「魔法使いの嫁」|ヤマザキコレ×種﨑敦美(羽鳥チセ役)×竹内良太(エリアス役) 鼎談 1人ひとりが感じる「魔法使いの嫁」

みんな悪くてみんないい

──テレビアニメ放送開始前の2017年9月にインタビューを行った際(参照:アニメ「魔法使いの嫁」種﨑敦美×竹内良太インタビュー)、種﨑さんは8巻の展開に衝撃を受けていた様子でした。

種﨑 もう、思わず単行本投げちゃいましたもん。「わっ!」って。

竹内 あはは(笑)。投げたらあかんよ。

──アニメでも8巻のエピソードを演じられることになりましたが、どんな気持ちでアフレコに臨んだのでしょう。

種﨑 そのときが訪れてから考えようと思ってました。「この瞬間がいつか来るのかあ……一旦置いておこう」みたいな(笑)。これも家で練習していても全然うまくいかなかったんです。あのエピソードについては、一番竹内さんと話し合ったかもしれないです。「ここってこういうことですよね?」っていう話を。

チセを助けるために、ステラを身代わりにしようとするエリアス。

竹内 確かに。一番確認したシーンだと思います。

──竹内さんは前回のインタビューのときは、まだ8巻を読まれる前でしたよね。

竹内 そうですね。そのあとすぐに読んだんですけど、いつも面白いマンガってすぐに読み返したくなるはずなんですが、8巻に関しては全部読んだあと……投げはしなかったですけど(笑)、ちょっと距離を置いてしまう感じがありました。

種﨑 わかります。

竹内 でも、あくまでチセの視点で読むと投げ出したくなってくるんですけど、勇気を出してエリアスの視点で読み返してみるとわからんでもないかなって思ったんです。チセを助けるために、エリアスだったらそう考えるだろうと思ったし、エリアスはステラに対して嫉妬のような感情を抱いていて、じゃあ彼女を犠牲にしてもいいだろうと考える気持ちもわからなくはなかったので、視点を変えると読めると思いました。

種﨑 私も見えないところに(単行本を)隠してたんですけど、アフレコの前に恐る恐る読み返したら落ち着いて読めました。

「魔法使いの嫁」8巻に収録されている40話より。

竹内 チセの表情もグッとくるんですよね。エリアスに対しての怒りでわなわなしてるところとか。ただこういう表情を今まで見てこなかった分、そっと閉じちゃいましたよね。

──ヤマザキさん自身も、Twitterで「この40話のために1話から今まで書いてきたような気さえします」とおっしゃってましたよね(参照:ヤマザキコレ (@ezoyamazaki00) | Twitter)。

ヤマザキ そうですね。それに近いものがありました。この2人は絶対円満には終わらないだろうと思っていたので。あのシーンは単行本2、3巻くらいのときから描く予定だったんです。チセとエリアスは別々の存在で、ケンカしないこともできるけど、この2人はしたほうがいいなと思っていて。したうえで、考え方がまったく別のものなんだということをハッキリ理解させてから、それでも一緒にいたいという関係が描きたかったんです。あのやりとりがあったことで、チセはチセで、エリアスは自分と考え方が違う生き物なんだって心の底から理解したと思うし、エリアスもエリアスでチセとわかり合えない部分が絶対にあると理解した。でも生き物同士、お互いに100パーセントわかり合う必要はないし、そもそもわかり合えないし。普通の人間だって他人のことを100パーセント理解することは土台無理な話ですよね。でもそのデメリットがあっても一緒にいたいって思える関係が素敵だなって思ったんです。

種﨑 素敵です。

ヤマザキ あと、8巻と9巻の表紙はぜひ注目して見てほしいです。8巻は、ちょっとタイトルロゴで隠れてしまってるんですけど、チセがエリアスにペンダントを返してる絵なんです。9巻は、1巻の表紙では温室でアフタヌーンティーをしていた2人がそこから出ようとしている姿で。温室に残っているエリアスに手を伸ばすチセっていう構図にしてるんです。1巻では暖かいところに一緒にいた2人だけど、9巻ではチセがエリアスに手を伸ばして明るいほうに連れ出そうとしている。その手にペンダントはないんです。

「魔法使いの嫁」1巻 「魔法使いの嫁」8巻 「魔法使いの嫁」9巻

竹内 グッときますね。

ヤマザキ きっと1巻のときは、エリアスってなんかカッコいいなって思ってくれていた読者の方も多いと思うんですけど、9巻になると「エリアスは仕方ないな」っていう感じになると思うんですよ(笑)。でもエリアスみたいな部分って誰しも持ってると思うんですよね。私は“みんな悪くてみんないい”みたいな物語が描きたいんです。誰も悪くないわけじゃなくて、みんな悪いところがあって、いいところがある。カルタフィルスもそんな存在です。

「まほよめ」をきっかけにファンタジーを好きになってもらえたら

──ヤマザキさんはキャストの皆さんと何かお話されたんですか?

