ウィリアムは“ルイス保護過激派”(斉藤)
──本作のテーマには「3兄弟の絆」という部分があると思います。それぞれのキャラクターとその関係性について、皆さんはどんなふうに解釈して演じられているのでしょうか。
斉藤 アルバートという人は非常に切れ者で、子供のころから世界に対してすごく違和感を覚えていた人。ただ具体的に何が問題なのか、どうすればいいのかということまでは見えていなかった。そんなときに幼い頃のウィリアムと出会い、道が開けていく。ウィリアムにとっては一番信頼しあえる共犯者でありパートナーで、自分と同じ目線でものが考えられるし、しかもウィリアムとは違った立場で実際的な行動に移せる。そういう意味では、3人の中で最も実働的なことをしているのはアルバートですよね。逆にルイスは、ウィリアムからするとかなり特殊な存在。実は“ルイス保護過激派”、みたいなところがあるんじゃないかなと思ってます(笑)。
小林 (笑)。
佐藤 ルイスに対してだけは論理的でいられない(笑)。
斉藤 ウィリアムは、自分たちが犯罪という手段を使って世界を改革しようとしているがゆえに、いずれ身を滅ぼすことになるであろうという覚悟を持っているわけですが、そこにルイスを巻き込みたくない。なるべくなら穢れを知らずにいてほしい。だから、ルイスのほうがウィリアムのことを慕っている印象が強いですけど、ウィリアムもウィリアムで、ルイスをかなり真剣に大事にしていますよ。今後アニメでも描かれると思いますが、ルイスの内心の吐露を受けてより結束が深まっていく、兄弟の関係性が変化していくのも、この作品の魅力だなと思います。
佐藤 僕はアルバートという人物はかなりの変わり者だと思っていて。我々3人は、暴利を貪る高慢な貴族たちの命を奪っていく側、犯罪をしているわけですけど、アルバートはその命を奪われるであろう貴族ど真ん中の人生を送ってきたわけです。貴族として当然こうあるべきだと、疑うべくもなく教育されてきたはずのアルバートが、自分の置かれている世界に歪みを感じ、それを滅ぼさなければという思想にまで至るわけで、変わり者と言われてもおかしくない。むしろ危険人物ですよね。そんな彼が天啓にも似た形で、ウィリアム、ルイスと出会い、道が開け生きがいを見つけたわけです。
──信頼し得る相手を見つけてしまったと。
佐藤 自分が思い描く理想を実現させうる実益を兼ね備えたビジネスパートナーと出会った……ということかなと。ウィリアムとルイスであれば、自分の理想を実現できるという信頼感もありますが、兄弟じゃないから成立しているところもあると思っていて。血の繋がらない他人だからこそ、甘えが生まれないというか。絶対的な距離感と緊張感があり、それがモリアーティ兄弟の妙だなと思っています。
小林 僕もルイスにとってアルバートは、ウィリアムとは違って、血が繋がっていないからこその距離感があると思います。一方で、他人でありながら最も信頼をおいている相手もアルバートだけ。ウィリアムやアルバートは、モランやフレッドに対してもある程度信頼をおいていると思うんですが、ルイスってフレッドが夜中に家に訪ねてきたときに警戒したり、他人にはなかなか心を開かないんですよ。そういった意味では肉親以外で信頼している唯一の存在がアルバートなのかなと。
──一方でウィリアムに対しては、絶対的な信頼を寄せてますね。
小林 そうですね。もし計画を実行する代わりにウィリアムを失うことになるとしたら、ルイスがどっちを選ぶのか想像できないぐらい、兄弟愛という粋を超えた信頼があると思います。ただウィリアムを盲信しているわけではなくて。僕も最初は、語尾にハートマークじゃないですけど(笑)、ウィリアムに対する親愛が伝わるようなお芝居をしたほうがいいのかなと思ってたんですけど、台本を読んでいると、ウィリアムの言うことに対して「それはどういうことですか?」とか「危険はないんでしょうか」とか質問をするんです。本当に全幅の信頼を寄せているんだったら、言われるがままに従っててもおかしくないと思うんですが、そこはちゃんと自分で咀嚼して、疑問があれば確認を取る。ルイスもルイスなりに、ウィリアムやアルバートの帰る場所を守りたいという気持ちがあるんだとと思います。
ハドソンさんとパブとかに行って大きいジョッキでビールを一緒に飲みたい(笑)(斉藤)
──ちなみにご自身が演じているキャラクター以外で好きなキャラクターはいますか?
