コミックナタリー PowerPush - 小川麻衣子 ひとりぼっちの地球侵略

“ぼっち”ミーツ・ボーイ 先輩は、孤独な宇宙人少女

小川麻衣子インタビュー

先輩は宇宙規模の壮大なぼっち

「ひとりぼっちの地球侵略」カット

──まず大鳥先輩のキャラクターがどうできあがっていったのか聞かせてください。先輩はちょっと変で、突拍子もない行動を取ったりしますが、なぜそんなキャラクターになったんでしょう?

単刀直入に言ってしまうと、そういう変な行動をするヒロインというのが、私が好きだからです。

──ツボなんですね(笑)。

はい。昔描いた読み切りでもクラスの女の子と馴染んでいない、変な行動をしている女の子を描いていて。先輩にもそういう行動をさせて、ちょっとクラスから浮かせたいなって思ったんです。

──そうやって浮かせることで、ぼっち感が強調されるんでしょうか。

そうですね。ただ先輩はひとりで地球にやってくるという、もっと宇宙規模の壮大なぼっちになってしまったので、今さらクラスメイトの中でぼっちになったところで規模が小さいかなと。

──もっと壮大な、宇宙的ぼっちに。

先輩みたいな宇宙人からしたら、地球人は虫けらというか、ゴミみたいなものなんです。対等ではない。そこから先輩がクラスメイトに対してどう対応するかと考えてみると、まあ先輩は品格のある人なので、彼女たちをバカにしたりはしないんですよ。かといって完全に馴染めているわけでもない。

──ちょっと距離感がある。

例えば、小学生たちが遊んでいる中に、大学生が小学生のふりして入っても馴染めないじゃないですか。そういう感じです。

松岡修造のような気持ちで「本気でやれよ!」って

単行本3巻で、物語は文化祭に突入。希はクラスの出し物で、ステージダンスを踊ることに。

──でも3巻に収録される文化祭のシーンでは、わりとクラスに馴染んで、みんなと踊ったりなんかもしてましたね。

そうですね、馴染んでました。やっぱりクラスメイトとの暗く沈んだやり取りは、あまり描きたくないので。先輩はクラスの中で異質なものとして目を見張られていたとしても、私は松岡修造のような気持ちでクラスメイトたちを動かしてるんです。「本気でやれよ!」「いじめんなよ!」って。

──ははは(笑)。先生みたいに、応援しながら描いてる感じなんですね。

はい。なのでみんな、いい子ですよ。あと自分で描いてて分かるんですけど、先輩ははじめのころと大分雰囲気が変わってきてますね。1巻あたりは中性的だったんですけど、だんだん女性的になってきている。口調も「~~なのかい?」ではなくて「~~なのかしら?」という感じに変わってきてます。

──それは意識して変えているのではなく?

小川麻衣子

変えてるつもりはなかったんですけどね。主人公の広瀬岬一くんとのやり取りを描く中で、キャラクターが変わってきたなとは思います。自然に成長できたなって。

──その女性っぽさは、先輩が広瀬くんにちょっとした恋心を抱いたり、そういうところから出てきているんでしょうか。

それはあると思います。先輩は性別的には女ですけど、はじめはジェンダー的には女ではなかった。それが広瀬くんという異性が出てきたことによって、相対的に変わってきたのかなと。やっぱり対等な男性がそばにいるから、女の子は女の子になるんだと思うんです。

岬一と先輩のファーストキスの行方は……!? ファーストキス(?)も果たし、順調に進むかに見えた岬一と希の地球侵略。そんな中現れたロシアからの転校生・アイラ。希の正体を知り、2人の関係を強く警戒する彼女の参加で、文化祭近づく学園生活は――!?

小川麻衣子(おがわまいこ)
小川麻衣子

1986年7月26日生まれ。福岡県出身。2005年、「こより日和!」で週刊少年サンデーまんがカレッジに入選。翌2006年、少年サンデー超増刊12月号(ともに小学館)掲載の「ブレイブ・フィスト」でデビューを飾った。2009年、犬村小六原作の「とある飛空士への追憶」で初連載。2012年「ひとりぼっちの地球侵略」をゲッサンで執筆開始。