竹内 今日は「灰ノ目ってどういう人物なんですか?」っていう質問に答えられてましたよね。

ヤマザキ そうですね、灰ノ目の成り立ちとかをお話しました。いろんな人に細かい設定がもりもりあるんですよ。レンフレッドはお父さんとおじいちゃんの名前まで決まっていて。レンフレッドはロシア系の人なんですが、ロシアの人の名前ってお父さんとおじいちゃんの名前が関わってくるんですよ。

種﨑竹内 へええ!

アニメ「魔法使いの嫁」より、レンフレッドとアリスの出会いのシーン。

──そういった細かい設定はいつか活かそうと思って考えてるんですか?

ヤマザキ 「ここがこうなってるってことは、もしかしてこいつはこういう過去があるんじゃ……?」ってあとから考えるパターンもありますし、のちのち伏線にするためにこうしておこうっていうときもあります。結果的に出さなくてもいいやって思う場合でも、伏線だけ張っておこうってこともありますね。あとから読者さんが読んだときに気づいてくれたら面白いじゃないですか。「あっ! こんなところでこんな伏線張ってたんだ!」って。それがあまりにも楽しいので(笑)。

──確かに細かいところまで設定が練り込まれていると、そのキャラクターにリアリティを感じます。

ヤマザキ そうですね。小物1つもその人のセンスにも関わりますしね。何回読んでも気づきがあるマンガを描けたらいいなと思っています。

種﨑 「しっかり読もうとすると1冊1カ月以上かかる」って、超「まほよめ」好きの方が言ってました。

ヤマザキ うれしい。呪文とかも、知ってる人が見たらわかるようになってるんです。何に問いかけてるのか、とか。そういう神話とか魔法についての知識がある人にはわかるようなものになっていると思います。

アニメ「魔法使いの嫁」よりチセ。

──「まほよめ」を読んでファンタジーを好きになって、神話を調べてもう一度読み返したらもっと楽しめる部分が多そうです。

ヤマザキ それこそ望む形ですね。私もマンガや小説を読んでファンタジーの深みにハマったので、そのきっかけに「まほよめ」が入ってくれるんだったらうれしい。それだけでも描いた甲斐があるなって思います。

──それでは最後に、いよいよ放送される最終回に向けて、ファンの皆さんへメッセージをいただけますか。

竹内 最終話のアフレコ終わりたてほやほやの竹内です。始まりがあれば終わりがあるということで、おそらくファンの皆様も寂しい気持ちやいろんな感情が渦巻く中で最終話を迎えると思うんですが、僕としては「魔法使いの嫁」というタイトル通りといいますか、心温まる形で最終回を迎えることができたのではないかなと思います。アニメは終わりますが、チセとエリアスの生活や物語はこれからも続いていくと思いますので、どうかひとつの区切りとして見守ってください。観たあとも余韻に浸っていただきながら、これからも応援していただけますとうれしいです。

アニメ「魔法使いの嫁」よりエリアスとチセ。

種﨑 最終話のアフレコ終わりたてほやほやの種﨑です。久しぶりに先生とこれだけたくさんお話をさせていただいて、改めてどこまでも世界が広い作品なんだなと感じました。アニメではその広い世界のうちの、もしかしたらきっと一部かもしれないんですが、大切に表現されていると思います。チセというキャラクターをこれだけ長い間演じさせていただいて、本当に……光栄って言葉だけじゃ足りないくらい光栄でした。アニメのスタッフ、キャストみんなが「魔法使いの嫁」のことが大好きで、最後まで大事に作られていると最終回のアフレコでも感じました。それをきっとアニメでも感じられると思います。最終回、ぜひ見届けて下さい。

ヤマザキ 最終話のアフレコ見学したてほやほやのヤマザキです(笑)。言ってしまえば人気がなかったら単行本の1巻、2巻で打ち切られる世界の中で、いろんな人が読んでくれて、それがドラマCDやアニメになるなんて奇跡みたいなもので。本当にありがたいことだなと思います。私は微々たる力しかお貸ししていませんが、種﨑さん、竹内さん並びにさまざまな声優の方々、アニメ制作現場の方々ががんばってくれたおかげで、原作を丁寧に描いたアニメにしてくださいました。できたらまたみんなで一緒にお仕事できたらいいなと思いながら、この奇跡に感謝したいです。

竹内種﨑 そうですね。

ヤマザキ 24話も素晴らしい出来になっていると思いますので、最後までよろしくお願い致します。

ヤマザキコレのペン入れの様子を公開

この日はペン先やインク、トレース台など、原稿執筆のための道具をアフレコ現場に持参してもらい、アニメ「魔法使いの嫁」Blu-ray第2巻に特典として収録される「『断片集 魔法使いの嫁』第2片」の原稿にペン入れを行う様子を特別に見せてもらった。また使っている道具や好きな作業、“これからの課題“についても聞いた。

Q.どんな道具を使っているんですか?

ペン先にもいろいろあるんですが、私は最終的にタチカワに落ち着きました。インクは乾きが早いので墨汁を使ってます。しかも墨汁は安い! 安くてたくさん入ってるので重宝してます。メーカーは呉竹がオススメです。

ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレがペン入れの際に使用している画材の一部。この日はアフレコスタジオに置いてあった使い捨てカップに墨汁を入れてペン入れを行っていた。
Q.作画はアナログで行っているんですか?