小林 僕はウィリアム兄さんです。
佐藤 即答! 第一印象から決めてましたみたいな(笑)。
一同 (笑)。
小林 その質問があったら毎回ウィリアム兄さんって答えるので。
斉藤 ……でも本当は?
佐藤 ……からの?
小林 ジャックとか渋くてカッコいいなと思いますけど……いやいや(笑)。でも僕、役に入れ込んじゃうところがあって、演じてる役が好きな相手を好きになりやすいんですよ。男女問わず。なので、やっぱりウィリアムのシーンは気になるし、カッコいいなって目で追っちゃうんです。
斉藤 なるほどね。
佐藤 僕はレストレード警部が好きです、なんか苦労人っぽいところが(笑)。それに警察としての仕事よりも、自分の正義に心を向けているなと思っていて。シャーロックというとんでもない問題人物と付き合えている時点で、相当な精神的タフネスだと思うし、非情に徹することができない人間味のあるところも、すごく魅力的だなと。
斉藤 僕はフォン・ヘルダーが好きです。なぜかと言うとああいうトリッキーなキャラクターがもともと好きなので(笑)。あとはハドソンさん。女性としてもすごく魅力的だなと思いますし、ハドソンさんとパブとかに行って大きいジョッキでビールを一緒に飲みたい(笑)。
佐藤 ああ、いいですね。そういう意味では、事務所にマネーペニーさんがいてほしい。
斉藤 ああー。わかる!
佐藤 有能なので(笑)。
果たして僕が上映会で言ったような水着回があるのか(笑)(小林)
──この特集が公開されるときは、1クール目も佳境に入っています。最後に読者へのメッセージをお願いします。
斉藤 まずはここまでご覧くださりありがとございます。我々も取材を受けている今は、ちょうど8話ぐらいまで収録したところですが、新たな謎と新たなキャラクター、そしてアニメならではの「モリアーティ」の魅力に出会いながら収録を楽しんでいます。ぜひ、我々のワクワク感が120%乗った映像を楽しんでいただいて、原作と併せて先々の展開を期待・妄想して高めていただきつつ、この先も応援していただけましたら幸いです。
佐藤 毎回毎回の収録が楽しみになるくらい充実しています。制作陣もギリギリまで調整して、できる限り最高のものを皆さんにお届けしたいという思いでがんばっていますので、我々はキャラクターとともに誠実に物語を作り、皆さんに素敵なお話をお届けしたいです。今日も、まさか2人とアフタヌーンティーをいただけることになるとは思ってもいなかったですし(笑)、今後もいろんな展開をしていくと思いますので、そちらも含めて楽しみにしていてください。
小林 マンガとアニメで表現方法が違っていたり、展開が異なる部分もありますが、逆に原作を読んでいる方にも新たな楽しみができているんじゃないかなと思います。あと僕個人としては、ルイスが今後どう活躍するかも気になってます。果たして僕が上映会で言ったような水着回があるのかとか……(笑)。
斉藤 うんうん、アニオリがある可能性あるからね。
佐藤 捨てきれないからね。
小林 ですよね。5分アニメとかあるかもしれない。僕はその希望を捨ててません(笑)。
一同 (笑)。
小林 まあ冗談半分ですけども(笑)、ちょっとした息抜きシーンもあったらいいなって思いつつ、本編の展開も楽しみにしつつ、ぜひ皆さんも引き続き楽しみにしていただけたらなと思います。