コミックナタリー Power Push -征城悠馬「ロング・ディスタンス」

新條まゆ×SCREEN mode 話題の駅伝BL、“謎の作家”はまゆたんだった! 新たなスタートと、スクモとのコラボを語る

BL界に突如現れた新星・征城悠馬による「ロング・ディスタンス」は、駅伝をテーマにしたボーイズラブ。BL専門のWebマガジン・WEBLink(ホーム社)にて連載されており、新連載開始時には、とあるマンガ家と絵柄が酷似していると話題を集めた(参照:謎のBL作家・征城悠馬の新連載がWEBLinkで、高校駅伝がテーマ)。

コミックナタリーでは、この“謎の作家”征城悠馬と、「ロング・ディスタンス」のPVに楽曲を提供したバンド・SCREEN modeの座談会をセッティング。しかし、取材場所に現れたのは……。

取材・文 / 坂本恵 撮影 / 小坂茂雄

ここまでバレバレとは、ショックでした

──えーと、新條まゆさんですよね?

新條まゆ はい。新條です。

左から新條まゆ、勇-YOU-(Vo)、雅友(G)。

──連載開始時に、Twitterでは絵柄を見た方々が「謎の作家って、“何”條まゆだよ」とも話題にしていましたが、征城悠馬の正体は新條さんだったんですね。

新條 「わー、びっくり!(様式美)」って感じですよね。

──ええ(笑)。お付き合いいただきありがとうございます。では気を取り直して……Twitterでの反応を見られて、いかがでしたか?

新條 いや、ショックでしたね。まさかここまでバレバレだとは。私、本当に気付かれないと思っていたんです。「ちょっと絵柄似てるな」くらいに思われるだけかと思ってたんですけど、「どう見てもまゆたん」みたいに言われるとは……。自分では絵柄も変えているつもりだったんです。でも友達の作家さんから「Twitterで話題になってるよ」って言われて、「あ、そんなもんか」っていう。本当にショックでした……。

──最初は、新條さんであるということは隠し通していくつもりだったんですよね?

新條 はい。そうだったんですけど、こんなにバレバレなんだったらもう意味ないなと思って(笑)。

「ロング・ディスタンス」1巻の帯には、大きく「新條まゆ先生推薦」の文字が。

──「ロング・ディスタンス」1巻の帯にも「新條まゆ先生推薦」と大きく書かれています。ここにも様式美が見られますね。

新條 もうこの帯もセットで、こういう企画みたいですよね(笑)。でもこの帯文、褒めてはないんですよ!「駅伝にハマりました」と言っているだけなので。しかもこれは本当のことです。嘘じゃないですから。

勇-YOU-(Vo) あ、ホントだ! 自画自賛してるわけじゃないんですね。

新條 そうなんです! 褒めると、ちょっと痛い感じになっちゃいますから。

俺様がいない時点で、新條まゆは死んでる

──今作で名義を変えようとした理由を教えていただけますか?

「ロング・ディスタンス」より。

新條 単純に、新條まゆという名義はこれからあんまり使いたくないなと思っていたんです。「快感♥フレーズ」とかを知らない、私を知らない若い子にも、征城悠馬という作家から入ってほしいなと思って。例えば「ロング・ディスタンス」で私を知った子がいたとして、そこから過去の作品に遡って「ああ、こういう作品を描いてるんだ」というふうに見てほしくはなかった。ここから何か別のことをやっていきたいと思っていたので。

勇-YOU- 新たなスタートとして、勝負したかったということですか?

新條 そうですね。「ロング・ディスタンス」みたいに、しっとりした作品って描いたことがなかったから。

──BL作家さんって一般誌とBL誌とで名義を変えたりすることもあると思いますけど、そういう理由でもなかったんですね。「教師の純情 生徒の欲望」はBL作品ですが、新條まゆ名義で描かれていますし。

「純欲」を手に取り話す雅友。

新條 ええ、「純欲」はもう「THE 新條まゆ」って感じで描いているので。

雅友(G) (「純欲」を手に取って)これ、すごいっすよね。

新條 目の前で自分が描いたBL読まれるとか、なんの拷問ですか!(笑)えーと、なんの話でしたっけ?

