書店を持ったら、おじいちゃんだらけのコーナーを作りたい
──今回は羽多野渉さんとPOP作りにチャレンジしていただきましたが、江口さんはこれまでにPOPを作ったことはありますか?
まったくなかったです。コンビニのアルバイトで作る機会はあったんですけど、僕に任せると「商品が売れなくなる」みたいで(笑)。文字や絵で魅力を伝えることがとにかく苦手なんですよ。学生時代も美術の成績は1とか2でしたし、何も思いどおりに描けなくて先生から怒られる、という。
──(笑)。とてもスムーズに作業していたように見えました。
センスが絶望的にないので、こういうときは何も考えないようにしているんです(笑)。
──お疲れ様でした。作業を振り返ってみていかがですか?
どうやって作品を選ぼうか悩みましたね。好きなマンガはいくつもあるんですけど、誰かにおすすめするとなると話が変わってくるので。そこで、自分に何か影響を与えてくれた作品にしようと思って、小学生時代に出会ったマンガをピックアップしてみました。
──懐かしいタイトルが揃っていたのは、そういう意味だったんですね。
はい。今だともう価値観が固まった状態で社会に出て仕事をしていますから、最近の作品だと自分を鼓舞してくれたり、エネルギーに変えてくれたりする作品を好む傾向があって。逆に影響を受けやすいタイミングというとその頃かなと。
──ちなみにマンガは当然お好きだと思うのですが、江口さんはどれくらい読まれますか? 先日、鈴木達央さんがインタビューで1万2600冊と尋常じゃない冊数を答えていたのですが……。
1日に何冊読んでいるんだろう、って思いますよね(笑)。僕は全然そこまでじゃないんですが、(スマホを開きながら)300冊くらいですかね。
──スマホをご覧になりながら答えたということは、電子書籍派ですか?
そうですね。引っ越したりするとスペースの問題で置き場がなくなっちゃうので。例えば「SLAM DUNK完全版」みたいなマンガは紙の単行本で全巻そろえていますけど、紙でも電子書籍でも出ている作品でどちらもそろえたいものは両方買ったりしているので、読みたくなったらスマホで読んでます。
──なるほど。では、「面白いマンガに出会いたい!」と思ったらネットで?
はい。ネットには思い思いに自分の好きな作品を推している人が無限にいるので、その声が届きさえすれば、多くの人に知ってもらえる可能性があるところが好きなんです。そういうふうに好きなものをいろんな人と共有できるのが楽しいし、人におすすめされるとついつい買っちゃいます。
──今回は自分の書店を作るイメージでPOPを描いていただきましたが、仮にご自身で書店を持つとしたら、どんなお店が理想ですか?
やっぱりマンガ専門店にしたいですね。僕が店長だったら「血湧き肉躍るバトル」とか「かわいいヒロインがいっぱいのラブコメ」みたいに、ジャンル別にコーナーを作ってみたいです。で、「おじいちゃんが主人公の激渋ハードボイルド」とか、おじいちゃんだらけのコーナーを作りたい(笑)。
──ピンポイントですね(笑)。
最近はかつて吸血鬼ハンターだった老紳士を描く「銀狼ブラッドボーン」にハマっているのですが、昔から強いおじいちゃんが好きなんですよ。一度は現役を退いたおじいちゃんが再び前線に戻ってくるストーリーってめちゃくちゃカッコよくないですか? 「ONE PIECE」でもガープとか白ひげみたいなキャラクターが好きだし……。でも、「幽☆遊☆白書」だと幻海が一番だから、老人キャラクターが好きなのかもしれないです。
──今回は羽多野さんとの対決になりますが、羽多野さんが作る書店ってどんな感じだと思いますか?
