TVアニメ「憂国のモリアーティ」畠中祐×STEREO DIVE FOUNDATION(R・O・N)|主題歌を歌う2人が初対談!異なるアプローチでアニメの世界観を表現

構成・竹内良輔、漫画・三好輝原作によるTVアニメ「憂国のモリアーティ」は、現在2クール目を放送中。コミックナタリーではアニメ「憂国のモリアーティ」特集の第3回として、2クールを通して同作のオープニングテーマを手がける畠中祐と、エンディングテーマを手がけるSTEREO DIVE FOUNDATION(R・O・N)による対談をセッティングした。1クール目の楽曲「DYING WISH」「ALPHA」、2クール目の楽曲「TWISTED HEARTS」「OMEGA」に込めた思い、そして主題歌アーティストの立場から見た「憂国のモリアーティ」の魅力についても語ってもらった。

取材・文 / はるのおと

畠中さんは昔から歌ってた? 語学が堪能?

──畠中さんが歌唱する1クール目のオープニング主題歌「DYING WISH」と、R・O・Nさんが手がけたエンディング主題歌「ALPHA」はともに「憂国のモリアーティ」を意識した楽曲ですよね。おふたりは今回初めてお話されるということで、まずはお互いの音楽の印象を聞かせてください。

畠中祐

畠中祐 実は今回のエンディングで初めて曲を聴かせていただきました。同じ作品に対してもこんなにアプローチが違うのかと驚いたし、音の重なりがすごくてそれが強烈に印象として残っています。

R・O・N ありがとうございます。僕も今回のオープニングで初めて歌声を聴かせてもらって思ったんですが、昔から歌われていました?

畠中 両親がずっとミュージカルをしていた影響で、家でミュージカルの曲を歌ったりとかはしていました。でも本格的に習ったことはないんです。

R・O・N そうなんですか。歌声がとても好みで、率直にすごくいい声をしているなと思ったんですよ。ではアーティストとしての活動を長くされているとか?

畠中 まだ4年くらいです。

R・O・N じゃあ、もう才能なんでしょうね。あるいは血の影響か。

畠中 いやいや、そんなに大したものでもないです! でも、とてもうれしいです!

──畠中さんの曲はダンサブルなものが多い印象があるので、R・O・Nさんが作られてきた曲と近いものがあると個人的には思っていました。

畠中 そういう点でも「ALPHA」はめちゃくちゃ好きでした。しかも現代的なポップさがありながら、随所に「憂国のモリアーティ」の時代性を感じさせる音があって、重なった音の中を「ここはこういう意図かな」とか考えながら何度も聴いていました。

R・O・N

R・O・N そこまで細かく聴かれるとは。「憂国のモリアーティ」っぽい音という話がありましたけど、普通のリスナーだとそこまで気付けないと思うんです。音楽が好きなんですね。

畠中 小さい頃から父が愛好していた音楽を聴いていたくらいで全然知識とかはないんですけど、好きですね。

R・O・N 歌が上手な人に多いと思うんですけど、耳がいいんでしょうね。ちなみに、語学ってどうです?

畠中 まったく駄目です(笑)。

R・O・N もし習ったら短期間で上達すると思いますよ。

畠中 いやー、語学は成績も悪かったし、大学でも一番低いクラスだったので。でもそこまで言っていただけるなら、何かやってみようかな(笑)。

ミスマッチゆえのハマり感が気持ちよかった1クール目エンディング

──おふたりが主題歌を2クール連続で担当する「憂国のモリアーティ」ですが、本作に最初に触れた際の印象を教えてください。

TVアニメ「憂国のモリアーティ」2クール目キービジュアル

R・O・N 僕は原案の「シャーロック・ホームズ」シリーズが好きなので、モリアーティという悪役を主人公に据えたのは面白いアイデアだと思いました。それとヨーロッパも好きなので、街並みや雰囲気、階級制度があった時代の話という点もすごく魅力的でした。

──視点の面白さと雰囲気に惹かれたんですね。

R・O・N この作品におけるモリアーティは単純な悪役ではなく、なんのために悪をしているかという話も掘り下げていてそこが面白いです。

畠中 ダークヒーローもの的な爽快感がありますよね。モリアーティが行っていることは絶対にやってはいけないことですが、彼は社会を変えようと思って動いていて、その気持ちに共感できるところもある。そんな彼がヒーローに見えて、応援したくなります。

──この作品ではモリアーティとそのライバルのシャーロックという2陣営がぶつかり合いますが、どちらがお好きですか?

R・O・N モリアーティですね。例えば映画の「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」を観たらモリアーティを好きなんて言う人はあまりいないでしょうけど、このアニメのモリアーティはクレバーで素敵です。

畠中 悩ましいですが、僕はシャーロックでしょうか。第9話で銃を突きつけて「バーカ、殺すわけねぇじゃん」って言うシーンとか。ああいう軽快さと芯の強さが両立しているところが好きです。あとウィリアムとシャーロックが掛け合いをする中で、シャーロックはすごくいいスパイスをくれるんですよ。

──1クール目の途中からシャーロックが出てきて、2人が絡み始めるとまた一段と面白くなりますよね。

畠中 第10話の「Catch me if you can, Mr. Holmes.」のシーンとか、それを受けてのシャーロックの表情も含めて最高でしたよね。劇伴もシーンを盛り上げるし、2人がさらにやりあう2クール目への架け橋になっていましたし。マンガで読んだとき以上にグッときました。

──声や劇伴が付くと、一層盛り上がりますよね。

畠中 僕は声優なので「そういう解釈なのか」と思えるところもあって面白かったですね。

R・O・N ひとつお聞きしたいんですけど、声優さんってアニメを観るときにどんなスタンスで観るんでしょう? 子供の頃に純粋にアニメを楽しんでいたところから、仕事で関わることになって変化もあるものですか?

畠中 僕の場合は、実はあまりアニメを観てこなかったんです。両親の仕事柄、舞台ばかり観て育ってアニメはそれこそジブリとディズニーくらいで。だからアニメとの最初の接点が仕事だったので、観るときのスタンスはそれほど変わっていません。ただオーディションを受けて落ちた作品なんかは観ると「くっそー、悔しい」という気持ちが湧いちゃうので、純粋に作品を楽しめるかというとそうでもないかもしれないです。

R・O・N オーディションで落ちた作品だと、「今度はこうしてやる」という研究材料にもなりますもんね。僕の場合は研究のために音楽を聴くときと、エンジョイするために聴くときは完全に頭を切り替えています。だからこそ音楽を楽しめていてまだ仕事を辞めていないと思うんですが、そこはどうですか?

畠中 僕はその切り替えができないタイプです。だからアニメを観ていて最初は「僕だったらこう演じるけど、この人はこう演じるんだ」「この発想はなかった!」みたいに研究していても、気付くと途中から作品の面白さが勝っちゃうことも多くて(笑)。やっぱり、アニメって魅力的ですね。