LINEマンガによるマンガコンテスト「LINEマンガ インディーズ大賞'22」が開催中だ。同コンテストは大賞の賞金が300万円と高額なうえ、LINEマンガでのトライアル連載権をもらえることがポイント。プロ・アマ不問かつ1ページから受け付けており、応募のハードルも高くない。
コミックナタリーでは同コンテストをより周知させるべく、マンガ家のおかざき真里と、「先輩はおとこのこ」などを担当するLINEマンガ編集者・小林俊一氏の対談をセッティング。マンガ界の第一線で長きにわたり活躍し続けるおかざきと、新たな才能を見出すべく常にアンテナを張っている小林氏は、「面白いマンガとは何か」「コマ割りに表れる作家性」「webtoonの将来性」「マンガ家になるメリット」といったテーマで話し合う。最新のマンガ事情が作家と編集者それぞれの視点で赤裸々に明かされているので、マンガ家を目指している人はもちろん、すべてのマンガ好きに読んでほしい。
取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / ヨシダヤスシ
「LINEマンガ インディーズ大賞'22」
- 募集要項
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- プロ・アマ不問
- ジャンル不問
- 1ページから応募可能
- 新作も過去作も応募可
- 各賞
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大賞(1作品)
賞金300万円+LINEマンガでのトライアル連載権最優秀賞(最大3作品)
賞金100万円+LINEマンガでのトライアル連載権佳作(最大5作品)
賞金30万円
- スケジュール
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募集期間:2022年6月15日(水)~11月13日(日)23:59
結果発表:2022年12月13日(火)12:00頃
- 応募方法
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専用フォームまたはLINEマンガ内の作品投稿機能・LINEマンガインディーズから応募
おかざき真里×小林俊一インタビュー
面白いマンガとは
──今日は作家さんと編集者さんが揃っているということで、両者の視点で「面白いマンガとは何か」を語っていただけたらと思っています。いきなり無茶な質問をしますけども、そもそも“面白いマンガ”ってなんだと思いますか?
小林俊一 究極の質問ですね……。それに答えられるなら苦労はしないよ、という気もします(笑)。
おかざき真里 編集さん目線で面白いものと、個人目線で面白いものとはまた違うでしょうしね。
小林 例えば編集者として若い作家さんにその質問をされた場合にどう答えるかで言うと、僕は「キャラ立て」と言うでしょうね。キャラに対して“好き”とか“嫌い”とかの強い感情を抱けるかどうかが、まず1つ重要な要素かなと思います。それが“面白い”に直結するかというと、また別の話かもしれませんが……。
おかざき 私も、「買い続けていただくためにはキャラクターの魅力が不可欠だな」と思いながら描いてはいますね。それができているかどうかは棚に上げて言いますけど(笑)。
小林 いやいや(笑)。おかざき先生の作品は、幅の広さがすごいですよね。初期のCookie(集英社)に載っていた恋愛ものから「サプリ」のようなお仕事もの、「かしましめし」のようなキャラクターの心情を丁寧に描いたグルメものまで、本当に振れ幅が広い。特に「阿・吽」にはびっくりしました。
おかざき お声がけをいただいたら、なんでもやる姿勢ではいるんです。「阿・吽」に関しては完全に企画先行で、「空海のマンガを作ろう」と考えた担当さんが「誰に描かせたら面白いか」で私に白羽の矢を立てたんですよ。だから、自分的に「これがすごく描きたかった」という題材ではなかったので、すごく大変でしたね。
小林 それであれが描けるというのは、逆にすごいですね……。
おかざき 取材に基づいて描くのは得意というか、むしろ何か取材をしないと描けないタイプなんです。私はもともと広告代理店で働いていて、そこでは15秒のCMを作るために半年かけて取材をしていたんですね。そのスタイルが染みついているのかもしれない。
小林 「サプリ」で描かれているような感じのお仕事をやられていたわけですよね。
おかざき そうです。「サプリ」は第1子を出産した直後に描き始めたので、「取材に行けなくても描ける題材を」ということであの内容になったんです。結局「サプリ」を描いている間に3人産んだので、執筆期間の半分は妊娠していて、半分は授乳していました(笑)。
小林 すごい話ですね……。よく「マンガを描くにはマンガだけやっていてはダメ」ということが言われますけど、おかざき先生の作品はまさにそれですよね。マンガの勉強だけをしていては描くことの難しい、経験があってこそのものだと思います。
おかざき 今どきは読者のほうがよほど経験値が高いので、経験に基づかない描写はすぐ「これウソじゃん」とバレちゃいますから。
小林 ご出産時のお話もそうですけど、会社員時代にもマンガとお仕事を両立されていたんですよね。広告代理店って相当な激務だと思うんですけど、どうやっていたんですか?
