コミックナタリー Power Push - 安藤ゆき「町田くんの世界」川端志季「宇宙を駆けるよだか」
別マの異色2タイトルが「このマンガがすごい!」入賞! 次世代を担う2作家を直撃
「君に届け」「アオハライド」「俺物語!!」など数々のヒット作を輩出してきた少女マンガ誌・別冊マーガレット(集英社)。12月10日に発表された「このマンガがすごい!2016」オンナ編には同誌より、物静かなメガネ男子が主人公の安藤ゆき「町田くんの世界」が3位、正反対な容姿の女子高生の入れ替わりを描く川端志季「宇宙を駆けるよだか」が5位にランクインした。
別マの異色作とも言える2タイトルの入賞を祝しコミックナタリーでは、安藤と川端にそれぞれインタビューを実施。同誌の次世代を担う2人に、ランクインの報せを受けての感想から、作品の成り立ち、今後の展望までを聞いた。
取材・文 / 粟生こずえ(P1、2)、門倉紫麻(P3、4) 撮影 / 宮津友徳
「町田くんの世界」
人たらしなキャラクターを描きたい
──「町田くんの世界」ですが、「このマンガがすごい!2016」オンナ編3位にランクインしましたね。まずはその感想からお伺いできますか。
ありがとうございます。ホントにラッキーだと思ってます。私は自分が面白いと思うものを丁寧に描いてるつもりなんですけど……いかんせん地味な作品なので、審査員の方が票を投じるときに思い出してもらえたというのが意外でした。
──確かに主人公の町田くんは、物静かそうなメガネ男子というビジュアルで派手さはないですが、逆にインパクトは強いと思います。このキャラクターはどのように生まれたのでしょうか。
最初に思いついたキーワードは「人たらしな人」でした。老若男女に好かれるような人を描こう、素がカッコいい人にしようと。
──町田くんのカッコよさは、少女マンガの王道的なそれとはかなり違いますよね。
え、そうですか!?
──王道というと、たとえば勉強も運動もそつなくこなす優等生だったり、誰もがひと目惚れするイケメン、クールな俺様キャラなどが浮かぶと思うのですが。
町田くんがモテる要素として、顔がいいとかスポーツができるみたいな部分はあえてはずしたんです。どうせそれが理由なんでしょ、という気持ちを読者に抱かせてしまう気がして。行動や気持ちだけで人の心を動かすようなキャラクターにしたかったんです。
──すごく挑戦的というか独特ですよね。
確かによく「どの作品も独特だね」って言われるんですよ。ただ私としては何が独特なのか全然わからない(笑)。ただシンプルに、「面白くなればいいな」と思って描いているんです。
──町田くんでいえば、真面目なのに勉強はできない、かといって「真面目に見えてチャラい」みたいなギャップがあるわけでもない。読み手が想像する主人公像のステレオタイプを打ち破っている気がします。単にいい人というわけでもなく。
町田くんを描くとき間違わないように意識しているのは、彼は人が好きだけど、人に好かれたいと思って行動しているのではないということです。見返りを求めているわけじゃないから、奇抜な行動を取っているなと見られてしまうこともあるかもしれない。
──町田くんがどんな育ち方をして、現在の性格になったのかも興味が湧くところです。
それも考えてはいるんですけど、あまり設定を決めつけずに始めたので、まだ固まってないんです。
──弟妹が5人もいるところも関係しているのでしょうか。町田家にお父さんの姿が見えないのも気になるところですが。
お父さんは……鋭意制作中です(笑)。離婚しているとかそういうことではないですよ。
──ぼちぼち登場しそうですか?
最後まで出さないというわけにはいかないので、いずれは出すと思います。この町田くんのお父さんですからね……。どういう人だったら納得できるか考えながら、少しずつ作り上げているところです。
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物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用。なのに運動神経は見た目どおりの町田くん。そんな彼に弟が出来たり、告白する女の子が現れたり、初恋の人が現れたり……。人を愛し、人から愛される町田くんの第2巻です!
あゆみと距離を置くかつての恋人・水本、そしてそばに寄り添い続けてくれた火賀。そのふたりが「赤月の日」に入れ替わってしまい、困惑するあゆみだったが……。一方、美しい容姿も恋人も手にしたはずの然子は絶望を深めていき……。愛されるべきは、外見か、中身か。衝撃のクライマックス。
安藤ゆき(アンドウユキ)
2004年にデラックスマーガレット(集英社)にて、「星とハート」でデビュー。2009年に短編集「不思議なひと」を刊行する。2014年に上梓した短編集「透明人間の恋」が、「このマンガがすごい!2014」のオンナ編17位にランクイン。2015年にも短編集「昏倒少女」を発表する。同年より別冊マーガレット(集英社)にて、「町田くんの世界」を連載中。
川端志季(カワバタシキ)
別冊マーガレット2012年9月号(集英社)に付属の別冊ふろくbianca1 1/2にて「08:05の変顔さん」でデビュー。その後もコンスタントに読み切りを発表し、2014年に短編集「青に光芒」を発表。別冊マーガレット2014年10月号から2015年12月号まで「宇宙を駆けるよだか」を連載した。