TVアニメ「22/7」|「一番やりたくないこと」から始まった、全12話の軌跡

「一番やりたくないことをしに来ました」──アニメの第1話で滝川みうが吐き出すように告げるこのセリフは、みう役の西條和が偶然にも実際に口にしていたものだという。“デジタル声優アイドルプロジェクト”として2016年にスタートした「22/7」が、結成から3年を経て、満を持して挑んだTVアニメ。謎の存在である“壁”によって選ばれた少女たちが、“壁”から出される指令に応えながら、それぞれがアイドルであることへの思いを深め、グループとして絆を育んでいく姿が描かれた。

そんなキャラクターたちと向き合い、ともに成長していった22/7のメンバーたち。コミックナタリーでは滝川みう役の西條和、藤間桜役の天城サリー、佐藤麗華役の帆風千春、戸田ジュン役の海乃るり、丸山あかね役の白沢かなえ、立川絢香役の宮瀬玲奈、斎藤ニコル役の河瀬詩の7人に集まってもらい、全12話の軌跡を丁寧に振り返った。

取材・文 / はるのおと 撮影 / 曽我美芽

みうの成長とともに変化した西條和

──まずは放送を終えての感想をお聞かせください。

佐藤麗華役の帆風千春。

帆風千春 あっという間の3カ月でした。TVアニメ化が具体的に決まるまで3年くらいかかって、決まってもまだ「放送はけっこう先だな」と思っていたんです。でもアフレコでは濃密な時間を過ごせたし、放送も始まったと思ったらすぐに終わって。ただ、アニメをやっている間はみんな自分の演技と向き合っていたので、これを糧に「次をがんばらなきゃ」という気持ちになっています。

──皆さん、アニメの収録は初めてだったのでしょうか?

帆風 ほとんどのメンバーが初めてでした。

天城サリー 私は事前にいくつかの収録現場にお邪魔していたんですが、ほとんどのメンバーが声優としては新人ということもあり、本当に丁寧に音響監督の藤田亜紀子さんがディレクションしてくださいました。一言一言に何テイクも録っていただいたりして。

白沢かなえ 合田役の三宅健太さんも、収録が終わるたびに「こうしたらいいよ」とアドバイスをくださったんです。学びのとても大きい現場でした。

海乃るり 三宅さんには、最終回後にみんなで「ありがとうございました」って言いに行ったよね。

帆風 お互いに気恥ずかしい感じになったけどね(笑)。でもずっとアドバイスをくださったうえに、最後に「自分たちが楽しいって思うことや感じたことを、これからもやっていけばいいからね」とありがたい言葉をいただいたんです。そして「じゃっ」と言って去っていきました。

──合田のキャラを考えると意外な爽やかさですね。滝川みうを演じた西條さんはアフレコはいかがでしたか?

滝川みう役の西條和。

西條和 私はアフレコが来るのがすごく怖かったです。もちろんアニメの声優は当初から目指していたものですけど、いざやるとなるとプレッシャーや不安が大きくって。マイクまでの距離が遠く感じて、マイク前に立つまでが大変でした。それは全話収録を終えた今も変わらないです。パワーを使った日々でした。

帆風 でも、収録が進むごとに頼もしさは増したよ。確かに第1話のときはマイク前に立てなくて、音響監督さんがブースに入って指導なさっていたんです。でも後半の話数での、みうちゃんが成長してグループを引っ張っていくようなシーンでは、和ちゃんもマイク前に立つとすごく堂々と演技をしていて、安心感がありました。

ミキサーさんに「あ、叫べるんだ」と言われて

──ここからは1話ずつ印象的な場面を振り返っていただきます。第1話「さよなら、私のささやかな世界」をはじめ、第3話までみうがメインのエピソードでしたね。

西條 1話では、みうが「一番やりたくないことをしに来ました」と語るシーンがありますが、あれは自分が22/7として活動し始めた頃にインタビューでよく言っていたことでした。だから自分の思いも重なって言いやすかったです。みうちゃんは基本的にトーンが低めで大きな声を出さないので、そのシーンで初めて声を張ったときに、ミキサーさんが「あ、西條さん叫べるんだ」と言っていて。

一同 (笑)。

西條 それを聞いて「私ももっと声を出してがんばろう」と思いました。

第1話「さよなら、私のささやかな世界」より、滝川みう(CV:西條和)。

──その決意が、のちの11話や12話でのみうががんばるシーンでの演技につながると。ほかの皆さんは、1話を観たとき印象はいかがでしたか?

河瀬詩 収録時は絵コンテをつないだ映像を観ながら演じたので、表情など詳しい描写がわからないシーンもあったんです。だから完成したものを観ると、「意外とこのシーンは悲しんでたんだ」など新たにわかることもあって。「こういうことも考えて声優さんって演じているんだ、すごい」と感じました。

海乃 私も、ジュンちゃんはもっと子供っぽいかなと思っていたんですけど、アニメでは別の表情も見られて、新しい発見でした。

宮瀬玲奈 ここ(海乃、天城、帆風、宮瀬)の4人は、1話が始まる直前にYouTube Liveで配信をしていたんですよ。それが終わって事務所のテレビでみんな揃って放送を観ていたんですけど、そこでスタッフさんから「Twitterでトレンド入りしてる」「反響大きいよ」と教えてくれて喜んだのを覚えています。

帆風 私もちょっと疎遠になっていた子から「すごいね!」「テレビから千春ちゃんの声がするよ」みたいな連絡が来た(笑)。でも、いろんな人に届けられているんだなと実感できてうれしかったです。

──続いて第2話「めまいの真ん中」では審査会を経て、みうがセンターになります。

天城 第2話だと、みうちゃんの家に行った桜ちゃんが団地のことを「モンスターハウスだね」って言うシーンが印象的です。私もいまだに団地の存在を知らないんですけど、面白い表現をするなって。

──アメリカ出身の天城さん自身も、日本の団地には馴染みがないんですね。

天城 はい。ただ「一歩間違えたら団地を悪く言ってるように聞こえるよね」とメンバーと話し合い、言い方にすごく気を付けました。だからモンスターハウスみたいな団地の様子に釘付け、みたいなニュアンスで演じました。

宮瀬 そのみうちゃんの家に行った桜をみんなが尾行していたのが、私は好きでした。初めてメンバーが事務所や“壁”に関係なく動いていて、愛らしかったです。あと絢香が麗華を初めてイジったのも楽しかったです(笑)。

──そして第3話「こんにちは、新しい世界」では、22/7として初ライブを行います。

第3話「こんにちは、新しい世界」より、斎藤ニコル(CV:河瀬詩)。

西條 ライブ中に機材トラブルがあって、みうちゃんがピアノを弾いてニコルちゃんが歌ってくれるところで、合田さんがプロジェクターを使うよう呼びかけるシーンの緊迫感が好きでした。

──あそこで最初に歌い出すのが、みうのことを昔から知っているニコルというのがいいですよね。

河瀬 あの場面でニコルちゃんは、ニコッと笑って満足げな表情で歌い出すんですよ。きっと「みうなら何かやってくれる」と思っていたんでしょうね。私たち、収録時は先の展開を聞いていなかったので、3話を収録した時点では2人の関係を知らなかったんです。でも表には出さないみうへの信頼がこの時点で描かれていて、好きなポイントですね。