下絵とトーンはパソコンで、ペン入れだけアナログです。ペン入れはアナログのほうが早いんです。なんでかと言うと、Ctrl+Z(前に戻る機能)がないから。Ctrl+Zがあると、永遠にいい線を探し続ける作業になってしまうので甘えてしまいます。本当はベタもパソコンで塗っちゃったほうが早いんですけど、アナログで塗るのが楽しいんですよね。

ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレによるペン入れの様子。
Q.好きな作業はなんですか?

ペン入れが一番楽しいです。下描きは嫌い(笑)。なんで2回も同じ絵を描かなければいけないんだって……(笑)。だから最近はネームの段階でなるべく詰めておこうって最近は思ってます。編集さんもそのほうが楽ですしね。

ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレによるペン入れの様子。 ヤマザキコレによるペン入れの様子。

ヤマザキコレからメッセージ

絵をこれからやろうと思っている人は、自分の好きなものを描いたほうがいいと思います。嫌なものをいやいや描いてもまったくうまくはならないので。私のこれからの課題は“筋肉”なので筋肉を好きにならなければと思ってます。筋肉キャラが描きたい! そうするとキャラクターの幅が広がりますしね。とにかくいろんなキャラクターが描けるようになりたいんです。なので最近は海外の俳優さんを参考にしたりしてます。

ヤマザキコレがペン入れを行った原稿。 ヤマザキコレがペン入れを行った原稿。
テレビアニメ「魔法使いの嫁」
最終話先行放送
  • TOKYO MX:2018年3月23日(金)19:30~
  • AT-X:2018年3月23日(金) 23:00~
最終話先行配信
  • AbemaTV:2018年3月23日(金)19:30~
    ※AbemaTVでは最終話の先行配信にあわせ、キャスト出演による最終回特別番組を放送。
最終話放送情報
  • TOKYO MX:2018年3月24日(土)25:30~
  • MBS:2018年3月24日(土)27:38~
  • AT-X:2018年3月25日(日)21:00~
  • テレビ愛知:2018年3月26日(月)26:05~
  • テレ玉:2018年3月28日(水)23:00~
  • チバテレ:2018年3月28日(水)23:00~
  • 北海道放送:2018年3月28日(水)26:26~
  • BS11:2018年3月28日(水)25:00~
  • ※放送日時は変更になる可能性がある。
最終話配信情報
  • AbemaTV:2018年3月25日(日)23:00~
  • Amazonプライムビデオ:2018年3月26日(月)24:00~
  • FOD:2018年3月26日(月)24:00~
  • dアニメストア:2018年3月27日(火)12:00~
  • バンダイチャンネル:2018年3月27日(火)12:00~
  • アニメイトチャンネル:2018年3月27日(火)12:00~
  • TSUTAYATV:2018年3月27日(火)12:00~
  • HAPPY!動画:2018年3月27日(火)12:00~
  • U-NEXT:2018年3月27日(火)12:00~
  • アニメ放題:2018年3月27日(火)12:00~
  • auビデオパス:2018年3月27日(火)24:00~
  • J:COMオンデマンド:2018年3月27日(火)24:00~
  • GYAO!:2018年3月29日(木)24:00~
  • ニコニコ生放送:2018年3月29日(木)24:00~
  • ニコニコチャンネル:2018年3月29日(木)24:30~
  • ほか
スタッフ
原作:ヤマザキコレ(マッグガーデン刊)
シリーズ構成・監督:長沼範裕
脚本:高羽彩
キャラクターデザイン:加藤寛崇
音楽:松本淳一
音楽制作:フライングドッグ
アニメーション制作:WIT STUDIO
キャスト
羽鳥チセ:種﨑敦美
エリアス:竹内良太
ルツ:内山昂輝
シルキー:遠藤綾
アンジェリカ:甲斐田裕子
サイモン:森川智之
セス:諏訪部順一
リンデル:浪川大輔
ミハイル・レンフレッド:日野聡
アリス:田村睦心
ティターニア:大原さやか
オベロン:山口勝平
カルタフィルス:村瀬歩
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2018年7月25日発売 / 松竹

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ヤマザキコレ
北海道生まれ。2013年に月刊コミックブレイド(マッグガーデン)にて「魔法使いの嫁」の連載をスタート。現在はマンガ配信サービス・マンガドアと月刊コミックガーデン(マッグガーデン)にて「魔法使いの嫁」を連載中。
種﨑敦美(タネザキアツミ)
大分県出身、9月27日生まれ。主な出演作に「すべてがFになる THE PERFECT INSIDER」(西之園萌絵役)、「残響のテロル」(三島リサ役)、「宝石の国」(ネプチュナイト役)など。
竹内良太(タケウチリョウタ)
兵庫県出身、9月22日生まれ。主な出演作に「ハイキュー!!」シリーズ(牛島若利)、「ナースウィッチ小麦ちゃんR」(ねこP役)、「暗殺教室」(シロ役)など。