おかざき 会社に入った当初はマンガの仕事は辞めようと思っていたんですが、上司が「会社は1から10まで自分のやりたいことができる場所じゃないから、自分の表現を100%詰め込める媒体を持てるなら持っておけ」と言って、お仕事をかなり整理してくれたんですよ。「マンガをやっているなら、それは捨てるな」と。
小林 へえー! かなり理解のある上司の方だったんですね。僕らのところにマンガを持ち込まれる作家さんにも会社勤めをしている方が多くて、よく「仕事が忙しくて描けない」みたいな相談を受けるんです。そういう方にどういうアドバイスをしたものか、いつも悩んでいまして……。
おかざき 私の場合は、マンガを描くことがストレス解消でもあったんですよ。会社の仕事は普通にストレスですし、子育ても……もちろん子供はかわいいんですけど、ストレスではあるので。だから、皆さんもストレス解消のためにマンガを描いたらいいと思います。
小林 なるほど。ということは、結局シンプルに「スキマ時間に描け」という話になりますね。今の時代、iPadとかでも描けるわけですし。
おかざき スキマ時間をいかに有効活用するかでしょうね。昔の私は本当に、5分でも時間を無駄にしたらイライラしていましたから(笑)。
小林 「この5分で1コマ描けたのに!」みたいな?
おかざき そうそう。アナログだったときは常に画板を持ち歩いて、授乳中でも描いてましたから(笑)。
小林 その情熱を持てるかどうかがカギになるんでしょうね。「時間がなくて描けない」とは言うけども、「本当に? 1コマ描く5分間すら取れないのか?」という話になってくる(笑)。
おかざき でも、それなら絵柄を変えてみるとか。描く時間がないなら、時間がない中でも描ける方法を模索することも必要だと思いますよ。
小林 なるほど! あくまでも今の絵柄を守り続けるのか、絵柄を変えてでも描き上げることを優先するのか、その選択ということですね。
コマ割りには作家性が出る
──おふたりから見て、今ヒットしているマンガにはどんな傾向があると思いますか?
おかざき なんでしょうね? 読みやすさがかなり重視されている印象はありますけど……あとは掴みと、やはりキャラクターでしょうか。全部、私が弱いポイント(笑)。
小林 いやいやいや(笑)。LINEマンガ内で言うと、webtoonと呼ばれるタテ読みフルカラー作品が全般的に強いです。中でも恋愛ものが人気ですね。
おかざき へえー、そうなんだ?
──今日の対談にあたって、おかざき先生にはあらかじめ「先輩はおとこのこ」をお読みいただきました。まさに恋愛もののwebtoon作品です。
おかざき すごく面白かったです! 今言ったキャラクターの魅力と読みやすさ、フックをすべて備えていますし。とにかくキャラクターがすごくかわいくて、あっという間に最後まで読んでしまいました。「あれ? もう終わり?」みたいな(笑)。
小林 100話あるんで、けっこう長いかなと思うんですけど(笑)。今、単行本化に向けてヨコ読みに組み替える作業をしているところなんですが、本で言うと10冊分になる予定です。
おかざき 10冊になるんだ? そう言われると、確かにけっこうボリュームありますね。
小林 組み替えるにあたって、描き足していただいている箇所もあります。やっぱり横幅が足りないケースが多いので。
おかざき 見せゴマ、決めゴマとか?
小林 そうですね。元がスマホサイズで縦長なので、大きめに使おうと思ったらどうしてもどこか足りなくなるところはありますね。
──ヨコへの組み替え自体は、原作の先生ではない方がやられているんですか?
