コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第10回 宮城理子「メイちゃんの執事DX」
「メイちゃん」の10年、マーガレットでの25年
1人の女子生徒につき1人の執事がつく超お嬢様学校・聖ルチア女学園を舞台とした「メイちゃんの執事」。2006年から2013年までマーガレット(集英社)にて連載されたのち一時休載されていたが、2014年に「メイちゃんの執事DX」とタイトルを変え、新たにスタートした。
また宮城は来年、マーガレットでデビューしてから25年目、「メイちゃんの執事」を描きはじめてから10年目を迎える。コミックナタリーでは宮城にインタビューを実施し、同じ雑誌で長く活躍できる理由や、「メイちゃんの執事」を描き続けられる原動力を聞いた。
取材・文 / 岸野恵加
「メイちゃん」を10年続けられているのは自由に描けるから
──「メイちゃんの執事」(以下無印)の新シリーズ「DX」は早くも単行本3巻を数えますが、まずは一度全20巻で完結として、タイトルを変え再出発した理由をお聞きできればと。
私と担当さんは、そのまま21巻から続けていくつもりだったんですけど、編集長に「新シリーズとして1巻から出しませんか」と言われて。初めて読む人にも手に取りやすいように、という意図があったんじゃないでしょうか。でも「DX」が無印の続編と思っていない読者の方もいると思うんですよね。だからこういうインタビューの場を借りて、「続編ですー!!」と宣伝していこうかと思って(笑)。
──なるほど。「DX」の柱でも、「『21巻は、いつ出るんですか?』ってご質問をよく頂くのですが…出ませんからっ!!」と書かれてましたもんね。「続きは正統な続編『DX』で」。ここ、強調しておきましょう(笑)。副題の「DX」は、どういう意味合いで付けたんでしょう?
いろいろ考えたんですよ。エクストラとか……。
担当編集 スーパーとか、ハイパーとか。
「帰ってきたメイちゃんの執事」とか(笑)。華やかなほうがいいと思ったのと、ロゴの据わりがよかったから「DX」にした感じです。
──導入部分では新キャラクター・アカリの視点で、聖ルチア女学園の世界が紹介されていきます。これも新規読者に配慮して、でしょうか。
はい。せっかく新シリーズの1巻から出すので、新規読者にもわかりやすいようにと、読者目線のキャラクターとしてアカリを加えました。この特殊な世界に初めて触れる人じゃないと、驚いてくれないから。決してお嬢様じゃない子にツッコミを入れてもらおうと思ったんです。
──セスナに乗って砂漠の国に飛んだり、香港マフィアと戦ったり……ブッ飛んだ舞台設定も、無印の後半ではもう当たり前になっていましたものね。
最初のうちはメイがツッコんでたんですけど、トラブルに巻き込まれるのに慣れてツッコまなくなっちゃいましたから。あ、でも「DX」では、基本的に学園の中で話を展開しようと思ってるんですよ。これも編集長からのリクエストなんですが。
──普通の体育祭、とかが出てくるんですか?
そうですね。鷹狩り大会とか?
──全然普通じゃない(笑)。
あはは(笑)。無印の最初の頃も学校中心ではあったんです。お嬢様学校に行ってるメイのそばには、なんでも自分のことをわかってくれる執事がいる。自分を見てくれるイケメンと、女が自分ひとりの閉じられた世界。かなり内向きな、都合のいい話になっちゃうと思うんですが、それってある意味女の子の夢なんですよね。その欲望を忠実に満たそうとしてたのが、敵役のルチアだった。
──理人を巡ってメイと熾烈な戦いを繰り広げた、“完璧なお嬢様”ですね。
メイは、完全に閉じられた世界を作り上げていた彼女に憧れつつも、ちょっと気持ち悪いって思う子であってほしい、と願っていました。実はルチア編はあまり人気なかったんですよ。ちょっとドロドロしてるので、当時のマーガレットの中では非常に異様な空気を醸し出してた。もしかすると読者の皆さんは引いてたかも。ルチア編が終わる7巻が物語の区切りだったので、そこで連載を終わらせようかとも考えたんですけど。
──そうなんですか!
