勇利は本当に力石なのか?
──そんな泥臭いジャンクドッグに対し、階級の頂点に立つような存在が、メガロニアの仕掛け人・白都ゆき子です。
ゆき子は「あしたのジョー」で言ったら白木葉子のポジションってことですよね。「あしたのジョー」だと最後に葉子がジョーへ思いを告げたり、ジョーも葉子に対してグローブを渡したり、2人の距離が縮まるところが描かれますけど、「メガロボクス」でもそういう話に持っていくんですかね? まず、どういう思惑でゆき子がメガロニアを開いているのかっていうのも気になりますけど。
──ゆき子が葉子を連想させるように、セコンドの南部は段平を想像させます。
でも南部と段平はまたキャラクター性が違いますよね。今のジャンクドッグと南部って、南部が借金を返すためにジャンクドッグと組んで戦っているだけで、本当の二人三脚ではない。風貌と設定だけの「あしたのジョー」のパロディなのか、これから段平のようにジャンクドッグを支えていく存在になるのか。今のままだとしょうがなく呉越同舟している印象があるから、2人がこれからどうやって戦っていくのかも気になるところですね。
──確かに、それぞれの関係性の変化にも注目ですね。
まあ、結局一番気になるのは誰が死ぬんだって話なんですけどね。
──そこですか(笑)。
やっぱり「あしたのジョー」って、ボクシングで人が死ぬっていうのをちゃんと描いてるのもいいところだと思うんです。「ジョー」のラストって、ジョーが死んでいる派と眠っている派の2つに分かれると思うんですけど、俺は俄然死んでる派なんですよ。
──それはどういった理由から?
そっちのほうが自然かなと。勝っても負けても、あそこが最後だと思って戦っていたジョーがカッコいいなと思いますし、戦い続けることが目的じゃなく、すべてを出し切ろうと決めて戦った試合が、最後のホセ・メンドーサとの戦いだったわけで。だからジョーはあそこで死んでもいいんじゃないかって僕は思ってるんです。“死ぬ”と言ったら、勇利だってズルいですよね。だってモロに力石を意識させる存在ですから。
──彼の顔立ちも、勇利と出会ってジャンクドッグの人生が動き出すというところも、力石を思い出させますね。
それこそ「勇利って死ぬんじゃないの?」って考えちゃいますよね。2人が戦いを通して気持ちが通じ合って、決着がついたときにどちらかが命を落とす……みたいな。ただ、今のところ勇利が本当に力石なのか、それともホセなのか、別の誰かなのかわからないところもいいんですよ。戦い方とか性格には“氷のチャンピオン”“戦うコンピューター”と言われていた金竜飛のような部分も感じるし。意外と完全に力石としては描いてないようにも見えるんですよね。
──そう考えてみると、今後どのような展開になるのかは気になるところですね。
力石って、減量のリスクを負ってでもジョーと戦ったところがカッコいい部分だし大事な部分でもあると思うんですよ。でも「メガロボクス」はそういうのとも違う。構図としてジョーのライバルは力石だから、ジャンクドッグのライバルは勇利みたいになってるけど、実際はそうはならないのかな……と、思わせてやっぱ勇利は死ぬのかなとか(笑)。
──やっぱり死ぬかどうかが気になってしまう(笑)。ちなみに監督も「あしたのジョー」のファンだそうです。
そうなんですね。でもただ「あしたのジョー」をなぞるわけにはいかないですもんね。とはいえ「あしたのジョー」っていう名前があるだけに、こっちも予想はしちゃいますけど。どうやってジャンクドッグが勇利を倒すのか、それとも倒せないのか。そもそもジャンクドッグはメガロニアに出場できるのかっていうところも気になりますけど。これって全何話なんですか?
──13話です。
13話でまとまるんですか!? やることいっぱいあるじゃないですか!
──(笑)。
でもあんまり丁寧に描かれても嫌というか、突っ走って描いてほしいっていうワガママな願望も視聴者としてはありますね。ジャンクドッグのように名前のなかった男が夢を追って戦うっていう、今の情報だけで充分カッコいいし、こっちも熱くなれるんで。
苦労はしたくないから、苦労して夢を掴む人を見たい
──「メガロボクス」は八百長試合をこなす“偽物”として活動していたジャンクドッグが、日の当たるリングで絶対的王者の座に輝く勇利という“本物”と出会い、覚醒していく物語です。カズレーザーさんにはジャンクドッグにとっての勇利のような、ジョーにとっての力石のような存在はいますか?
ライバルみたいな人ってことですよね? たぶんそれがいないからこんなに生ぬるい生活をしてるんでしょうね(笑)。
──ライバルはいない?