小林 ヨコに組み替えるネームを作る専門のマンガ家さんというのが存在するんですよ。その方の手で組み替えられたものが届いて、それを見て足りないところを元の作家さんに描き足してもらう形で進めています。
──ほかの人が組んだコマ割りに、皆さん納得されるんですか?
小林 こだわりのある作家さんだと、「違う」みたいな話になることもありますね。
おかざき これは「阿・吽」を始めるときの話なんですけど、私はコマ割りがちょっと独特だから、「青年誌での掲載になるので、普通のコマ割りでネームを描いてください」と言われたんですよ。それで「わかりました」と普通のコマ割りでネームを描いたら、その編集者さんが「すみません、僕が悪かったです」と(笑)。結局、私なりのコマ割りを生かす方向で描くことになった、ということがありましたね。
小林 コマ割りには作家性が出ますからね。
おかざき そうですね、それぞれのリズムがあるというか。webtoonの場合でも、作家さんによってコマ割りはかなり違うものですか?
小林 違いますね。あくまで僕の感覚ですけど、もともとヨコのマンガを描いていた人の場合は、ヨコで作ったものをバラしてタテにしている感じの画面構成になるケースが多いです。それに対して、もともとアニメ好きだったりしてヨコのマンガの作法が染みついていない人の場合は、ノーカットの長回しみたいな感覚で描ける方が多い印象があります。
おかざき 確かに、webtoonはアニメを観ているときと似た感覚になることが多いです。「先輩はおとこのこ」もそうですけど、ギャグのコマも見せゴマも区別なく等倍に入ってくるというか。見開きマンガでは小さく描いたりするであろうところも、きっちり“1コマ”として入ってくる感じがありますよね。
小林 たぶん、ヨコのマンガって人によって“拾い方”が違うんですよ。無意識に優劣を付けながら読んでいる人が多い。タテの場合は、そういう読み手による情報の取捨選択に差異が生まれにくい部分はあるような気がしますね。
webtoonの将来性は?
──LINEマンガでは今webtoonにかなり力を入れていて、実際に人気もありますよね。ランキング上位がほとんどwebtoonで占められているくらい。
小林 そうですね。今、急激に多数の新規スタジオさんが参入されている状況です。ただ、ヒット作にはヒットしただけの理由というかバックボーンがそれぞれにあるものだと思いますし、作り手としては「webtoonだからといって必ず当たるわけではない」という感覚を忘れてはいけないと考えています。
──「あくまで形式に過ぎない」というフラットな視点が大事だということですね。
小林 また、webtoonはスマホに最適化された表現として登場して、韓国や中国ではもはやスタンダードにもなっているわけですが、「果たしてスマホは未来でもずっとこの形なのか?」という疑問も個人的にはあるんですよ。みんながメインで使う機器が別のもの、例えばウェアラブル端末などに取って代わられたとき、それに最適なマンガ表現の形も変わってしまう可能性がある。
おかざき 確かにおっしゃる通りかもしれない。昔、ガラケーで1コマずつ読むスタイルのマンガが一瞬流行りかけたことがあったじゃないですか。私はあのときも「新しいマンガのスタイルだ!」と感じて、「コマ割りをこれに合わせて変えなきゃならなくなるのかな?」と最初は思ったんです。でも、あっという間になくなってしまった。チャンネルを合わせるタイミングって難しいなと。
小林 そこで先生がコマ割りの心配をされたというのはすごいですね。webtoonもですが、長く描かれている作家さんほど「こんなものはマンガじゃない」と拒絶反応を示しそうなものですけど……。
おかざき それはないですね。私は常にフラフラしているので(笑)。
──どんなものにも常に可能性を見出そうとしておられるわけですね。吸収できるものはなんでも貪欲に吸収したい気持ちがある?
