コミックナタリー PowerPush - ヴィクトル・ユーゴー / 新井隆広「LES MISERABLES」
「ダレン・シャン」の俊英が描く「レ・ミゼラブル」コミカライズの決定版
第3話は打ち合わせのときからさらに増えて106Pも
──「LES MISERABLES」は1話分のページ数も相当多くて、かかる労力はやはり相当なものだと思います。第3話にいたっては106ページという大ボリュームですが、この量でいくことは最初から決まっていたんですか?
いや、とりあえず自由にネームを切らせていただいたら、そのままOKが出ちゃったという感じですね。第3話は最初の打ち合わせのときは、「60ページぐらいだと単行本にもちょうどいいから、それぐらいでいけたら」って話してたんですけれど。いざネームを切ってみたら100ページぐらいになってしまって。
──それはまた、相当増えていますね。
で、ちょっと多いですよねって担当さんに相談したら「最後の収まりが悪いから、もう少し増やしてもいいんじゃないか」って言われて(笑)。
──そこからさらに増えている(笑)。
そうなんです。正直106ページは、描いてて「あ、終わらないな」って思いましたけど(笑)。でも前半の53ページ分を過ぎると、帰り道だと思ってがんばれました。
──今作は、ここぞというときの見開き表現も印象的ですよね。1話にたっぷりページ数を費やせるのは、そういった点でもいい方向に働いているように思えます。
そうですね。「ダレン」をやっていたときは、原作1冊をマンガの単行本1冊に収めるという制約が、かなり厳しかったところがあって。「LES MISERABLES」は本当に伸び伸びと描かせていただいてます。やはり見開きは、マンガで表現できる最大の面積ですから。それを使って重要な部分をどーんと強調して描けるのは、マンガならではの強みだと思いますね。
原作ファンにも「こういうのもいい」と言ってもらえれば
──「レ・ミゼラブル」はミュージカル版や映画版のファンも非常に多い作品ですが、そういったファンにマンガ版を届けるのはすごくプレッシャーがかかりそうですね。
そうですね。実は僕、マンガの実写版とか小説の映画化とかって、最初に見たものが自分のベストになってしまうんですが……。
──と、言いますと?
原作を読んだあとに映画になって映画を観たら、原作のほうがいいよってなってしまうんですが、映画版を最初に観たら、原作よりも映画が僕の中でベストになってしまうという。あまりポリシーがないとも言えますが(笑)。
──(笑)。
ヴィクトル・ユーゴーに怒られないように
──最後に、今後の執筆への意気込みを伺ってもよろしいでしょうか。
そうですね……せっかく「完全マンガ化」って銘打っていただいてますので、ミュージカル版や映画版で省かれた部分はなるべく拾っていきたいな、と。
──これからも、原作のあんなシーンやこんなシーンがどのようにマンガになるのか楽しみです。
原作を読まれたことがない読者も手に取りやすく、気軽に読んでいただけるものになるよう、精一杯頑張ります。また、このマンガを読んで面白いなと思ってくださったら、やっぱり原作やミュージカルも、並行して楽しんでもらえたらと思いますね。本当に、素晴らしいを通り越して凄まじい原作なので。あとはもう、原作者に怒られないように……。
──ヴィクトル・ユーゴーにですか?(笑)
そうですね。死んだ後にあの世でユーゴーから、マンガ版について「お前、あそこの解釈違うんだけど」って……怒られずに済むようにしたいです(笑)。
世界的超大作、完全マンガ化!!
世界中で児童書、舞台、音楽、映像となり、様々な形で愛されてきた人間賛歌。だが、文豪ヴィクトル・ユーゴーが執筆した「原書」はあまりの難解さに読破が難しいと言われ続けてきた。その「原書」の物語に、俊英・新井隆広が挑む!! 誇り高き人々が命を懸けて果たした“使命”。圧倒的スケールの物語が、超絶筆致で「完全」に蘇る!! 堂々の第1巻!
新井隆広(あらいたかひろ)
1982年6月16日神奈川県生まれ。2004年、少年サンデー超(小学館)にて「グランバトラー」でデビュー。2006年より週刊少年サンデー(小学館)にて、ダレン・シャンの小説を原作に「ダレン・シャン」を連載。吸血鬼となってしまった少年を描き、低年齢層を中心に人気を集めた。2013年よりゲッサン(小学館)にて、ヴィクトル・ユーゴーの名作をマンガ化した「LES MISERABLES」を連載中。