コミックナタリー PowerPush - 宮城理子「ミカド☆ボーイ」

執事の次は昭和スパイ!「メイちゃんの執事」作者、あこがれの神山健治監督と異色対談

リアルじゃない嘘っこ制服で世界観を作ろう、と

──もうそこまで考えてらっしゃるんですね。ほかにも仕掛け、ありますか?

ビジュアル的な統一感がほしかったので、ちょっとスチームパンク風を意識してみました。完全な和風だとつまんないし、少しおもちゃっぽい、マンガっぽい見た目がいいなと思ったので。

半ズボンにマントなど、現実ではありえない見た目に楽しい制服が宮城流。

──「メイちゃん」でもそうでしたが、宮城先生の描かれる制服って特徴がありますよね。

私、私服を描くのがうまくないんです。少女マンガ家さんって私服うまい方多いじゃないですか。例えば、おしゃれな服のコーディネートで画面の味を作るような。でも私はそういうの得意ではないので、だったら嘘っこの制服で世界観を作ろう、と。「メイちゃん」もそうですけど、あんな制服、実際にはないじゃないですか(笑)。でも私、ドラマで出てきたようなブレザーとチェックのミニスカートみたいなリアルな制服なんて描けないんですよ。だったら作り物でやっちゃおう、と。

──確かに「ミカド☆ボーイ」の、このマントや半ズボンって、リアルな制服ではないです。これは、どうして半ズボンに?

それはまあ、仕掛けのひとつと申しますか。男子の絶対領域であるひざを出せ、という感じですかね(笑)。銀はひざより上のショートパンツ、ヒデはひざ丈くらいというのもこだわりです。

「花になれっ!」の頃に絵柄を自己改造しました

──先ほどのマジョリティの女子の話ではないですが、「メイちゃん」にしても「ミカド☆ボーイ」にしても、宮城先生のマンガって、基本的に主人公が巻き込まれ体質だと思うんです。その感じって、女の子が読むと心地いいもののような気がしていまして。

確かに、常に巻き込まれるパターンですね。メイちゃんも高校生になってからは回りを巻き込むタイプに成長しましたが、最初は巻き込まれタイプでした。

──女の子って、「王子様がさらってくれる」とか「スカウトマンの目に留まる」とか、外から誰かがやってきて自分を巻き込んでくれるのを待望しているような気がしていて、そこが多くの女子にフィットして受け入れられているのかなあ、と。

実は私、デビューした当初は主人公の女の子がみんな気が強いタイプだったんです。でもあんまり読者にウケなくて。そこからもうちょっと受け身なキャラで流されたほうがいいんじゃないかと思って、ある時期から意図的に変えたんですよ。「花になれっ!」の頃かな。

──絵柄もその頃から変わりましたよね。

宮城理子

当時、マーガレットの編集長に「今の話と絵柄のままで行ったら、次は連載あげられないよ」って言われたんですよ。周りからは「マーガレット、合わないならやめちゃいなよ」って言われてたんですけど、たったひとりだけ「せっかく今その場所にいて、この雑誌らしいマンガを1作も描いてないのにやめるにはもったいない」って言われて。確かにそうだなと思って、絵柄も大分研究して変えたんですよ。女の子は小さく、丸く、目も大きく。性格も受け身に変えて。ただ当時の少女マンガであんまりピンとくる絵がなかったので、エロゲーの雑誌をいっぱい買い込んで、そっちを参考にしました(笑)。「こっちのほうが女の子かわいいよね」「ロリ顔で巨乳はいいよね」って言いながら。

──そんな経緯があったんですね。

ほんと、自己改造しました。主人公の女の子は自分の等身大の姿っていう作家さんってかなり多いと思うんですが、私の場合は、どちらかと言うと、もうちょっと俯瞰で見ている感じなんです。作ったキャラクター、という感じ。そういう意味で「花になれっ!」「ラブ▼モンスター」「メイちゃん」は私の中で3部作なんですよ。周りの意見をどんどん取り入れて描いた作品たち。そこから切り替えて「ミカド☆ボーイ」は……なんというか、好き勝手やろうと思ってます(笑)。

──新しい宮城先生のテイスト、期待しています。ちなみに先生、いま会ってみたい方っていらっしゃいますか?

会ってみたい人ですか? うーん、神山健治監督ですね。

──「攻殻機動隊 S.A.C.」シリーズや「009 RE:CYBORG」の。

はい。「ミカド☆ボーイ」では今後、ヒデが戦争や正義について考えたりするんですが、神山監督はそういう問題意識を持って作品に取り組んでらっしゃる気が勝手にしていて……。今後の作品作りのためにも、ぜひお会いしてお話してみたい方です。

──わかりました。では我々がセッティングしますので、神山監督にお話を聞きに行きましょうか。

宮城理子「ミカド☆ボーイ(1)」 / 2013年7月25日 / 420円 / 集英社 / マーガレットコミックス
宮城理子「ミカド☆ボーイ(1)」
あらすじ

昭和12年4月。世界大戦前夜の東京の片隅で、ひとりの少年がこの国の運命を左右するかもしれない大事件に巻き込まれようとしていた!! 本編の主人公・柴田英人(ヒデト)は名門中学に入学を決めた秀才。前途洋洋な人生のハズが、入学式当日に謎の少女の誘いにより、「神田商会」という怪しい会社に迷い込んでしまう。そこで、タダならぬ雰囲気をまとう神田という男に帝国少年諜報部「ミカド ボーイ」にスカウトされるのだが……。少年スパイがオトナの世界の闇を暴く冒険活劇漫画!!

VOMICも配信中!

柴田英人(CV:朴ロ美)※ロは王へんに路
銀(CV:小松未可子)
神田吾郎(CV:立木文彦)
桃子(CV:林真里花)

マーガレット

2013年で創刊50周年を迎える少女マンガ誌。毎月5日、20日発売。

宮城理子(みやぎりこ)
宮城理子

「しあわせな冬の日のために」で新人賞を受賞以来、 「花になれっ!」「ラブ▼モンスター」(▼はハートマーク)などを執筆し、マーガレット(集英社)で活躍中。2006年から 連載が始まった「メイちゃんの執事」は 水嶋ヒロ・榮倉奈々主演でドラマ化され話題に。同作は宝塚歌劇で舞台化もされた。2013年からは、マーガレットにて「ミカド☆ボーイ」を連載している。