作品が蘇る、新たなムーブメントが静かに起きているのだ。
コミックナタリーではその実態を解き明かすため、ムーブメントの火付け役ともいえる、発行元の「復刊ドットコム」へのインタビューを実施。さらにいま読むべき“ネオ懐マン”を、昨年「定本コロコロ爆伝!!」を上梓した渋谷直角氏に解説してもらった。
取材・文/渋谷直角
復刊ドットコム編集長が語る“ネオ懐マン”ブームの実態
──“ネオ懐マン”の盛り上がりはどのような部分で感じますか?
当社の復刊リクエスト投票を見ていると100票以上になっている作品が多く、売れ行きを見ても失敗がないな、という実感があります。男子向けマンガへの投票は、30代の方からが圧倒的に多いんですよ。その人たちが夢中でマンガを読んでいた時期なので、ちょうど90年代くらいの作品が強いのかな、という気がしますね。他社の動きとしても「究極!!変態仮面」が集英社から文庫で刊行されるなど、文庫や電子書籍で復刊するケースを含め盛り上がってきているのではないでしょうか。
──特にそう感じるようになったのはいつごろからでしょう。
2009年12月に発売した「ウルトラマン超闘士激伝」1巻ですね。ユーザーからの復刊リクエスト投票数が400票以上とかなり人気を集めていたこともあり、初版3000部とうちとしては思い切った部数にチャレンジしてみたんです。そしたら予想以上の注文数が舞い込んできて、すぐに重版をかけて。その後続巻はすべて初版1万部ずつ刷っていますが、これは初めてのことなんです。この前後くらいからこの時代のラインナップはきてる、売れる、という感じはしますね。
──復刊された中で特に人気がある作品というのは?
「ロックマンX」です。分厚くて1995円と結構高いのですが、売れていますね。復刊ドットコムの本は最初にバーッと売れてあとは沈静化していくことが多いんですけど、「ロックマンX」は2005年に刊行して以来、毎年1回必ず重版がかかります。
──「ロックマンX」も含め、コロコロコミック(小学館)よりもコミックボンボン(講談社)の作品が多く復刊されていますが、背景というのはあるんですか?
コロコロは近年文庫化された作品もあったり、復刻企画もあったので、現在でも手に入りやすい部分があると思うんです。逆に、ボンボンの作品はコミックスに最後まで収録されていない、未完のものが多いんですね。なので、「あれは、どうなったんだろう?」という心残りがあったと思うんです。それをふと思い出して投票するというケースもあるのかな、と思います。
──ということは、リクエスト数もボンボンのほうが多い?
そうですね。ひとつ考えられるのは「ボンボン」のマンガってすごく熱いんですよ。「ロックマンX」なんて典型的で、ずっとタチキリのコマで叫び続けて、走り続けて(笑)。あの熱さが子供心にずっと引っかかってたんじゃないか、と思います。
──復刊する際のこだわりは何かありますか?
「ウルトラマン~」や「ロックマンX」でもそうですが、なるべく作家さんに描き下ろしページをお願いしているんです。復刊ですけど、各先生の「今」も欲しいんですよね。