マンガPark特集|現代ホストの帝王ROLAND、女子マンガ研究家に薦められた作品を読破する

「かげきしょうじょ!!」とホストの共通点

小田 「かげきしょうじょ!!」は私のイチオシ作品でして、ぜひROLANDさんにも読んでほしかったんです。

ROLAND これ、本当にめちゃくちゃ面白かったです。「ホスト部」は部活動としてはゆるくて「金持ち喧嘩せず」な雰囲気がありますけど、自分が帝京高校のサッカー部出身ということもあって、「かげきしょうじょ!!」の絶対的な上下関係は見ていてかなり懐かしくて。この作品の舞台は宝塚歌劇団がモチーフですか?

小田 そうです。「かげきしょうじょ!!」の舞台は創立100年の、未婚女性だけで構成された「紅華歌劇団」のスターを養成する音楽学校です。

ROLAND 宝塚は規則が厳しいって聞きますよね。ファンもすごく統率が取れているとか、観劇中は大きな歓声を出してはいけないとか。

小田 ええ、宝塚では何事にも秩序があります。養成学校から歌劇団のプロの方からファンに至るまで統率が取れている、美しい世界ですね。

ROLAND

ROLAND 興味深い……。正直宝塚に関して詳しくは知らないんですが、ストイックな教育現場にはかなり関心があります。宝塚の音楽学校って、めちゃくちゃしっかりした教育機関じゃないですか。倍率も高いし、入学させるために親もがんばるし、「ブスの25箇条」も有名だし、そこを出たら一目置かれるという世間の共通認識もある。

小田 そうですね。2018年度は宝塚音楽学校を965人が受験して、40人が合格。合格倍率24.1倍の狭き門です。

ROLAND そういった宝塚音楽学校のことがリアルにわかって、読めてすごくよかった。紅華歌劇団の音楽学校は、教育施設としてかなり理想的です。僕は今年いっぱいで現役のホストを引退して、独立するんです。来年には新しいホストクラブをオープンさせようと。だから教育に関して、今まで以上に取り組まなきゃいけない。一人前の男を育てる専門学校ってないですよね。ジェントルマンの養成所ってイギリスにはあったりするんですけど、日本にはない。ビジネスツールとしても教育としても、ホストクラブを活用して世の中にいい男を出していきたいなって思ってたので、かなり参考になりました。

小田 そう言っていただけると、オススメした甲斐があります。役に立ちそうなところはありましたか?

ROLAND 後輩をマンツーマンで指導するってところ、あったじゃないですか。

小田 「生活指導は予科(1年)一人に対して本科(2年)生一人が責任を持つ」という箇所ですね。

ROLAND そういうのは、ホストクラブにはない感覚です。でも役職を与えてあげると人って成長するっていうし、一人前になったら後輩を1人マンツーで面倒見させるのは結構面白いと思いました。あと連帯責任。ホストは個人事業主って位置づけの店も多くて、連帯責任の意識があまりないんですが、責任感を持って一致団結する方法の1つかな、とか読みながら考えましたね。それに、道端で練習するのを怒られたシーンがすごくよかった。

「かげきしょうじょ!!」より。

小田 練習場所を探しているときに、主人公のさらさが「もう道端でもいい」と言った場面ですね。祖母・母ともに紅華出身の星野薫が「道端なんてお客様の夢を壊す様な場所で練習なんてできるわけない」と激怒しました。

ROLAND そうそう、「私達は歴史と伝統を重んじる紅華歌劇団」と啖呵を切るところ。あれってすごく大事なことで、僕も従業員に「絶対に歌舞伎町のコンビニには行くんじゃないよ」と話してるんです。というのは、ホストは非現実を見せなければいけないのに、コンビニは本当に生活感の象徴なわけで。従業員がプライベートでコンビニに行くのは、そこまでは制止できない。でも最低限歌舞伎町のコンビニには行ってはいけない、ちゃんと自分の家の近くで買ってからおいでと伝えています。まあ僕はプライベートでも行かないですけど。

小田 徹底してますね。ホストと紅華歌劇団には、夢を見せる仕事という共通点があるんですね。

ROLAND 確かにそうです。マンガで「紅華歌劇団の団員の年齢を詮索しない」って暗黙の了解がありましたけど、現実と隔離された世界を演出する方法は勉強になります。

ライバルは、強いて言えば昨日の自分

小田 「かげきしょうじょ!!」は、主人公のさらさと、仲間でありライバルでもある愛の成長物語なんです。ROLANDさんにはライバルとなる存在はいましたか?

