アニメ「モンスター娘のお医者さん」特集 作者・折口良乃×「モンスター娘のいる日常」作者・オカヤド対談|人間ではないことが逆にプラスとなるように 両作家が語り尽くすモン娘への愛

モンスター娘の「モンスター娘らしさ」を表現してほしい

──ここからは「モンスター娘のお医者さん」のアニメについても聞かせて下さい。まずは、折口さんに伺いたいのですが、岩崎監督をはじめとした制作陣にリクエストしたことや、特にこだわってほしいと伝えたことなどはありますか?

折口 「モンスター娘」の「モンスター娘らしさ」をなるべく映像で表現してもらえたらと思っていて。例えば、サーフェは尻尾で扉を開けたり、物を掴んだりするのですが、そこはアニメでもしっかり描いていただけるようにお願いしました。実際、脚本の時点から「ここは尻尾で取っています」などと書かれているし、それをコンテでも表現してくださっていました。

──PVにも収録されているサーフェが尻尾で扉を閉めて表札をしまうシーンは、まさにモン娘ならではの描写だなと感じました。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。尻尾で表札を外し、扉を閉めるサーフェ。

折口 私もあのシーン、すごく好きなんです。映像で観たとき、とてもうれしかったですね。

──アニメはまだ放送前ですがオカヤドさんが特に楽しみにしているポイントを教えてください。(取材は6月中旬に行われた)

オカヤド やっぱり、楽しみなのはグレン先生の診療シーンですよね(笑)。この記事が公開されたときにはもう放送されていると思いますが、人魚のエラの診察とか……。ある意味、内臓が見えるような感じだから、そのまま描いたらグロくなりそうですし、アニメのスタッフさんがどんなふうに料理してくるのか楽しみです。そこはきっと、ファンの人も注目しているのでは?

折口 エラのシーンも少しだけPVに出てくるのですが、公開されたときにファンの人もすごく反応していました(笑)。

──折口さんは、アフレコにも立ち会われていたそうですが、ご自身の生み出したキャラクターたちに、声が付いたときには、どのような心境になりましたか?

折口 小説を書いているときは当然、キャラクターは自分のものだと感じていたんです。でも、これはコミカライズされたときもそうだったのですが、キャラクターが自分の手を離れていくような不思議な感覚がありました。今もアニメに関して、これは自分の作品なのかなって、ずっと思っていて(笑)。間違いなく自分の作品ですが、実際に私がアニメの絵を描いたりするわけではないので、自分の作品ではないような感覚もあるんです。さらに、声優さんの声が付くと声優さんのカラーでキャラクターが動き出すので、また一段階自分からキャラクターが離れていったような感覚がありました。

「モンスター娘のお医者さん」コミカライズ版1巻。「モンスター娘のいる日常」と同じくCOMICリュウのWebサイトで連載されている。

──子供が親離れしていくような感覚ですか?

折口 そういう感覚なのかもしれません。それと同時に、皆さんのお芝居が素晴らしくて、自分には出せない魅力を出してくださっているので、キャラクターたちのことがさらに好きになりました。今は原稿を書くとき、脳内では完全に声優さんの声でキャラクターたちがしゃべっています。オカヤド先生は、アニメになった後、そうなりませんでしたか?

オカヤド 完全になってます。本当に不思議なもので、自分が先に描いたはずなのに、後から聞いた声優さんの声が刷り込まれちゃうんですよね(笑)。意識的に声優さんの声で思い出しているとかではなくて、ナチュラルにその声で聞こえてくるんです。

折口 出発点は間違いなく私が書いた原作なのに、アニメからのフィードバックで原作の側が影響を受けるのは、すごいことですよね。

「後追いで、同じようなタイトル付けやがって」って思いませんでした?

──おふたりが対談するのは今回が初めてだと伺いました。せっかくのこの機会に、お互いに聞いてみたいことなどはありませんか?

折口 じゃあ私からでいいですか?

オカヤド どうぞどうぞ。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。

折口  「モンスター娘のお医者さん」が出たとき、「後追いで、同じようなタイトル付けやがって」とか思いませんでしたか?

