コミックナタリー Power Push - 週刊少年マガジン編集部×ラブコメ

マンガ大好きアナウンサー・よっぴーこと吉田尚記と“次に来る少年ラブコメ”を探せ

「恋と嘘」編

この作品のヒロインはこちら

高崎美咲、真田莉々奈。
高崎美咲(タカサキミサキ)

高嶺の花と称される16歳の美少女。主人公の根島由佳吏に告白され思いを受け入れた直後、政府によって結婚相手が指名される“政府通知”が由佳吏に届き、思いを封印する。しかしどんどん好きになっていく恋心を止められず、由佳吏の“政府通知”の相手である莉々奈とも友情を築き……。

真田莉々奈(サナダリリナ)

国家が国民の遺伝子情報から最良の組み合わせで結婚相手を決める政策である超・少子化対策基本法により、由佳吏の相手に選ばれた16歳の少女。女子独特の空気になじめず、「サナダムシ」と揶揄されるも学年トップの成績をとって見返す努力家な面も。恋への憧れから由佳吏と高崎の仲を応援しているが、最近は戸惑いも生まれた。

──ではラブコメ特集の最後を飾る「恋と嘘」はどう読みましたか? 結婚相手を国が決める日本を舞台にした恋愛が描かれています。

主人公の根島は高崎と両思いになった瞬間、政府通知によってパートナーを決められた。

「DEATH NOTE」(大場つぐみ原作、小畑健作画)や「イキガミ」(間瀬元朗)系の作品だと思いました。

──どういうことですか?

ラブコメって、読者は基本的に他人事として読むと思うんです。「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というチャップリンの名言があるんですけど、ラブコメってまさにそう。登場人物たちは大マジなんですけど、読者は端から見てるから面白いんです。でも「恋と嘘」はそうじゃない。ラブコメがロングショット、つまり他人事だとすると、「恋と嘘」は「もし自分に政府通知が来たらどうなるんだろう」って考えるタイプのマンガです。クローズアップしちゃうんです。

──なるほど。「DEATH NOTE」は「もし自分がデスノートを拾ったら」、「イキガミ」は「もし自分に死亡予告の逝紙が届いたら」と考えてしまう作品ですね。

高崎は根島の政府通知の相手として選ばれていないことに涙を流す。

そうです。荒唐無稽なひとつの設定を、大真面目にシミュレーションしていく作品なんです。そもそも「恋と嘘」は、ラブはありますがコメディかって問われると、違うかもなって。

──かわいらしいタッチと爽やかな読後感に隠れていますが、政府が恋愛まで管理するという設定は確かに重いですね。

しかも恋愛を国家が管理するって、なくはなさそうじゃないですか。政府通知を無視すると、その後の就職しやすさにも関係してくるというところにも変にリアリティがあったり。自分が当事者だったら、世の中がこうなったらどうしようと考えることは、マンガを読む醍醐味のひとつだと思うんです。「恋と嘘」はそれが味わえます。

政府が一番エロい

──「恋と嘘」の主要人物は、政府通知によって結婚相手が決められてしまった少年・由佳吏(ゆかり)、由佳吏が憧れる高崎さん、由佳吏の政府通知の相手である莉々奈の3人です。吉田さんは、高崎さんと莉々奈だったらどちらを選びますか?

吉田尚記が「一番いい!」と語った厚生労働省の一条。

僕は厚生労働省のお姉さんが一番いいです!

──大人の男性の意見ですね(笑)。

「恋と嘘」は政府が一番エロいっていうのがポイントですよ。政府通知でカップリングされた2人にセックス講習してAV鑑賞会って! バカか!

──あはは(笑)。

しかも講習の後に「2人きりの部屋を用意しております」ってバカじゃないの!? もっとやれ!

──そもそも政府通知は科学的な手法で選ばれた相性のいい2人を結婚させ、出生率を上げることが目的ですからね。

由佳吏が恋した高崎さんも、由佳吏が通知された相手の莉々奈も両方かわいい。さっきは厚労省のお姉さんと言いましたが、この2人だったら高崎さんかなあ。

──どこに惹かれますか?

高崎さんのほうが腹をくくっていて、莉々奈よりちょっと大人な気がしますね。あと高崎さんって、主人公との距離感がコロコロ変わるんですよ。簡単にキスしたり、冷たくしたり。距離感が一定じゃないので、付き合うとなるとスリリングでしょうね。それに「ロミオとジュリエット」の演劇をしたシーンでの男装もいい。男装って女ウケがよさそうと思われがちですが、男子の読者側のニーズもあると思うんですよ。そもそも昨今のラブコメは、男女の入れ替わりが頻出なんです。

──確かに「寄宿学校のジュリエット」のペルシアも男装していますね。

でしょう? 映画だと「君の名は。」は男女の体自体が入れ替わる。あとモテる女子スキルを持っている男子が出てくることが多いんです。料理男子とか……あ、「星野」の小早川もメイクができる男子ですね。

──一般的に言われる、男女の役割や特技がシームレスなのが最近のラブコメの特徴ということでしょうか。

“恋愛”に憧れる莉々奈は根島と高崎の恋を応援しつつも、複雑な感情を抱く。

マンガは普通に起こることを描いていても面白くないし、かといってあまりにも荒唐無稽だと信じられない。男装や女装をするとちょっとした特別感というか、倒錯感が得られるんじゃないかと思います。

──そうかもしれません。

「恋と嘘」の世界は超少子高齢化が進んで「超・少子化対策基本法」が成立してる、という突飛な設定ながら、今の時代を斬ってる恋愛マンガなんです。しかもロングショットタイプのラブコメじゃなく、クローズアップ系の恋愛マンガって今まであまりなかったので、ぜひ我がこととして読んでほしいですね。

思い出のラブコメは「危険がウォーキング」

──4作品、どれも高評価でしたね。

どれもすっごく面白かったですねー!

