「先輩はおとこのこ」の作者・ぽむら若手3組が未来の後輩を後押し!彼女たちはどうやってLINEマンガでデビューした?

LINEマンガによるマンガコンテスト「LINEマンガ インディーズ大賞'22」が開催中だ。同コンテストは大賞の賞金が300万円と高額なうえ、LINEマンガでのトライアル連載権をもらえることがポイント。プロ・アマ不問かつ1ページから受け付けており、応募のハードルも高くない。

コミックナタリーでは同コンテストをより周知させるべく、7月にマンガ家のおかざき真里と、LINEマンガ編集者・小林俊一氏の対談を公開した(参照:おかざき真里×LINEマンガ編集者・小林俊一、マンガ業界人が新たな才能発掘のため赤裸々談義!)。8月に公開するのは、「先輩はおとこのこ」のぽむ、「百合にはさまる男は死ねばいい!?」の蓬餅、「永妻花はマッチングしたい」のぱんぷきんによる座談会。全員20代と若手で、誰でもオリジナル作品を投稿できるプラットフォーム・LINEマンガインディーズ出身の彼女たちはどのような経歴を積んで連載作家となったのか。LINEマンガインディーズに作品を初めて投稿したときの気持ちや、読者との向き合い方、LINEマンガで描くことの利点までざっくばらんに語り、マンガ家を目指す未来の後輩たちにエールを送っている。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 武田和真

「LINEマンガ インディーズ大賞'22」

募集要項
  • プロ・アマ不問
  • ジャンル不問
  • 1ページから応募可能
  • 新作も過去作も応募可
各賞

大賞(1作品)
賞金300万円+LINEマンガでのトライアル連載権

最優秀賞(最大3作品)
賞金100万円+LINEマンガでのトライアル連載権

佳作(最大5作品)
賞金30万円

スケジュール

募集期間:2022年6月15日(水)~11月13日(日)23:59
結果発表:2022年12月13日(火)12:00頃

応募方法

専用フォームまたはLINEマンガ内の作品投稿機能・LINEマンガインディーズから応募

詳細は公式サイトでチェック!

ぽむ×蓬餅×ぱんぷきん(みなみ、舞)インタビュー

マンガ家になるつもりじゃなかった

──今日はLINEマンガで連載中の作家さんから、LINEマンガインディーズ出身の3組にお集まりいただきました。皆さんは、LINEマンガインディーズに投稿を始めた時点で明確にマンガ家になることを目指していた感じなんでしょうか?

みなみ(ぱんぷきん) 私たちに関しては、あくまで趣味として描いていた部分もありつつ、あわよくば「どこかから声がかかればいいなー」という気持ちもあって、それが半々くらいでしたね。もしそれで何もなかったら、マンガの道は諦めようと思っていました。

蓬餅 私の場合も特に「連載をしたい」みたいな思いがあったわけではなくて、「とにかく頭の中にある話を全部世に出したい」という思いだけでした。過去に1度だけ雑誌へ投稿したことがあるんですけど、そのときも自分の描いたものがどういう評価をもらえるのか試してみたかっただけで、「マンガ家になろう」とは思っていなかったです。

ぽむ 私はもともと会社員としてイラストを描く仕事をしていて、できればそれ1本でやっていきたかったんですけど、それだけだと厳しいかなと思って。「将来的に食いっぱぐれないためにも、できることを広げておこう」ということでマンガを描き始めました。

左からぽむ、蓬餅、みなみ(ぱんぷきん)、舞(ぱんぷきん)。

左からぽむ、蓬餅、みなみ(ぱんぷきん)、舞(ぱんぷきん)。

──そうやって投稿してみたらLINEマンガから声がかかってトライアル連載が始まり、今に至るわけですね。現在、ほかに仕事をしながら描かれている方は?

舞(ぱんぷきん) 実は私たち、別の仕事はしてないんですよ。

蓬餅 私も辞めちゃいました。インディーズで描き始めた当初は働いていたんですが、ちょっと特殊な職場で、仕事もけっこう過酷だったんです。それで「やっぱりこの話は伝えておいたほうがいいな」と思って担当さんにすごい長文のLINEを送ったところ、同じくらい長文のメッセージが返ってきて「今自分が仕事を辞めたいと思っていて、そのうえでほかにやりたいことがあるなら思い切って辞めたほうがいい」みたいなことを言っていただいたんです。それで「この人はめっちゃ信頼できる」と思って、その仕事は辞めました。

みなみ すごくいいお話ですね! 辞めてよかったですか?

