コミックナタリー Power Push - 「都会のトム&ソーヤ」
はやみねかおるが書く「マチトム」 フクシマハルカが描く「マチトム」
なかよし(講談社)やベツコミ(小学館)で作品を執筆し、少女たちに夢を与えてきたフクシマハルカが、自身のキャリア初となる少年誌で、「夢だった」と語る小説のコミカライズに挑んでいる。題材として選ばれたのは、はやみねかおるの「都会のトム&ソーヤ」。2003年の第1作刊行以来、10年以上にわたり児童文学界で人気を博すシリーズだ。
単行本1巻の発売を記念し、コミックナタリーでははやみねとフクシマの対談を実施。お互いファンだとリスペクトし合う2人に「マチトム」ワールドについて語り明かしてもらった。
取材・文 / 木村早苗 撮影 / 三木美波
- 都会のトム&ソーヤ 登場人物
竜王創也
竜王グループの御曹司で、頭脳明晰な中学生。究極のゲームを作ることが夢。
内藤内人
塾通いに追われる、平凡な中学生。おばあちゃんから受け継いだサバイバル能力でピンチを切り抜ける。
堀越美晴
内人と創也の同級生。
小説の不満は、マンガで解消される(はやみね)
──「都市のトム&ソーヤ」(以下「マチトム」)のコミカライズはマガジンエッジの目玉のひとつと伺っています。コミカライズのお話を聞かれたときはいかがでしたか。
はやみね うれしかったですね。僕は文章が下手で、いつも「目に浮かぶような場面や情景が描けるといいのに」 という不満があるんです。でもマンガになればそれも解消されるなと。
フクシマ 私は「やった!」と思いましたね。マンガ家になってやりたいことのひとつに小説のコミカライズがあったので、本当にうれしかったです。
──小説のコミカライズをしたいというのは、何か理由が?
フクシマ 中学の頃からコバルト文庫やティーンズハートが大好きで。マンガ家になったら「小説をマンガにしてみたい!」と夢見ていたんです。はやみね先生の作品はティーンズ小説とは少し違いますが、私は児童小説も好きでして。コミカライズのお話がある前から「マチトム」も読んでいました。表紙が好きな作品を辿る中で、西炯子先生が表紙を描かれていた「マチトム」に出会い、それからの大ファンです。
はやみね うわー、ありがとうございます!
フクシマ でも難しいお話なので、私にコミカライズは到底無理だろうと思ってたんですけどね。
小学校の教師体験が創作のきっかけ(はやみね)
──この記事で作品に初めて触れる読者もいますので、はやみね先生から「マチトム」が生まれたきっかけをお話いただけますか。
はやみね 講談社がヤングアダルト向けのシリーズを立ち上げるということで、作品を依頼されたのがそもそもの始まりです。実はそのときは、作中で基地として登場した「砦」をテーマにした真面目な児童文学を書くつもりでした。でも主人公の内人と創也が勝手に動き回ったせいで全然違う話になっちゃったんですよね(苦笑)。
──タイトルにありますが、「トム・ソーヤーの冒険」からの影響などは?
はやみね もちろんみんなと同じように憧れたし、好きでしたよ。私はもともと小学校の教師だったんですが、「トム・ソーヤーの冒険」からというよりは、小学校の先生として子供たちと接するようになり、「どこでも冒険はできるんだ」と感じた影響が大きいです。「あいつら毎日冒険しとるなあ、ミシシッピ川がなくても冒険はできるんやな」と。なので、この話からは日常の中で冒険する楽しさを感じてほしいと思っています。
フクシマ 男子2人が楽しくやっているのがいいですよね。私はすごく田舎で育ったから、サバイバル技術の知識を読みながら「うちと同じくらいの田舎かな」と思ったり、「秘密基地みたいな砦の感じがいいな」と思いながら読んでいます。内人と創也の成長をずっと見続けていたいですし、恋愛目線で誰とくっつけば面白いかなと勝手に予想したり。いろいろな面白さがある作品ですよね。執筆中は、どんなことを考えているんですか?
はやみね 読者に常にワクワクしてほしいと思っています。いつもこれは読んで面白いかなと考えて、つまらないと感じればその原稿は捨てます。高いお金を出して買ってもらうわけですから、値段に見合った楽しみを感じてほしいなと。
フクシマ 具体的な読者像は想定されますか?
はやみね いえ、まず自分の感覚です。自分が面白くなければ書きたくないし、逆に自分が楽しんで書けた作品は反響もいい場合が多いです。自分が読んで楽しく、書いて楽しいものにしたいですね。ただ、いい話が書けるときはやっぱり神様が何かをくれているんだと思います。後で読んで「これは誰が書いたの?」って思える文章は評価もいいことが多いですしね。
フクシマ なるほど。ストーリーが想定からかなり変わったというのも驚きですが、キャラクターもそうだったんですか?
はやみね 最初、創也は頭だけがすごくいい陰気な子で、学校で起こる謎をなんでも解決する名探偵ホームズ、内人はワトソンをアホにした感じのキャラに徹するはずでした。創也は生活臭がなくて日常も謎でミステリアスなカッコいいヤツになるはずだったのに、内人の活躍のせいで今やバカっぽくなっちゃってね(笑)。
フクシマ もうすぐ最新作が発表されますよね。ちなみに今は、ゴールまであとどれくらいのところに来ているんでしょうか。
はやみね うーん、まったくわからないです(笑)。今は内人と創也が最初から追いかけてきた「究極のゲーム」作りの話を執筆中ですが、それが終われば完結という感じでもなくてね。だから書いていいと言われる間は書かせてもらおうと思っています。
フクシマ いちファンとして、まだまだこれからも作品を楽しめると思うとうれしいです。
次のページ » 「らんま1/2」を目標に(フクシマ)
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ごく普通の中学生・内藤内人は、ふとした偶然から、同じクラスの天才御曹司・竜王創也の秘密を知ってしまう。 そしてその日から、思いもかけない、2人の冒険の日々が始まって……!? 累計150万部を超えるはやみねかおるの大人気シリーズを、少年誌初登場のフクシマハルカが全力コミカライズ! 最強(!?)凸凹中学生コンビの青春謎解きRRPG、待望のマンガ版スタート。
原作小説はこちら
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はやみねかおる
三重県出身。大学卒業後、小学校の教師となり、子供たちを夢中にさせる本を探すうちに、自ら物語を書き始める。「怪盗道化師」で第30回講談社児童文学新人賞佳作入選しデビュー。以降、発表される作品は子供も大人も夢中にさせている。代表作に「名探偵夢水清志郎」「怪盗クイーン」「都会のトム&ソーヤ」シリーズなど。
フクシマハルカ
岡山県出身。大学卒業後、1999年に「さくらんぼ☆キッス」(なかよし増刊なつやすみランド)でデビューし、「おとなにナッツ」「チェリージュース」などなかよしで作品を発表。その後デザートやベツコミ(小学館)にも活躍の場を広げ、マンガ版「都会のトム&ソーヤ」で少年誌にも初登場を果たす。