「ドラゴンボール」がなければ、マンガ家を目指していなかった
──「マテリアル・パズル」は高校生の頃から構想していた作品だとおっしゃっていましたが、土塚さんがデビュー前に影響を受けた作品というと何が思い浮かびますか?
まず鳥山明先生の「ドラゴンボール」ですね。「ドラゴンボール」は、僕が小学校に入ったときにはもう連載は始まっていて、アニメがちょうど始まったくらいで。なので小学生の頃は毎週ジャンプで「ドラゴンボール」を読んで、熱心にアニメも観てという、「ドラゴンボール」のストライク世代なんです。もちろん今まとめて読んでも面白い作品だと思いますが、悟空が大人になったり、サイヤ人が出てきてナメック星に行ったり、人造人間が出てきたり……みたいな時期を、毎週「どうなるんだろう」「すげえ」と思いながら読んでいたので、面白さの体感レベルが違うというか。「ドラゴンボール」がなかったら、マンガ家自体目指していなかった気がします。
──「ドラゴンボール」がマンガ家・土塚理弘の原点なんですね。
ああいうバトルアクションを描くのに憧れましたね。それ以外だと、あだち充先生も大好きです。ちょうど中学生の頃に「虹色とうがらし」とか「H2」とかがやっていて、こちらは日常コメディの間の取り方……コマ割りだったり、時間の流れだったり、そういった要素を勉強させてもらいました。それから、プロになる直前に一番勉強したのは浦沢直樹先生の作品です。あの人は全部が完璧というか、“マンガ力”がすごく高い。キャラの魅せ方、コマの割り方、セリフの切り方などが本当に教科書のような人なので。この人を参考にして、なるべく近づけるようにがんばれば間違いないと思っていました。
──土塚さんはギャグマンガでデビューされましたけど、ギャグの部分でも影響を受けた方はいます?
影響を受けたという面だと、特に「清杉」とかを作るうえで肥やしとなったのは、たぶん松本人志さんのコントですね。「一人ごっつ」とか「松ごっつ」とか……OVA3部作の「VISUALBUM(ビジュアルバム)」も、ちょうどその頃でした。そういう映像的なものを観て、空間の使い方、時間の流れをマンガでどう表現するか、最後のオチを盛り上げる演出みたいなものを学んだように思います。当時の笑いの最先端でしたね。
──先ほど「ギャグは自分で描きたい」とおっしゃっていましたが、描いていて楽しいのはやはりギャグですか?
いや、描くのが好きなのはバトルですね。自分が原作だとしても、自分で描くにしても。
──バトルのどんなところがお好きですか。
単純に盛り上がるんですよ。描いていて山場が作りやすい。「ドラゴンボール」しかり、バトルものを読むのも好きだったので。あだち充さんのラブコメにも、野球でどっちが勝つかとか、そういう楽しみもかなり含まれているじゃないですか。少年マンガといえばバトル、という気持ちがあるので、僕のマンガは基本全部アクションがあるんでしょうね。
──とりわけ体を使うバトルでしょうか。頭脳バトルではなく……。
そうですね、やっぱり動きがほしいですね。「ジョジョ」とか、アクションありつつの頭脳バトルみたいなものは好きですし、すごく面白いと思います。
──確かに肉体のバトルにも、駆け引きは含まれますね。土塚さんご自身は、何かスポーツや武術などやられていたんですか?
いえ、全然(笑)。ただスポーツマンガは好きです。描いてきた作品だと「BAMBOO BLADE」は剣道だし、「MASTERグレープ」は武道ものですけど、野球とかサッカーとかもやりたいなとは思っています。「清杉」は一応サッカーマンガですが(笑)。
また読んでね
──土塚さんは今年でデビュー20周年を迎えられたということで、ご自身でもTwitterで振り返り企画をやられていらっしゃいましたが、改めてこれまでの作品を振り返ってみていかがでしたか。
そろそろ新人じゃなくなってきたかなって。
──ええっ! 20年も描かれている土塚さんがそんなことをおっしゃるとは、びっくりです(笑)。
ずっと新しい連載をやろう、やったことのないジャンルをやろうと手を広げてきたところがあるので、自分の中ではずっと新人みたいな気持ちがあったんです。でも、だんだん担当さんのほうが年下ということが増えてきて(笑)。ほとんどの担当さんが作品作りをお任せしてくださるので、特に作品の作り方が変わったりはしていないんですけどね。
もう2018年も終わりですね
— 土塚理弘スタジオねこ (@studionekot) 2018年12月29日
来年はとつかまさひろデビュー20周年
という事で
振り返り企画とかしていきます
最初の年は賞とった清杉が掲載されたくらいなので
連載開始から見れば 実質来月で丸18年とかではあるんですけどhttps://t.co/gvmRGi0bAL pic.twitter.com/3T9oy7ruay
──描いていて悩むことはないですか。
最近だと、オイーモゴッデスの名前をイモラにするか、なんの芋にするかとか悩みました(笑)。「マテリアル・パズル」に関しては、次の話をどこまでやるかとか、エピソードの取捨選択、入れる順番とかが大変ですね。今回登場した中だと、イルチの故郷・ラセン国だけでも描きたいことがたくさんあるんですよ。イルチの話に出てきた“併せ(パイル)”や“陣”の術以外にも、いろんなアイテムがあったり、独自の文化があったり。そういうのをやってると全然終わらないので、悩ましいですね。いつかやれたらいいねって思っています。単行本には描き下ろしおまけページも用意したので、そちらも楽しみにしてください。
──では最後に、読者の方へメッセージをいただけますか。
そうですね、新しい読者にもわかるよう作ってはいるけれど、やっぱり昔から待っててくれた読者のために描いているという気持ちが強いので、「また読んでね」という感じです。忘れてしまった部分もあるでしょうけど、そういう部分もおさらいしつつ進めているので。待っていてもらったぶん、当時そのまま続けていたよりも、絶対面白くなってると思います。1巻より2巻のほうが、2巻より3巻のほうがみたいに、どんどん面白くしていきます。ティトォたちの冒険をぜひ一緒に見届けてください。
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