おかざき したいです。迎合したい。
小林 あはははは! 言い方(笑)。それは、CMなどを作っていた方ならではの感覚でしょうね。
おかざき そうかもしれないですね。
小林 その一方で、そもそもヨコのマンガは“作法”を知らないと読み方がわかりづらいものでもあるんですよね。ヨコのマンガの読み方が浸透していない文化圏の人でも、タテの場合はスッと読めたりする。そういう意味では、スマホが主流ではなくなったとしてもwebtoonが残っていく可能性はあると思います。
おかざき 日本でも、若い世代には「ヨコのマンガの読み方がわからない」という方も出てきているようですしね。
小林 おかざき先生が描かれる作品は、たぶんwebtoonとの親和性が高いと思うんですよ。複雑なコマ割りって心情を表現するためのものだと思うんですけど、あれを縦方向に並べることで、スクロールによる時間経過として表現できるので。
おかざき 確かに。しかも、webtoonはヨコよりも没入感がありますしね。
小林 そうですね。ただ、バトルものとかスポーツものとなると、急に難しくなるんですよ。
おかざき そうなんですか? 私はてっきり、迫力とスピード感の表現に向いているのかと思っていました。
小林 バトルやスポーツって、基本的に横の動きなので。例えばサッカーだったら、webtoonでやると全部が縦パスになってしまう。
おかざき なるほど……。キャラクター同士の位置関係を把握しづらい印象は確かにある気がします。
小林 その点、恋愛ものはそもそもヨコ組みでも位置関係がよくわからない作品も多いですし(笑)、最初からそこに厳密さが求められないので、タテにしても問題が起きづらいんだと思うんです。
おかざき 主観で語るものですしね。
好きなように描いて、応募してみればいいじゃない
──さて、LINEマンガでは現在「LINEマンガ インディーズ大賞'22」を実施中です。改めて概要を教えていただけますか?
小林 プロ・アマ問わずどなたでも応募できるマンガ賞でして、形式も問いません。ヨコ読み、タテ読み、4コマ、モノクロ、カラーなんでもOKです。ページ数にも制限はなく、1ページから応募可能となっています。大賞作品と最優秀賞作品には、賞金のほかにトライアル連載権が与えられます。トライアル連載というのは、12週の期間限定でお試し連載をしていただいて、そこで一定の読者数を得ることで本連載に昇格できる仕組みのことで、LINEマンガ インディーズにもともとあるシステムなんです。
──「先輩はおとこのこ」もトライアル連載からの昇格だったんですよね。
小林 そうですね。そういう、すぐに連載を任せられる即戦力の作家さんを発掘したいという趣旨ももちろんあるんですが、そもそもLINEマンガにインディーズという投稿機能が存在すること自体もまだあまり知られていないので、それを広く知ってもらいたいという目的もあります。
──審査基準としては、どういうところを見るんでしょうか。
小林 僕の場合はですけど、何か1つ秀でているものがあればまずは残します。あと一般的な話としては、絵が大事になってきますね。お話を作るのがめちゃくちゃうまい人と、絵がめちゃくちゃうまい人がいたとしたら、前者は仕事につながらないケースもけっこうあるんですけど、後者で仕事にならない可能性はかなり低いです。
おかざき 本当にそうですね。私もいろいろなところでマンガ賞の審査員をさせていただいたことがありますけど、やはりまずは絵を見ます。それは必ずしも画力の高さという意味ではなくて、表現したいものにふさわしい絵であるかどうかが大事。以前、担当さんから「絵はマナーだから」と言われたことがあって……。
小林 なるほど! 最低限、人様にお出しできるものであれと。
おかざき そう、ある程度整えておく必要はあるでしょうね。例えば、犬犬さんという方が描かれているTwitterで人気の育児マンガがありますけど……ものすごく簡略化された、悪い言い方をすれば落書きのような絵の(笑)。あれはあの内容だから、あの絵で正しいんです。そういう意味の“整える”です。
小林 あれはきちんとマナーに則っている、ということですよね。
おかざき 審査で読んでいると、ストーリーや設定は深く練り込まれているのに、絵がそれに付いていけていない方がしばしばいらっしゃるんです。それだったら、自分の今の絵に合わせたお話を考えることも大事かな。趣味で描く分にはそこがズレていても全然いいんだけど、賞を狙うのであれば。
小林 なるほど……あと、僕の場合はそのうえで「将来、伸びそうだな」と感じられるかどうかも基準に入ってきます。それは感覚でしかないんですけど、何かその人なりの“武器”が見えるかどうか。
──自分の“武器”とやりたいことが一致しない人もいると思うんですけど、その場合はやりたいことにこだわるよりも武器を生かすほうを優先するべき?