でも「8巻の婿選び編からは雰囲気も明るめにするので、もうちょっと描かせてください」って編集部に提案したんです。なので婿選び編では「最後だからチマチマしないでおこう!」と、やりたいことを全部詰め込みましたね。
──確かに、婿候補として新キャラが6人も増えてトーンが明るくなりましたし、アクションも増えましたね。
ええ。その頃にドラマ化していただいたことも追い風になって、今に至ります。
──無印の連載が始まってから来年で10年になりますが、まだまだ「メイちゃん」を描きたいっていう気持ちはどこからわいてくるんでしょうか。
たぶんね、何をやってもいいから。
──自由に描ける?
うん、自由なので。時代とともに……っていうとカッコつけてるみたいですけど、その時々の私の気分だったり世間の流れに合わせながら、割とどんな話も飲み込めちゃう設定なので飽きないんだと思うんです。私は飽きっぽいので、固定しちゃうとたぶん「やめます」ってなっちゃいますね。
どっちかとくっついたら、そこで完結
──先ほど「閉じられた世界が女子の夢」とおっしゃっていましたが、「花になれっ!」「ラブ♥モンスター」など、宮城先生の過去作品は複数の男性に求愛されて、さらわれて、イケメンが助けに来てくれる……という、まさに女子の夢を体現するかのような王道パターンが多かったように思うのですが。
やっぱり読者にウケますからね。
──でもメイは理人に助けられてばかりだった無印の頃から比べると、「DX」ではだいぶ強くたくましくなっていて。そういったヒロイン像からは離れていますね。
そう見えてるならうれしいです! 前にほかの作家さんと、時代が変わってきたね、っていう話をしてて。今は主人公の女の子がとてもがんばったり、強く行動するのは読者に受けがよくない。受け身で、ふわっとゆるっとしてるほうが共感を得られる、と。
──そんな風潮の中でも、メイには強くあってほしい、という願望をお持ちということでしょうか?
そうですね。メイは設定としてもうすでにすごく恵まれてしまっているので。すごいお金持ちの子で、すごい執事が2人も付いているならば、少し試練を与えないといけないような気がするんですね。「ノブレス・オブリージュ」といいますか……。
──「高貴な者が果たすべき義務」。
そうそうそう。恵まれている人はやっぱりほかの人を助けなきゃいけないし、何の成長もしようとしない子には、良い執事はつかないと思うんです。その辺でちょっとメイは、普通の少女マンガの主人公とは違う扱いをされているんですよね。なんだかんだいってメイが理人とラブラブで「私もう何もしません」っていう感じだったら、理人は離れていくと思うんですよ。広い世界やいろんな人に気を留めて、自分の人生を捧げる……じゃないですけど、何かしようとするお嬢様なら、「お手伝いしましょう」って言うと思うんですね。
──メイは理人と剣人、どちらとくっつくのか、全然先が見えなくて気になります。「DX」も3巻でようやく、剣人が登場しましたね。
ファンレターでいつもお叱りを受けるんです。やっぱり恋愛を主として読まれる方も多いので、さっさと決着をつけろと……(笑)。でも私的には、そこをハッキリさせちゃったらもう完結だと思ってます。
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- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
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- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
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- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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ついに!イギリスからアイツが帰ってくる!?
執事協会規約第372条の決まりで、強制的に4年に1度の休暇を取らされた理人。3日間ものあいだ、メイから100km以上離れて1人旅をしなくてはならない虚しさで、次第に理人の心に限界が近づきます。一方、理人のいない聖ルチア女学園では、アイツが戻ってきてメイと2人きりの時間を過ごしており……!?
宮城理子(ミヤギリコ)
「しあわせな冬の日のために」で新人賞を受賞以来、 「花になれっ!」「ラブ♥モンスター」などを執筆し、マーガレット(集英社)で活躍中。2006年から 連載が始まった「メイちゃんの執事」は 水嶋ヒロ・榮倉奈々主演でドラマ化され話題に。同作は宝塚歌劇で舞台化もされた。2013年よりマーガレットにて「ミカド☆ボーイ」を連載。2014年からは「メイちゃんの執事DX」を連載中。
2016年1月22日更新