コミックナタリー Power Push - 「魔法使いの嫁」
プロデューサー・和田丈嗣(WIT STUDIO)インタビュー
アニメ化プロジェクト始動! ヤマザキコレの思いが詰まった“みんなで育てていく物語”
月刊コミックガーデン(マッグガーデン)にて連載中のヤマザキコレ「魔法使いの嫁」は、人外の魔法使い・エリアスと、彼に買われた少女・チセを描くファンタジー。単行本5巻の初回限定版には、ヤマザキが原案を務めたドラマCDが同梱されている。
5巻発売に合わせて同作の前日譚を描く、アニメ「魔法使いの嫁 星待つひと」の制作も発表となった。アニメは「前・中・後篇」の3編にて展開され、それぞれ単行本6・7・8巻の特装版にDVDが封入される。コミックナタリーではアニメーション制作を手がけるWIT STUDIOの社長であり、プロデューサーとして制作にあたる、和田丈嗣にインタビューを実施。ドラマCDの制作から携わっているという和田に、今回のプロジェクトについて話を聞いた。
取材 / 坂本恵 文・撮影 / 熊瀬哲子
絶対実現させてやる!
──ドラマCDに続きOADとしてアニメ化が発表されましたが、制作が決定した経緯を教えていただけますか。
僕がProduction I.Gの石川(光久)社長に申し出たことが始まりです。「WITで『魔法使いの嫁』をやりたいんです」と筆ペンで手紙にしたためて、それをお渡しして。僕は大事な話をするときには、メールで埋もれてしまうのが嫌なので、いつも手紙を書くことにしているんです(笑)。
──その1枚の手紙からプロジェクトが始まったんですね。和田さんはもともと「魔法使いの嫁」に注目されていたんですか?
マッグガーデンがグループ会社ということもあって、本屋に寄ったときにはいつもマッグガーデンの棚を全部チェックしているんですけど、ある日、とても引き込まれる表紙を見かけて「面白そうだな」と思ったのが「魔法使いの嫁」との出会いでした。そこから興味を持って、担当の方に「『魔法使いの嫁』って評判はどうなんですか?」とメールで聞いてみたら、「発売からずっと途切れずに版を重ねている作品なんです。このままいくと、マッグガーデン創設以来の売れ行きになりそうです」とおっしゃっていて……。
──そこまでのヒットだったんですね!
そうなんですよ。で、そのメールの最後に「いつかWITでアニメ化できるといいですね(笑)」って冗談交じりに書いてあって。それを読んで「絶対実現させてやる!」って熱くなりました(笑)。
みんなで育てていきましょう
──和田さんがそれほどまでにこの作品に惹きつけられた理由はなんだったんでしょうか。
いわゆる“ジャケ買い”のような出会いだったので、きっかけは絵がすごく魅力的だったこと。表紙の絵を見て、物語の世界観がしっかりとした作品なんだろうなと感じたんです。実際に中を読んでみたら想像通りでした。1巻の冒頭、「その世界は私たちのそばに息づいている」という、このシーンに衝撃を受けて。「この作品を映像化したい!」と思ったんです。
──初めから「映像化したい」という思いがあったんですね。
仕事柄もあって、マンガを読むときはアニメ化しやすいかどうかを意識することが多いんです。「アニメ化しやすそうだな」と思う作品っていうのは、色とか音、匂いとかを感じとれるかどうか。僕は「魔法使いの嫁」を読んだときに、作品に色がついて動いているところが頭の中でバッと想像できたんです。「映像になったらこうなる!」と。そう思えるということは、アニメにしがいがあるものだと思っていて。この作品を読んでいたらどんどんイメージが膨らんでいったんです。
──そこからすぐにアニメの制作に入らず、まずはドラマCDから始めたのには理由があったのでしょうか?
「魔法使いの嫁」は口コミで人気が広がっていって、ファンが大事に育てている作品と担当編集の方もおっしゃっていました。ですのでアニメ化も性急に進めるのではなく「みんなで育てていきましょう」という話をしていたんです。まず、そもそもテレビアニメにできるほど、コミックスの巻数が貯まっていない状況でもありました。そこから「じゃあまずはドラマCDを作りましょう」という話になり。そして作品世界全体を表すPVを作って、さらにOADを作って……という段階を踏んだ形でプロジェクトを進めようと決めました。
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- ヤマザキコレ「魔法使いの嫁(5)」 / 2016年3月10日発売 / マッグガーデン
- ヤマザキコレ「魔法使いの嫁(5)」
- ドラマCD付初回限定版 / 2000円
- 通常版 / 617円
ドラマCDキャスト
羽鳥チセ:種﨑敦美
エリアス:竹内良太
ルツ:内山昂輝
シルキー:遠藤綾
サイモン:森川智之
チセの母:井上喜久子
妖精:Lynn
妖精:重松千晴
妖精:河野茉莉
「魔法使いの嫁」あらすじ
羽鳥チセ15歳。
身寄りも、生きる希望も、術も、何一つ持たぬ彼女を金で買ったのは、悠久の時と寄添うヒト為らざる魔法使いだった──。
彼に「弟子」として、そして「花嫁」として招き入れられた時、少女の中で停まっていた針がゆっくりと動き始めてゆく……。
和田丈嗣(ワダジョウジ)
1978年生まれ。Production I.Gに入社後、「RD 潜脳調査」「ギルティクラウン」「PSYCHO-PASS サイコパス」などのヒット作を手がけ、2012年にWIT STUDIOを設立。2013年には「進撃の巨人」をプロデュース。同作は社会現象とも言える大ヒットとなった。
ヤマザキコレ
北海道生まれ。2013年、月刊コミックブレイド(マッグガーデン)で「魔法使いの嫁」の連載をスタートし、現在はオンライン雑誌・MAGCOMI(マグコミ)と、月刊コミックガーデン(マッグガーデン)にて同時連載中。
2016年3月10日更新