蓬餅 そうですね。当時はなんか、病んでましたから(笑)。

ぽむ (笑)。私の場合はちょっと特殊で、会社員としてマンガを描いているんです。LINEスタンプを描いたり、外部から発注されるイラストを描いたりという仕事をしながら、手が空いたときにマンガのほうを進める感じで。

ぽむ

ぽむ

──仕事のかたわら個人でマンガを描いているのではなく、マンガも業務の一環ということですか?

ぽむ はい。なので、担当さんとの連絡窓口だったり、アシスタントさんを探したりというのも全部会社がやってくれていて。税務関係のいろんな手続きなど、やりたくない仕事は全部会社に投げています(笑)。

蓬餅 出勤して描いているんですか?

ぽむ そうです。基本的に10時に出社して、19時に退勤するまでの間に描いている感じですね。

蓬餅 はああああ、すごいホワイト(笑)。そんな職場があるんだ……。

ぽむ だから、お二方ともすごいなと思って。全部個人でやられているんですもんね。

ぱんぷきん・舞はちゃんとしている

──ぱんぷきんさんは2人組でやられているわけですけども、役割分担としてはどんなふうになっているんでしょうか。

みなみ 私たちは、よくある“原作と作画”みたいな感じではないんです。まず2人の打ち合わせでお話の概要を決めてから、私がネームを描いて作画をします。そのあとのカラーやトーンといった仕上げ作業だったり、外部とのやり取りなどのマネジメント業務を舞ちゃんにやってもらっている感じですね。それに加えて、最近はシナリオも舞ちゃんが書く体制に変えました。

 例えば「連載とは別に、賞に出す作品をもう1本作りたいよね」となったとき、私がシナリオ部分を担当したほうが時間配分として効率がいいので。

みなみ 長く読んでもらってるので、担当を変えることで“味変”にもなるかなって。せっかく2人でやっているんだから、その利点をより生かそうということですね。割と自由にやってます(笑)。

左からみなみ(ぱんぷきん)、舞(ぱんぷきん)。

左からみなみ(ぱんぷきん)、舞(ぱんぷきん)。

ぽむ そもそもおふたりはどういう出会いだったんですか?

みなみ 高校時代の同級生なんです。もともとは私が個人で少女マンガ家を目指していたんですけど、それがちょっとうまくいかず……舞ちゃんは特にマンガ好きというわけでもなくて、会話の中で「このマンガが好き」みたいな話も聞いたことないんですけど、単純に私が「この人となら一緒にやれそう」と思って。それで「やらない?」と声をかけたら「いいよ」って(笑)。

──その「一緒にやれそう」というのは、どういう意味で?

みなみ なんですかね……ちゃんとしてる。

ぽむ 「ちゃんとしてる」(笑)。

みなみ 私はあまり人との連絡とかがちゃんと取れないタイプなんですけど(笑)、彼女はそういう面で真人間だなと感じていたので。それで一緒にやり始めて、1カ月後くらいにはもう作品を作ってましたね。

一同 へえー!

──舞さんはさほどマンガ好きでもなかったということですけど、お話を作ったりすること自体に興味はあったんですか?

 正直、なかったんです(笑)。「一緒にやろうよ」と言われたとき、マンガそのものにはそこまで興味はなかったけど、そんな私でも身近に感じる「マンガという多くの人が親しんでいるものに携われる」という意味ですごく興味を引かれたんですよ。彼女がマンガ家を目指している姿を高校時代からずっと見てきていたので、まったく知らない人と組むわけではないという安心感もありましたし。