ROLAND いなかったですね。強いて言えば昨日の自分かな。

小田 自分がライバル?

熱弁を振るうROLAND。

ROLAND はい。ただ、さらさの気持ちがすごくわかる。いるんですよ、自然とスポットライトを浴びちゃう人間が。僕も今年で引退というタイミングで、自分を客観視する機会が増えたんですが、やっぱり自然と特別視されてたなと。さらさは運動会で大抜擢されてましたけど、僕も20歳のときに当時の店のオーナーに「お前が社長やれ」って言われて。周りからは批判ばっかりで、結局そのお店は失敗しちゃったんですけど。だからもしさらさみたいなタイプの子が店の面接に来たらすごくうれしいだろうな。歴史を作る子とか、伝説のホストになる子って、やっぱり常識がないというか、変わってる子だと思うんです。それにさらさって志がすごく高いじゃないですか。「ベルサイユのばら」のトップ・オスカル様を演じたいって。こういう子、本当に僕の店に来ないかな。さらさみたいな才能は、生み出そうと思って生み出すものじゃないと思うんですよ。

小田 「かげきしょうじょ!!」は、「ガラスの仮面」のマヤと亜弓さんのように、天才型のさらさと努力型の愛がいて。さらさはマヤと同じく、本物の天才なんですよ。

ROLAND AKB48ならぬJPX48(作中のアイドルグループ)出身の愛が努力型ってことですよね。

小田 ええ。国民的グループの元メンバーで親は女優で知名度はめちゃくちゃ高く、一見華やかなんですがよく見ると努力してるタイプです。

愛は、さらさとともに銀橋を渡ることを目標としている。銀橋とは宝塚大劇場と東京宝塚劇場にあるエプロンステージのこと。

ROLAND 確かに愛みたいな子って、作り上げることができる存在だと思うんです。さらさのようなタイプは作れない。さらさを通して、これまでの自分の人生を振り返りましたね。宝塚のプロ意識を植え付けるためにも、店の従業員にも読ませたい。

小田 演劇がテーマですがスポ根モノでもあるので、男の人でも楽しいと思いますよ。

ROLAND そうですよね、絵もきれいでスッと入ってくる。紅華みたいに伝統に誇りを持ってるから一体感があって仲間同士の統率が取れているし、お客様の質がいいってすごいことですよ。言い方に語弊があるかもしれないですけど、お客様を教育するのもホストの仕事なんです。いいホストにはいいお客様が付いているので、質の悪いお客様を抱えているホストはやっぱりレベルが低く見えてしまう……僕はなんでも仕事に落とし込んで考えちゃう癖があるんですけど、「かげきしょうじょ!!」は本当に仕事に活きる作品ですね。

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ROLAND(ローランド)
1992年、東京生まれ。高校卒業後、すぐに大学を中退して18歳でホストデビュー。1年間の下積み時代を経た後、歌舞伎町の数々の最年少記録を更新し、20歳にして当時所属していた店舗の代表取締役に就任。2013年にはKG-produceに、現役ホストとしては史上最高額の移籍金で移籍。その後、テレビ番組に出演するなどタレントとしても活躍。2017年度に4200万円を売り上げ店舗最高記録を樹立するとともに年間売り上げも1億7000万を超え、2018年には月間6000万を売り上げて、グループの個人最高売り上げ記録を樹立。2018年12月に現役ホストを引退し、2019年1月より独立して新たにホストクラブをオープンさせる。
小田真琴(オダマコト)
1977年生まれ。少女マンガとお菓子をこよなく愛する女子マンガ研究家。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている。