そして、乱歩原作の第二弾として、『芋虫』。
ずっと、乱歩を漫画化するなら『パノラマ島綺譚』か『芋虫』のどちらか、と思っていました。それで、大変な方から、と思って『パノラマ島』を先に描いたんです。ページ数的にも絵的にも、『芋虫』は『パノラマ島』より楽だからね(笑)。
「パノラマ島綺譚」に続いて、丸尾は「芋虫」でまたも江戸川乱歩原作の作品に挑む。戦争で四肢をなくし、五感のほとんどを失ってしまった夫と、廃人となった夫を虐げ快感を得る妻・時子。発禁処分となったこともある乱歩の問題作を、エロティックな部分もグロテスクな部分も余すことなく描き出した丸尾の「芋虫」は、目を背けたくなるほど過激でありながら、この物語が比類なき夫婦愛の物語であることを多くの読者に伝えた。
2010年に刊行された「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」は、丸尾が乱歩作品にインスパイアされたイラストの数々を収めたもの。同書には、乱歩作品を原作とするマンガ第3弾「踊る一寸法師」も収録されている。
「芋虫」掲載誌カバー用イラスト
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)
「芋虫」
(「芋虫」収録)
このページは単行本時に描き下ろしました。連載で雑誌になったのを見て、「このシーンが必要だよな」と思って。単行本で描き足すのは、左右のページがズレないように、2ページ描かなきゃならないから、大変なんですよ。だから本当はやりたくないんだけど、まあ、これもしかたないですよね。やったほうが良いと思ったら、やるしかないので。
「芋虫」
(「芋虫」収録)
「芋虫」
(「芋虫」収録)
『芋虫』を描いたことで、乱歩については、ある程度満足したんです。編集者からは、他にもと頼まれたんですが、一番描きたかった二作を描いたから、別の作品にはなかなか気分が乗らなかった。
©丸尾末広/KADOKAWA