──なるほど。つまりマンガ家を目指す2人でコンビを組む藤子不二雄スタイルではなくて、どちらかというとビジネスパートナーに近いというか。

 そうですね。

みなみ その分、「永妻花はマッチングしたい」はマンガとしての面白さよりも男女トラブルのあるある的な面白さを追求するほうに特化できていて、読者さんにはそこを面白がっていただけているんだと思うんです。たぶん、普通のマンガ雑誌であれば編集さんに「そのままでは載せられない」と言われちゃうマンガなんですよね。インディーズという場で描き始めたからこそ、そのままの形で出すことができて、結果みんなが食いついてくれた。それは本当によかったなって。

 私たちの作品を出す場として、性質的にも内容的にもLINEマンガはぴったりだった。相性がよかったというのはすごく感じています。

みなみ LINEマンガ、特にインディーズという仕組みがなかったら、私たちはマンガでお金をいただけていないと思います。

彼らをダメンズだとは思っていない

みなみ たぶんお二方の作品と違って、「永妻花はマッチングしたい」の場合は読者さんもいわゆる“マンガ好き”とはちょっと違う層だと思うんですよ。基本的に、マンガを読みに来るというよりは男女間のトラブルを見に来ている(笑)。その点、おふたりの読者さんはマンガを深く愛している方が多いですよね。そこがうらやましいなという気持ちも正直あります。

蓬餅 でも、世の中全体で言えば“マンガ愛が強い人”のほうが圧倒的に少数派だから……。

みなみ 確かに、よく言えば多数派にリーチできているということではあるんですよね。ただ多数派ゆえにライトでもあるというか、離れるのも早いのかなという。

蓬餅 私は、花ちゃんが最終的に誰と結婚するのか気になりますけどね。

みなみ あははは(笑)。ありがたいです。

ぽむ マッチング相手の男性キャラがネタ切れすることとか、ないんですか?

 しょっちゅうです。

みなみ 連載開始当初は3、4パターンくらいストックがあったんですけど、すぐになくなってしまって。今は、新しいキャラクターを出すときは毎回白紙の状態から考えていってます。2人で「こういう人っているよね」というところから「そのタイプってこういうことするし、こういうこと言うよね」みたいに行動やエピソードを膨らませていって。

ぽむ 飲みながら?

みなみ シラフですね(笑)。

 飲んじゃうと、楽しくしゃべるだけで終わっちゃうので(笑)。

みなみ そうやって1回方針を固めてから作り始めてみて、「やっぱり違う」となって翌週くらいに改めてイチから考え直したりするパターンもけっこうあります。ただ、最終的にはなんだかんだで何かしら出てきますね。

ぽむ 例えば、友達から聞いた話のまんまみたいなキャラクターもいたりするんですか?

みなみ 具体的なエピソードから持ってくることはあんまりないですね。聞いた話の中で感じた気持ちから膨らませていくことはけっこうありますけど。

──例えばですけど、「読者からダメンズ話を募集する」みたいな企画とかはあり得ますか?

みなみ 全然アリだし、それができるのであればありがたいお話ですけど……ただ、ひとつ声を大にして言っておきたいことがありまして。私たちは、彼らをダメンズだとは思っていないんですよ。

 実はそうなんです。読者さんも含め、皆さんからダメンズ扱いされていますけど……。

みなみ そこに大きな誤解がある。「こういう部分を持っている人ってよくいるよね」を強調して描いているので、どうしてもクセ強めの個性的なキャラクターにはなるんですけども、決して悪い人として描いてはいないんです。むしろ、どちらかというといい人たちだと思っていて。

 みんな悪気はまったくないんです。ちょっと自分の価値観を優先しすぎてしまうだけであって(笑)。

みなみ よかれと思ってやっていることと、相手との感覚のズレを描いているつもりなんですよね。彼らはみんな花を騙そうとしているわけでもなければ、浮気をしたり暴力を振るったりするわけでもないですし。

ぽむ あの中に、ご自身の好きなタイプはいるんですか?

みなみ それで言うと、自分がいいなと思うキャラクターほど読者ウケが悪い傾向にあります(笑)。ただ、そういう反応がすぐにわかるというのはWeb連載の大きな利点ですね。コメントが想定していた反応と違った場合、それをすぐ作品に反映できるので。

──「こんなにウケるならもっと出番を増やそう」とか、逆に「減らそう」とか?

みなみ そうですね。その判断を早くできるのはむちゃくちゃいいです。軌道修正がしやすい。