──そもそも吉田さんは、普段からラブコメを読まれるんですか?

「ラブコメを読もう」と意識したことはあんまりないですね。面白いなって思った作品を分類したらラブコメだった、ということが多いです。

──思い出のラブコメはなんですか?

吉田尚記

圧倒的に星里もちる先生の「危険がウォーキング」です! (ヒロインの)佳枝みたいに気風がいい女の子は素晴らしい!

──私が女だからかもしれませんが、吉田さんと見ている部分が全然違います。

僕、結構普通だと思うんですけど……どこを見ているんですか?

──例えば「寄宿学校のジュリエット」だったら、露壬雄のカッコよさです。

あ、そこには全然目がいかないですね! たぶん多くの男はそこをまるっきり見てない(笑)。今の話で思い出しましたが、女子は少年ラブコメを読むとモテると思います。

──え、なぜでしょうか?

男子側のニーズがそこにあるからです。逆に僕は、西村しのぶさんの作品を読んでなかったら絶対結婚できてないんですよ。男3人兄弟で、男子校で育って、基本的に女子が何を考えているのか……。

──わからない?

女子が考えていることに思い至らない自分にすら気付かない(笑)。西村しのぶさんの「サード・ガール」を読んだとき、どうしたらこんなストーリーの運びになるのか全然わからなくて。このまんまだと自分は少女マンガの世界にちょいキャラとしてすら登場し得ないことに気付いた。マンガで描かれている、女性の恋愛市場に自分が存在しない以上、実際の女の子と付き合うとかありえないと。女性のニーズを知りたい男子はKiss(講談社)とかおすすめですよ。今だと「逃げるは恥だが役に立つ」(海野つなみ)とか男子は読んでおくべきだと思う。逆に考えると、男性のニーズを知りたければ少年ラブコメを読んだほうがいいです。

金田陽介「寄宿学校のジュリエット」発売中 / 講談社
「寄宿学校のジュリエット」3巻
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3巻 Kindle版 / 432円
1巻 / 463円
1巻 Kindle版 / 432円

寄宿学校、ダリア学園。敵対する2つの国の生徒が通う、この名門校に、許されぬ恋に悩む学生がいた。東和国寮の1年生リーダー“犬塚露壬雄”。彼の想い人は、宿敵・ウエスト公国寮の1年生リーダー“ジュリエット・ペルシア”。すべては、犬塚の命がけの告白からはじまった!! 絶対にバレちゃいけない恋物語! 別冊少年マガジン(講談社)で連載中。

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「君が好き」って言えない君へ。もどかしくて恥ずかしくて照れくさい思いがたっぷり詰まった、Webで大人気の学園ラブコメディ4コマが待望の単行本化!! その思い、きっと伝わる気がしてくる!! 週刊少年マガジン(講談社)で連載中。

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3巻 / 2016年11月17日発売/ 463円
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1巻 Kindle版 / 432円

俺は、彼女に、メイクをすることになった──。小早川はクラスの日陰者。休み時間は寝たフリ……。クラスメイトには名前も憶えられてない……。だが、ある夕暮れ、小早川はクラスの人気者・星野海咲の誰も知らない素顔を知ってしまう! そして、その日その時こそ、小早川の、星野の秘密を守る波乱の日々の幕開けだった! 秘密を抱えた少女×退屈に生きる少年──2人が紡ぐ“日常革命系ボーイ・ミーツ・ガール”!! 週刊少年マガジン(講談社)で連載中。

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「誰かを好きになる」──人はいつの間にその罠に墜ちるのか。人生のパートナーを国が決める世界。それは希望であり、絶望であった。どこにでもいる古墳好きの少年・根島由佳吏は、そのちっぽけな胸に、燃えるような恋心を秘めていた。恋が許されない世界で、16歳の夜、少年は、禁じられた冒険へ走り出す!! マンガボックスで連載中。

吉田尚記(ヨシダヒサノリ)
吉田尚記

1975年12月12日東京都生まれ。慶應義塾大学卒業後、1999年ニッポン放送入社。入社以来、「オールナイトニッポン」などニッポン放送のヤングタイム番組を中心に担当。2011年度「第49回ギャラクシー賞」において「DJパーソナリティ賞」を受賞。現在は毎週月曜日から木曜日深夜24時から放送中のワイド番組「ミューコミ+プラス」を担当中。マンガ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど多彩なジャンルに精通。愛称はよっぴー。

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月~金 17:30~20:50

仕事帰りのひとときに“オトナを楽しむ”個性的なパーソナリティが、仕事・遊び・趣味など幅広い話題を繰り広げるオトナによるオトナのラジオ番組。月曜から木曜までは松本秀夫と渡辺一宏が、金曜日は吉田尚記と里崎智也がパーソナリティを務めている。