小林 僕はそう思います。
おかざき どうするんだろう、そういうとき……。
──おかざき先生はそういうギャップを感じられたことはあるんですか?
おかざき ありますよ。ただ、私の場合はそんなに「これがやりたい!」というものはないんです。しいて言うなら「絵が描きたい」は強くあるんですけど、それくらいなんですよね。絵を描くために、やむを得ず題材を探している感じです。
小林 そうなんですか!? じゃあ極端な話、絵だけを描いてそれが売れるなら、話は作らなくても……?
おかざき 全然いい。
小林 なんと! それであんな話が作れてしまうんですね……脱帽するほかないです。
おかざき いやいやいや、全然ですよ。
──もう1つ伺いたいんですけど、その“やりたいこと”だけを追求していたのでは、普通はなかなか賞を獲れないですよね。“やりたいこと”と“やるべきこと”って、どうすればバランスが取れるようになるんでしょうか。
小林 その質問からはちょっとズレた回答になってしまうんですけども、LINEマンガ インディーズのトライアル連載作品って、基本的にはそのバランスを取らずに描いていた人のものがほとんどなんですよ。おかざき先生のお言葉を借りるなら、“マナー”を考えずにただ好きで描いていた人たちなんですね。「先輩はおとこのこ」もそうです。
──なるほど。インディーズがそもそもそういう人をフックアップするための仕組みだということですね。
小林 そうです。なので、一番は「描きたいものを好きなように描いて、応募してみればいいじゃない!」になるんですよね。
──ありがとうございます。では最後に、応募を考えている読者に向けて「マンガ家になると、こんなにいいことがあるよ」というお話を聞かせてください。
おかざき マンガ家になると、こういうところに呼んでもらえていろんなお話が聞けます(笑)。
小林 はははは(笑)。
おかざき あと1個すごくいいのは、職を転々としてきた身からすると、必要最低限の脳みその個数で世界を作れる喜びがありますね。世の中の大抵の仕事はチームで進むものなので、映画にせよ音楽にせよ、関わる人の数が多い。その分いろんな人がいろんな意見を言ってぶつかることもあるんですけど、マンガの場合は基本的に自分1人がよしとすれば、それをそのままダイレクトに世の中へ出せるわけです。あるとしても、せいぜい編集さんの意見が入るくらい。
小林 確かにそうですね。
おかざき 総合芸術として、けっこう秀でているものだと思います。黒澤明監督じゃないですけど、「あそこの木が邪魔」みたいに思ったら……。
小林 描かなければいい(笑)。でも、その分大変ですよね? 全部を自分でやらなければいけないということでもあるので。
おかざき どうなんだろう? ストレスって、基本的には他者から来るものじゃないですか。「ここに木を置いちゃダメ」と言われることこそがストレスなので、マンガ家にはそれがほぼないと思いますよ。
──いわば、神のように振る舞える喜びがあるわけですね。
おかざき そう! 本当にそうなんです。
プロフィール
おかざき真里(オカザキマリ)
長野県生まれ。高校在学中からイラストやマンガを投稿し、多摩美術大学卒業後は広告代理店の博報堂に入社。デザイナー、CMプランナーとしてキャリアを積みながら、1994年にぶ~け(集英社)にて「バスルーム寓話」でデビューする。2000年、結婚を機に博報堂を退職。「彼女が死んじゃった。」「渋谷区円山町」「サプリ」と、映像化作品を次々と生み出した。2014年から2021年にかけて月刊!スピリッツ(小学館)で「阿・吽」を、2017年からはフィール・ヤング(祥伝社)で「かしましめし」を連載している。
小林俊一(コバヤシシュンイチ)
1976年生まれ。週刊、月刊のマンガ連載の仕事場で12年間アシスタントとして働く。専門学校で教員を経験後、2019年にLINE Digital Frontierに入社。現在の担当作品には「先輩はおとこのこ」「仁藤と田塚の日常」「百合にはさまる男は死ねばいい!?」「天野さんは誰にでも優しい。」などがある。