オカヤド あはは、全然ないですよ(笑)。もともと、モンスター娘という概念自体は、ずっと前からあったもので、僕はそこに「のいる日常」と付けただけですから。

折口 でも、混同されることも多いみたいなので、ご迷惑になっていないかなと思って。

オカヤド それは折口先生のほうでは? お母様が間違えそうになったらしいじゃないですか。

折口 そうなんですよ。母親に私の小説がアニメ化するよって伝えたら、自分で調べたらしいのですが、「モンスター娘のいる日常」のほうが出てきたみたいで。「これではないんだよね?」みたいなことをLINEで言われました(笑)。

「モンスター娘のいる日常」より、ミーア、スー、メロのカラーイラスト。

オカヤド 危うく、お母様にド変態マンガを描いてると誤解されるところでしたね(笑)。

折口 いえいえ(笑)。でも、よく「モンスター娘のいる日常」のスピンオフに間違われたりもするので、申し訳ないなって。

オカヤド 逆に、もっと「モンスター娘の~○○」シリーズが増えたらいいのにと思っているくらいです。いろんな職業で出たら面白いですよね。

少しでも興味を持っているのならば、才能があるということ

──オカヤドさんからも折口さんに聞いてみたいことはありますか?

オカヤド アニメの収録に行くと、自分の書いたセリフを声優さんが目の前で読むわけじゃないですか。あれって、どうでした?

折口 どういうことですか?

「モンスター娘のいる日常」第1話より。半人半蛇で変温動物であるラミアが来留主の体温で暖まろうとする場面から始まる。

オカヤド 「モンスター娘のいる日常」の場合、第1話の冒頭から、ぶっちゃけエロマンガのようなシーンだったんです。そこのセリフをミーア役の雨宮天さんが目の前で演じてくださっているわけですよ。スタッフルームで聴きながら「ごめんなさい! もう殺してくれ!」って気持ちになりました(笑)。

折口 あはは(笑)。確かに「モンスター娘のお医者さん」にもそういった描写はあるので、アフレコが始まる前は、女性声優さんに申し訳ないなと少し思っていました。でも、先ほどもお話ししたように、少し自分の手を離れているような感覚もあったので、今は「変なセリフを言わせてしまった」みたいな気持ちはほとんどないですね。

オカヤド  僕は、最初のアフレコで声優さんたちの前でご挨拶するとき、その場で土下座をして「本当に申し訳ありません。まさかこのようなマンガがアニメ化するとは露にも思わず!」って謝りましたからね(笑)。

折口 オカヤド先生は、よくご自分で「エロマンガを描いている」とおっしゃるのですが、私は「これはエロ小説」という気持ちで作品を書いているわけではないので、そこまで負い目は感じてなかったです(笑)。

オカヤド 僕は負い目の塊でした(笑)。

──最後に、モンスター娘が大好きで「モンスター娘のお医者さん」のアニメも楽しみにしていた人たちと、モン娘についてあまり詳しくない人たちのそれぞれに向けて、アニメ「モンスター娘のお医者さん」の見どころやメッセージをお願いします。

折口 モン娘が好きでアニメを楽しみにしてくださっていた人たちは、私が何かを伝えなくても、きっと1話から観て楽しんでくれていると思うんですよね。なので、これからも毎週楽しんでください。あと、モン娘に詳しくない方に向けてですが……。正直、好き嫌いの分かれるジャンルではあると思うんです。ただ、少しでも興味を持っているのならば、それは好きになれる才能があるということ。少しでも気になったら、ぜひ観て、こちらの沼に来てください。

オカヤド (歌うように)こっちの沼はふ~かいぞ(笑)。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。

折口 確かに、ハマると深いですが(笑)。この作品自体は特に知識とかも必要なく、気軽に楽しめると思うので、ここから、いろいろな作品に手を出していただきたいですね。もちろん「モンスター娘のいる日常」は、モン娘好きのバイブルなので、ぜひ押さえてください。

オカヤド ありがとうございます(笑)。モン娘というジャンルが好きで、しかもエッチな作品が好きな人たちは、「モンスター娘のいる日常」や「異種族レビュアーズ」のアニメも観てきたと思うし、「モンスター娘のお医者さん」もすでに観ていると思うんです。

折口 確かに、そうでしょうね。

オカヤド でも、この作品は、モン娘は好きだけれどエッチなのはちょっと恥ずかしい、という人にもぴったりの作品。確かにお色気シーンもありますが、あれは真面目な医療行為ですから(笑)。

「モンスター娘のお医者さん」第1話より。

折口 もちろんです(笑)。

オカヤド 真面目な方向けのモン娘入門編としても、すごくいいと思います。あとモン娘に詳しくない人も興味があるなら、ぜひ観てほしいですね。食べられるものが増えるのはとてもいいことですから、この機会に好き嫌いはなくしていきましょう(笑)。

折口 気付いたら、人間では物足りなくなっているかもしれませんよ(笑)。