空はパーフェクト人間!?

──せっかく大地の話が出たので、ここからは人間のキャラクターについても伺えればと。彼・彼女たちを描くにあたってのこだわりは？

「ミイラの飼い方」は日常のお話なので、私たち普通の人間から見て違和感がないよう気を使っていますね。

──具体的に言うと？

この子たちは挨拶をきちんとする子たちなんですよ。もしSFだったら変な行動をしていても「宇宙空間だしね」と納得できるかもしれないんですけど、この子たちは地に足がついてるキャラクターなので、そこをきちんと描かないと魅力が伝わらないと思って。ご飯を食べるときも「いただきます」と言わせるとか、そういった細かい動きは意識して入れています。

──確かにメインキャラクターの4人は、それぞれにかわいらしさとイケメンさを併せ持っていて、しかもいい子ですよね。その中で大地は当初、不良っぷりを見せていましたけど。

あれは原作よりも少し凶暴なふうに見せました。寝不足がつらいというのを表現するためにはあれくらい過剰にやったほうがいいかなと思ったし、そこを強調しておかないとその後のギャップが活かせないですし。ただ、あの状態の大地と仲良くなるなんて、空はコミュ力の化物ですよね。たぶん人間じゃないですよ（笑）。

──空の完璧ぶりは際立っていますよね。

友達思いだし、家事も万能ですしね。ただ最終話まで観ていただければ人間的な部分が見えるかと思います。空は強いのではなく本当は強くなろうとがんばっている子で、そんな彼の人生が、ミーくんがやってきたことで明るく変わったんだとわかると思うので、ぜひ注目してほしいです。

夜遅くにTwitterで実況する愛の深いメインキャスト陣

──空を演じる田村睦心さんの印象や起用のポイントを教えてください。

田村さんは女性だからというのもあると思いますが、中性的な声の中で母性を出せているし、「ミーくん大好き」というのをちゃんと声で表現されていてすごいです。本作のような女性をメインターゲットにしている作品で、男主人公のキャストさんは男性と女性のどちらがいいのかは少し考えましたが、真剣になったときの力強い表現とかも上手いし、空の声は田村さんしかいないと思います。

──田村さんはほかの現場でムードメーカーだとよく聞くのですが、「ミイラの飼い方」ではいかがでしょう？

この現場はみんな仲がよかったのですが、中でも田村さんはずっと「座長」と言われて姉御として慕われていました（笑）。ミーくんがとにかく好きで、休憩時間もずっと「ミーくんかわいい」とおっしゃっていて。こちらが何も言っていないのに、すでに自分でミーくんのぬいぐるみを買っていらっしゃったくらい気に入ってくださっていました。

──田村さん以外の演者さんも、Twitterなどを見ていると作品愛の深さを感じます。

Twitterでアニメを観ながら実況してくれていますもんね。原作の空木先生をはじめ、キャストの田村さん、河本さん、茜屋さん、そして音楽を担当しているMAYUKOさんも。「ミイラの飼い方」の放送はかなり深い時間なのに……すごくうれしいです。河本さんなんて最終的に寝落ちしちゃうぐらい眠いのに、ギリギリまで実況しようとしてくれてて（笑）。それほど作品を好きでいてくれるのに、他月は無愛想なキャラクターだから「かわいい」という感情があっても演技に乗せられないのがかわいそうで（笑）。

──その河本さん含め、空以外のメインキャラクターの演技についてはいかがでしょうか？

河本さんは、他月みたいな低い声で演技するのは初めてだとおっしゃっていて。当初は苦労してチューニングしていましたが、今では完全に他月の声にハマってますよね。山下さんは大地の気のいい兄ちゃん、好青年という感じに、ご自身のキャラが出ている気がします。ちょっとアホというかビビリな面にも持ち味を最大限に活かしてもらっていて（笑）。

──茜屋さんが演じる茂木ちゃんは紅一点かつ、「～だぞ」をはじめとする変わった口調のおかげか作中で存在感が強いです。

あの武士みたいなしゃべり方ですよね。茂木ちゃんの言い回しはすごく気を使っていて、脚本の段階から空木先生に監修してもらっていました。そうしてできあがったセリフに茜屋さんが声を乗せるとさっぱりしたかわいらしさが出て、すごく魅力的なキャラクターになったと思います。茂木ちゃんの声優選びが一番難航したんですけど、茜屋さんは「～だぞ」って語尾も自然に、アニメキャラすぎない感じで演じてもらえてありがたいです。

──女性がメインターゲットの作品なので恐縮ですが、おヘソを出して寝ている茂木ちゃんに、いさおががんばって布団をかけてあげようとするシーンの描き方が丁寧で。少しセクシーさを感じるというか、「ゆゆ式」で女子高生の丁寧な描写にこだわり抜いたかおり監督らしさを感じました。

女の子の描写に関しては私の得意分野なので、あそこはちゃんとやらないとなと思いまして（笑）。でも「ミイラの飼い方」はそういった作品ではないとわかっているので……原作にあった茂木ちゃんのお風呂シーンもやりたかったですけどね（笑）。

──もう1人の女性であるカエデ役の茅野愛衣さんは、「ゆゆ式」から続投ですね。

落ち着いたかわいらしさがあって大人の女性の演技もできて、しかもカエデさんとカエデ様の演じ分けもできて……そんなふうに演じられる方にお願いしたいと考えていました。ただオーディションで演技を聞いて「やっぱり茅野さんしかいないや」となり、ちょっと無理やりお願いしました（笑）。

──あとは原作ではいつも1コマや2コマくらいしか登場しない鈴木と田中ですが、アニメで声が付いたおかげか存在感が増したと感じます。

いい狂言回しの2人。私も大好きです。鈴木役の花倉（洸幸）さん、田中役の峯田（大夢）さんは、別のキャラクターのオーディションで来てくれたんですけど、声を聞いていて「あれ？ この声は鈴木に合うんじゃない？ 田中に合うんじゃない？」と感じてお願いしました。田中役の峯田さんは気だるげな感じがすごく田中っぽく感じたんです。花倉さんも鈴木の無駄に元気な感じに合うなと思って。本作はメイン4人だけの話になりがちですが、おふたりのおかげで空たちはほかにも友達がいることを示すことができたと思います。