本当に「皆様のおかげです」と思うんだなあって
──そんな「先輩はおとこのこ」ですが、先日アニメ化の決定が発表されましたね。
でも、まだ実感がないんですよね(笑)。とりあえず発表後はすごくいろんな人から祝ってもらえてうれしかったです。中でも、私がキャラクターを描いたVTuberの子(ミュウ・ガルシア)がいるんですけど、その子が配信で「ママの作品がアニメ化されるらしいよ」みたいに喜んでくれていたのが……なんだか我が子に喜んでもらえたかのような感覚で、「すごいことになったな」って思いました。
──めちゃくちゃいい話ですね……。ぽむ先生はもともとアニメがお好きだと思うんですけど、自分の作品がアニメ化されることを夢見てきたりは?
いやあ……ぼんやり考えてはいたと思うんですけど、現実味のあるものとして考えたことはなかったですね。
──昨年の「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」では1位に輝くなど、アニメ化を期待する声もかなり多い作品でしたが。
それは本当にありがたいなあと。本来こんな表舞台に立てるような作品ではないと思いますし、読んでくれた方々にここまで連れてきてもらったような感覚ですね。作品単体の力では絶対に無理だったので……なんかそういうの、以前までだったら単行本のあとがきとかに「皆様のおかげです」みたいに書いてあるのを見ても「ケッ」て思ってたんですけど……。
──(笑)。「単にお前の実力だろ」みたいな?
そうそうそう、「思ってないだろ」って(笑)。でも実際に自分がその立場になると、本当にそう思うんだなあって。「こんなに思うんだ?」というくらい。
──スポーツ選手が言う「皆様の応援あってこそです」みたいな言葉も同じように思いますか?
あー……それはまだ思えてない(笑)。でも確かに、それも同じことですもんね。
作家として終わってしまうと思った
──現在連載中の最新作「ノアは方舟」についても聞かせてください。人魚として生まれた少年・ギノが地球規模の大災害に遭い、「姫」と自称する謎の人物に保護されるところから始まるファンタジー作品ですが、なぜこういうお話を描こうと?
とりあえず「先輩はおとこのこ」と似たような話を描いたら作家として終わってしまうと思ったので、まったく違うもの……なるべく自分が持っているものの中で一番描きにくい、描ける自信のないものをやってみたいなと。具体的にはファンタジー、宇宙、動物といったところなんですけど。どれも好きなものではあるんですが、マンガで描くとしたらどうしたらいいかわからないもの。
──「先輩はおとこのこ」で描いた学校生活などの“ありもの”ではなく、一から世界を構築していくことに苦手意識があったわけですか?
そうです。実際に描き始めてからは、余計に「すごく難しいなあ」と思ってます。あとは、読者の引っかかりの部分ですね。恋愛の要素だったり、エッチな要素だったりを排除して描くことに挑戦してみたいなと思って。
──「男の娘が後輩女子に告白される話」みたいな、説明文だけで惹き付けられるキャッチーな要素に頼らず描いてみたいと?
今ならその挑戦も許されるかなと思って。そのうえで、「ぱいのこ」で描いたもの以外で「モヤッとなった経験が何かあったかな?」と考えていったときに、思い当たったのがイルカショーで。私はもともとクジラが好きなんですけど、調べていく中で自然とイルカに行き着いて、一時期イルカショーがすごく好きだったんですね。ただ、そこからさらにいろいろ知っていくと「果たしてこれはイルカにとって幸せなのか?」という疑問も生まれてきて、それまでのように無邪気にイルカショーを楽しむことができなくなってしまったんです。そういうモヤモヤを自分の中で昇華できる話を描きたいなと思って、「ノア」の設定に行き着きました。
──やはりモヤッとする感情だったり、ままならない人間関係だったりを描きたい思いが強いんですね。
そうだと思います。
──描いていて、「先輩はおとこのこ」を描ききった経験が生きていると感じるところはありますか?
やっぱり背景ですかね。背景を描くのはだいぶ上手になったと思いますし、あとは色使いも。ストーリーの展開ごとに思い切った明暗差を付けてみたり、色調を変えてみたりといった、「ぱいのこ」ではあまりできなかったこととか、やりたくても作品の方向性的にできなかったことが今やれている感覚はありますね。
──「ノアは方舟」に限らなくてもいいんですけど、今後マンガ家として挑戦してみたいことは何かありますか?
まだ自分に何ができるのかを掴み切れていないので、もっと手広くいろんなジャンルを描いてみたいです。「ノア」がけっこうシリアスムード寄りになっているので、次はめっちゃギャグ寄りにしてみたいな、とか。あまり方向性を絞らずに、いろいろ挑戦しながら描いていきたいなと思っています。
入りやすくて、めっちゃある
──ではLINEマンガ全般のお話も聞きたいんですが、ぽむ先生はLINEマンガという媒体にどんな思いがありますか?