すっごくキレイか、すっごくスケベかのどっちか、です(笑)。僕のほうが字面的に「江口書店」ってちょっとスケベな感じですけど、羽多野さんは変態紳士だから……。あらゆるエロ本を集めた書店か、50音順プラス出版社別にしっかりと整理整頓された書店のどちらかだと思います。
──(笑)。それって江口さんから見た羽多野さんのイメージでもあるわけですよね。
あはは、普段はすごく優しくて真面目な先輩ですよ(笑)。そこまでお酒を嗜まれるわけじゃないんですけど、作品やイベントなどの打ち上げには駆けつけてくださるし、お酒を飲まなくても2次会とかまで参加してくださるし。だからこそ、溜まっているものがあるんじゃないかと……。羽多野さんには全力で振り切ってほしいんです(笑)。
りぼんが読みたいから妹に付き合ってもらって…
──今回は江口さんに「自分を変えてくれた」マンガを5作品選んでいただきました。作品が生まれた年代順でいうと「幽☆遊☆白書」が最も古い作品になりますが、出会った順番だといかがですか?
「幽☆遊☆白書」から始まって、「ケロケロちゃいむ」「学級王ヤマザキ」「I"s」「ジャングルはいつもハレのちグゥ」の順番ですね。
──なるほど。それでは「幽☆遊☆白書」からお願いします。POPには飛影の「邪王炎殺黒龍波」を真似して怒られたと書かれていましたが、これは実体験ですか?
本当です。トイレットペーパーをぐるぐる巻きにしたらけっこうな量で、親に「何やってんの、もったいないでしょ!」って。しかもトイレに流そうとしたら詰まっちゃって、余計に怒られるという。力を得るには代償が必要ということで……。
──(笑)。やっぱり好きなキャラクターは飛影ですか?
男キャラクターだったらそうですね。あと、戸愚呂弟も大好きです。やっぱりあの100%のときの姿がカッコよすぎて。肩にマフラーみたいな管がついていて、会場にいる生物からエネルギーを吸い取るみたいな。でも、同じくらいに戸愚呂弟の回想エピソードに出てくる幻海の若い頃がとにかく好きでした。
──わかります。
めちゃくちゃかわいいですよね! 「変身っていいな……」と変な属性に目覚めました。おばあちゃんが若返るっていう(笑)。幻海の若い頃のカードダス……死々若丸に霊光鏡反衝でカウンターぶつけているシーンのカードを肌身離さず持ち歩くくらい大好きでした。この頃から好きなものに執着する癖が存在していましたね(笑)。
──次は「ケロケロちゃいむ」ですが、連載誌がりぼん(集英社)と少女マンガなのでちょっと意外でした。
ハマったきっかけはアニメだったんです。アニメを観ていたらミモリちゃんがかわいくて好きになって。それでりぼんで連載していることがわかったんですけど、子供だからりぼんを買うのがちょっと恥ずかしくて、何かきっかけがないと買いに行けない(笑)。
──そういうお年頃ですよね。
そこで妹に「買ってあげるから一緒に読もうよ」と誘って雑誌を買いに行って、さらに単行本も買って……みたいな感じでどっぷりとハマりましたね。
──江口さんがミモリに惹かれたポイントは?
やっぱり等身大の同じくらいの女の子(設定は14歳)だったから、ですかね。水をかぶるとカエルになっちゃう魔法をかけられた人間のアオイを元に戻す旅に出たものの、ミモリって脳天気なところがあるから行く先々で首をツッコんでトラブルを起こしちゃうんです。でも、かえる族のお姫様という大きなものを背負っているし、実はしっかりした一面もあって。たまに大人っぽい顔を見せるときがあって、そういうふとした仕草にドキっとしたんだと思います。
──ちょうど異性への意識が芽生えている時期でもありますよね。
そういう意識が変わる時期かもしれませんね。小学2~3年生の頃から同級生に気になる子がいたりして……。でも、圧倒的に好きになるのは3次元じゃなくて2次元でした。「マンガのほうがかわいい!」って、オタク気質なところもあったんだと思います(笑)。
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