──名義の話です(笑)。

新條 ああ、そうそう。「純欲」は強引な男の子が出てきて、エロスがあって、「THE 新條まゆ」なんです。でも「ロング・ディスタンス」は、いわゆる攻めの陵介が全然強引でもなくて。自分のことを「俺」じゃなくて「僕」っていうし。

勇-YOU- なるほど、一人称でも違いがあるんですね。

陵介の一人称は「俺」ではなく「僕」。

新條 いわゆる「俺様」じゃないんです。

勇-YOU- 読ませていただいて、確かに俺様的な要素はまったく感じなかったです。

新條 まったくないです。もう俺様がいない時点で、新條まゆは死んでるので。

──新條まゆ=俺様。

勇-YOU- それが新條さんの名前でやらなかったひとつの理由なんですね。

新條 はい。俺様が売りになってないんです。新條まゆというものを期待して読むと何もその要素がないので、違う名前でやりたいなということで征城悠馬という新しい名義でやらせていただきました。

征城悠馬「ロング・ディスタンス(1)」 / 2015年10月23日発売 / 648円 / ホーム社
<作者名>「作品名(n)」

「これ以上… 俺から何も 奪わないでくれ──……」

高校駅伝の全国大会・通称「都大路」で活躍し、大学駅伝界からの注目を集めている佐藤陽太と信堂陵介。複雑な家庭環境に置かれながらも、兄弟の世話をしながら練習に励む陽太。一方、地方の大病院の一人息子である陵介は、将来は医師になることを父親から義務付けられている。幼馴染でチームメイトでもある2人は、同じ大学に進み、憧れの「箱根駅伝」でたすきを繋ぐことを夢見ていた。しかし…2人を待ち受けるのは、非情な未来だった──。

新條まゆ(シンジョウマユ)
新條まゆ

1973年1月26日、長崎県生まれ。1994年、少女コミック増刊(小学館)にて「あなたの色に染まりたい」でデビュー。人気ロックバンドのボーカリストと普通の女子高生のラブロマンスを描いた「快感♥フレーズ」が1000万部を超える大ヒットとなり、海外13カ国でも翻訳出版される。作品に登場するロックバンド・Λuciferは、実在のミュージシャンでバンドを編成しデビューを果たした。その後、過激な性描写を交えて描く「覇王愛人」や「ラブセレブ」などヒット作を生み出し、デビュー14年目に小学館より独立。りぼん、マーガレット、ジャンプスクエア(すべて集英社)、月刊ASUKA、月刊ガンダムエース(ともに角川書店)、月刊ヤングマガジン(講談社)など、多くのマンガ誌で精力的に作品を発表する。現在は初のボーイズラブ作品に挑戦。「教師の純情 生徒の欲望」と、「ロング・ディスタンス」(征城悠馬名義)の2作品をWeb連載中。

SCREEN mode(スクリーンモード)
SCREEN mode

サウンドプロデューサー・雅友(太田雅友)と、洋画吹替やアニメ、ゲームへの出演で活躍する声優・勇-YOU-(林勇)によるバンドとして2013年に結成。「SCREEN mode」というバンド名は「音の『SCREEN』を、さまざまな『mode』に変化させながらリスナーの心に焼き付けていきたい」という思いから名付けられた。2013年11月にシングル「月光STORY」でメジャーデビューして以来、アニメソングを数多く手がけ、コンスタントにシングルを発表。2014年10月には1stミニアルバム「NATURAL HIGH DREAMER」をリリースし、同年11月には東京・渋谷CLUB CRAWLで初のワンマンライブを開催。チケット即完のプレミアムライブとなった。2015年4月に通算5枚目となるシングル「アンビバレンス」、7月に1stフルアルバム「Discovery Collection」をリリース。11月には初のワンマンライブツアー「SCREEN mode LIVE TOUR 2015 ~Discovery Collection~」を行う。