ほかの媒体と比べても、とにかくジャンルが広いですよね。「なんでもありまっせ!」みたいな感じなので。
──ありすぎて困るレベルですよね。
しかも新人の発掘にもかなり意欲的で、例えばTwitterでハッシュタグを付けるだけでマンガを見てもらえるような取り組み(「LINEマンガSHOW」)とか、ああいうのをやってるのもすごくいいなと思っていて。作家にとっては入口がものすごく開けていて気軽に足を踏み入れられる場所なのに、いざ入ってみるとちゃんと海外展開とか、それこそアニメ化とかにまで持っていける。その広さがすごい魅力だなあと思います。
──敷居の低さと規模感の大きさが両立しているところが最大の魅力?
そう、なんとなく入ってみたら「うわ、めちゃでかい!」みたいな。
──ちなみにLINEマンガのオリジナル作品の中で、ぽむ先生が個人的にお好きな作品は?
「生まれ変わってもよろしく」が好きです。韓国の作家さんの作品で、とにかくストーリーのわかりやすさや作品としての完成度がすごい。お話の作り方がすごく私好みで、勉強になるなあと思って読んでいますね。
──その勉強になるポイントって、具体的に言うとどういう部分になりますか?
うーん、言葉で言うのは難しいですけど……例えば私の描くマンガにはわかりにくい、ちょっとややこしいところがあるなと思うんですね。それに対して、「生まれ変わっても~」には竹を割ったような明快さがあるというか。私はたぶん迷いながら描いちゃってる部分があるんですけど、そうではなく一本筋の通った「これが正解です!」というものを突きつけてくれる、ちゃんと商品としてパッケージングされている感じ。最近よく韓国ドラマとかも観るんですけど、そこでも似たようなものを感じますね。
──わかる気がします。日本のエンタメは全般的に怒られそうな要素を排除して排除して、嫌われないように作られるイメージがありますけど、韓国のエンタメは嫌われることを恐れていないというか。
すごくムカつく登場人物が出てくる感じとかも上手ですよね。
──安心して嫌える悪役ですよね。先日取材した、オーイシマサヨシさんもまったく同じ指摘をされていました(参照:オーイシマサヨシを困らせる、圧倒的な没入感で時間を溶かしまくりのLINEマンガ)。
あ、そうなんですか(笑)。あとは、私と同じ「LINEマンガ インディーズ」出身の作品だと「百合にはさまる男は死ねばいい!?」が好きです。私、明るい女の子が闇を抱えているような話が好きなので。
──咲みたいに。
そうそう(笑)。そういう意味で相川ちゃんはすごく魅力的なキャラクターだなあと思ってます。
──ありがとうございます。ではまとめに入らせていただきますが、「ぽむ先生にとってLINEマンガとは?」をひと言で表すとしたら、どう言いますか?
そうですねえ……こういうの、「カッコいいこと言わなきゃ」って思っちゃうんですけど……。
──NHKの「プロフェッショナル」でいうところのキメの部分ですからね。
あはは。えーと、LINEマンガとは……(しばし考えて)「イオン」みたいな(笑)。
──それは化学用語のほうじゃなくて、スーパーマーケットのほう?
そうです。入りやすくて、めっちゃある。
──なるほど!
マンガ家としての今の状況を考えたら、「ちっちゃい池で遊んでたはずなのに、いつの間にか川にいて、気付いたら海まで流されちゃってた」みたいな感覚ではあるので、それを何かうまく言えたらなとも思うんですけど……。
──いや、でも「イオン」は言い得て妙だと思います。先ほどのお話もちゃんと回収できていますし。
じゃあ「イオン」で(笑)。
祝・LINEマンガ10周年!
ぽむが「先輩はおとこのこ」のまこと&「ノアは方舟」のギノのイラストを描き下ろし
10周年おめでとうございます!
いち読者として利用していたLINEマンガに、このような形で関わることができてとってもうれしいです。
これからもまことやギノたちが愛されるようにがんばります~!!
プロフィール
ぽむ
兵庫県出身のマンガ家・イラストレーター。2019年12月にLINEマンガで「先輩はおとこのこ」の連載を始め、2021年12月に完結。現在はLINEマンガにて「ノアは方舟」を連載中。また「ジャージ君」「ジャージちゃん」「くるみちゃん。」などのLINEスタンプでも知られている。
「LINEマンガ10周年」特集
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©pom/LINE Digital Frontier