誰とも戦わずに「まあまあ、いいじゃないですか」って生きてきましたからね(笑)。ボックス(殴ること)もせずに「まあまあ、まあまあ……」って(笑)。なあなあで過ごしてますから、誰とも争わない。
──以前、クイズ番組でよく共演されている宮崎美子さんがライバルだとお聞きしました。
それも共演が多いってだけで、芸能界でのライバルってわけではないですもんね(笑)。クイズも自分の知識でやるものだから、誰と戦うものでもないし、本当は敵なんていないですから。でも皆さんそうなんじゃないんですか? 今の日本でリスクを負った選択をする機会って、そんなにないんじゃないかなって。だからこそ、こういったキャラクターに憧れるんだろうなと思います。
──ジャンクドッグのような、闘志の炎がくすぶっているキャラクターに。
マンガやアニメのキャラクターには、自分がやれないことをやってほしいじゃないですか。「あしたのジョー」も「メガロボクス」も一緒だと思うんですけど、やっぱり男が憧れる理想のヒーローって、本当は、「ドラゴンボール」の悟空みたいなめちゃくちゃ強い存在だと思うんですよ。でも、憧れの対象としてそれは遠すぎるんですよね。もちろんそういうスーパーヒーローにも憧れるけど、自分よりももっと苦労してる人がのし上がって夢を掴むさまも見たい。やっぱりみんな、苦労はしたくない。だからこそ苦労して、成功する人を見たいと思うんです。
──それで言うと、「メガロボクス」では八百長試合しか行えないことに苛立ちを感じていたジャンクドッグが、地下からのし上がっていく姿に期待したいですね。ちなみに本作のキャッチコピーに「あしたを、選べ。」という言葉があるので、カズレーザーさんにも「岐路に立った瞬間はありますか?」とお聞きしようと思ったんですけど、この感じだと……。
全然ないっすね(笑)。全然ないから困っちゃいますよね、ハングリー精神が(笑)。怒ることもないし、不満もない。ただ楽しく芸人をやってます(笑)。
──わかりました(笑)。では改めて、第1・2話を観て、カズレーザーさんはこの作品をどんな方に観てもらいたいと感じましたか?
これって結構深い時間に放送されるんですよね。じゃあ、その時間にクタクタになってる人に観てほしい。たぶん絶対不満があるじゃないですか、その時間にクタクタになってる人って。
──夜遅くまで働いて、深夜に帰宅したり。
逆にもともとアニメが好きで、その時間にアニメを観ようと思ってテレビの前にいる人って日常も幸せだと思うんです。「これが観たい」っていう何かしらの目標があって、1日を過ごせるって結構幸せなことだと思うし。「あ、今日はこれが放送される日だ」みたいな。
──そのために1日がんばろうと思えますよね。
そういうのもいいんですけど、ホントにめっちゃ眠いな、疲れたなって人がこのアニメを観て、目をガッって見開いてほしいですね。「うわ! いいのやってる!」って。そういう人にこそ、主人公のジャンクドッグに対しても、何かしら共感できる部分がある気がしますから。そのまま毎週観る感じになって、一週間の楽しみになったらいいですよね。でも「あしたのジョー」ファンは放っといても観るでしょうね、やっぱり。
──原作ファンとしてはクレジットされている以上、気になってしまうものかと思います。
気になるでしょう。だってこれだけの作品ですから、「『あしたのジョー』は史上最高のマンガだ!」って言うぐらいの“「あしたのジョー」原理主義者”の人っていますもんね。そういう人から「どうすんの? 勝手に原案にしてくれちゃって」みたいな感じで言われることもあるかもしれない。そういう人に負けないゴールを迎えてほしいですね。
──ありがとうございます。ちなみに、もしカズレーザーさんが「メガロボクス」のようにギアを装着するとしたら、どういうものを身に付けたいですか?
ええー! なんだろう。別にパンチを強くしたいとかはないんですけど……脳みそ変えたいですよね。そうしたらネタとか考えるのが超楽になる(笑)。
──大喜利も強くなる(笑)。
パンチ力が上がるみたいに、脳にバカリズムさん的な能力が備わって、大喜利でウケまくる。“バカリズムギア”があればめっちゃいいですね(笑)。
- テレビアニメ「メガロボクス」
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放送情報
- TBS:2018年4月5日(木)より毎週木曜25:28~
- BS-TBS:2018年4月14日(土)より毎週土曜25:00~
- ※BS-TBSの初回放送のみ第1話23:00~、第2話25:00~
- ※放送日時は予告なく変更になる場合あり。
ストーリー
今日も未認可地区の賭け試合のリングに立つメガロボクサー“ジャンクドッグ”。実力はありながらも八百長試合で稼ぐしか生きる術のない自分の“現在(いま)”に苛立っていた。
だが、孤高のチャンピオン・勇利と出会い、メガロボクサーとして、男として、自分の“現在”に挑んでいく──。
スタッフ
- 原案:「あしたのジョー」(原作:高森朝雄、ちばてつや / 講談社刊)
- 監督・コンセプトデザイン:森山洋
- シリーズ構成・脚本:真辺克彦、小嶋健作
- 音楽:mabanua
- キャラクターデザイン:清水洋
- アニメーション制作:トムス・エンタテインメント
- 製作:メガロボクスプロジェクト
キャスト
- ジャンクドッグ:細谷佳正
- 南部贋作:斎藤志郎
- 勇利:安元洋貴
- 白都ゆき子:森なな子
- サチオ:村瀬迪与
- 藤巻:木下浩之
©高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト
- 連載開始50周年記念
「あしたのジョー展」 -
- 会期:2018年4月28日(土)~5月6日(日)※会期中無休
- 時間:10:00~18:00(入場は閉場の30分前まで)
- 会場:東京・東京ソラマチ® 5F スペース634
- 料金:一般・大学生1200円(1000円)、高校・中学生800円(600円)、小学生以下無料
※()内は前売料金
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著者が選んだ名シーンの原画の数々や、アニメ「あしたのジョー」「あしたのジョー2」はもちろん、新作「メガロボクス」の資料を一挙公開。人気作家からのトリビュートイラストやメッセージも展示される。
- カズレーザー
- 1984年7月4日生まれ。埼玉県出身。2012年に安藤なつとお笑いコンビ・メイプル超合金を結成。「M-1グランプリ2015」では決勝に進出。
2018年7月13日更新