コミックナタリー Power Push - おがきちか「Landreaall」
連載16年目にして祝・アニメ化! ランドリ誕生からキャラクターの作り方まで語るロングインタビュー
恋愛描写が苦手
──今まで描いた中でお気に入りのエピソードは?
舞踏会の話が好きですね。要素がいっぱい詰まった話を描きたくて。ルーディーがチケットを偽造するところから始まって、ドレスを洗っている幽霊、竜胆の女装とカイルの恋愛、イオンが男性側のステップを習う場面、描きたかったポイントがいろいろあって自分では気に入ってます。
──逆に大変だったのは?
DXとディアの恋愛の話ですね。実は恋愛描写が苦手で。できれば避けて通りたいんですけど、もう逃げられない状況に……(笑)。ディアは実はかなり初期から考えていたキャラなんですが、ディアを描くとDXの恋愛について描かなきゃいけないから、ずっと逃げていて(笑)。だから今はかなり苦しいです。
──でもちょうどいいタイミングですよね。マリオンへの気持ちが薄れた頃にディアと出会って。
個人的にはもっと時間が経ってもよかったんですけどね。なんとなく、ランドリに色恋要素はいらないんじゃないかって思っちゃうんですよ。アニメにもDXとディアのいいシーンがあるんですけど、「なくてもいいんじゃないですか。あのシーン削ってアクション入れましょうよ」って提案したり(笑)。
──ほかに苦労したことは?
クエンティンの話も苦労しました。クエンティンは、美形要素が必要だなと思って作ったキャラなんですよ。やっぱり乙女ゲー要素として投入しておこうと思って。片目が隠れててまつげが長くて、暗い過去があって、主人公にスキンシップ過多で絡んでくる、謎のアンニュイな美形(笑)。
──ランドリにはあまりいないタイプですね。
最初に美形キャラとして描いたのは、実はレイ先輩で。「美形でメガネで先輩で白衣で秀才、いける!」と思って登場させたはずなのに、イメージしてたのと違う感じになって……(笑)。こりゃいかんと思ってクエンティンを作ったんですが、ちょっと焦って早く出しすぎたんですよね。結果、いろんなエピソードを跨いで登場することに。エピソード3本分ぐらい引っ張って、最後一気に解決させるという……まとめるの大変でした(笑)。
リアルを追求すると表現を縛ってしまう
──ファンタジーを描くうえで気を使っていることは?
ちゃんと知識を入れておくことですね。基本的に架空のお話ですけど、ヨーロッパの歴史とか、騎士道の成り立ちや制度、国の政治についてはいろんな本を読みましたし、調べないと嘘を描くにしても薄っぺらくなっちゃうので。で、敢えてそのままでは使わないってことの繰り返しです。
──そのまま使わないというのは?
リアルを追求していくと表現を縛ってしまうと思うんですよ。例えば、私はアクションシーンを描くのに、中国拳法のマニアックな流派をモデルにしているんですけど、詳しくなってくると、組手のときにジャンプをして攻撃するのがナンセンスに思えてくるんですよ(笑)。でもそういうのは逆によくないと思って。マンガとしての表現の幅が狭まりますから。
──知識としてあるとないとでは、やっぱり違いますか。
違いますね。想像力には限界がありますし。それに読む人の頭の中にもヨーロッパの知識とかイメージがあると思うので、その引き出しを刺激したいし。読む人のイメージが湧くような、取っ掛かりになるようなものを描くことを意識してます。
──元々ファンタジーがお好きなんですよね。
はい。特に海外のファンタジー小説が大好きで。「魔法の国ザンス」という長いシリーズがあるんですが、その世界の“1人1個、なんらかの魔法の力を持っている”っていう設定が好きで、ランドリもその影響を受けてると思います。
──ほかにはどんな作品を読まれているんですか?
古典も面白いのですが、現役の作家さんが好きで、最近はアメリカの作家さんを読んでいます。同じ設定でもアメリカの作家さんが書くと、根の明るさが出ていて、私に合っているなと。でも海外のファンタジー小説って翻訳される作品も少ないし、日本に来るのもすごく遅いんですよ。だからランドリを読んでファンタジーに興味を持ってくれた人に、「海外のファンタジー小説が面白いよ」と伝えて、それで読者が増えて翻訳が増えてくれればいいなと本気で思ってます(笑)。
アニメとマンガは別物として楽しんでほしい
──本編の今後の展開について少し教えてください。
今後はまたアカデミーに戻って、仲間たちとこぢんまりとした楽しい話を描きたいです。進路問題もあるんですが、しばらくは小さな規模で冒険をしていこうかなと。レベル上げをしているDXたちを楽しんでもらいたいなと思います。
──では最後に、これからアニメを見る読者さんに向けて。
私は、アニメはアニメとして面白ければいいと思ってます。原作にない出来事がアニメだけで起こったり、アニメだけに出てくるアイテムがあっても構わなくて。むしろそのほうが、アニメにしがいがあるんじゃないかなって思います。そういうところを楽しんでもらいたいですね。
- おがきちか「Landreaall(29)」 2017年2月25日発売 / 一迅社
- コミック 限定版 / 4212円 オリジナルアニメDVD付
- コミック / 626円
- Kindle版 / 432円
クレッサールでの一件も決着し、アカデミーに戻ってきたDX。だが、補講にレポート、報告書と……まだまだ日常は遠そうだ。一方、王城に戻ってきたメイアンディアは、DXに別れを告げてファラオン卿の元へと戻っていた……。
「Landreaall」オリジナルアニメ
DVD総尺約30分 / 折込特典:ブックレット(描き下ろしマンガ、キャスト座談会、キャストコメント、設定資料収録)
キャスト
- DX・ルッカフォート:鈴村健一
- イオン・ルッカフォート:榎本温子
- 六甲:津田健次郎
- 竜胆:平川大輔
- ライナス:諏訪部順一
- ルーディー:杉田智和
- フィル: 鈴木千尋
- ティ・ティ:阪口大助
- 五十四:西村ちなみ
- カイル:高橋広樹
- レヴィ:金光宣明
- チルダ:小松里歌
- ディア:川澄綾子
- トリクシー:弓場沙織
- マクディ:中澤まさとも
- 学長:加藤亮夫
- ゼクスレン:小手伸也 ほか
スタッフ
- 原作・監修:おがきちか
- 監督:合田浩章
- キャラクターデザイン:猪股雅美
- 脚本:木村暢
- 音響監督:原口昇
- 制作:ウィルパレット
おがきちか
2000年にヤングキングアワーズ増刊アワーズ2001(少年画報社)に掲載された「仔羊は迷わない。」でデビュー。2002年より月刊コミックZERO-SUM(一迅社)にて「Landreaall」を連載中。著作に「エビアンワンダー」「エビアンワンダーREACT」(一迅社)、「ハニー・クレイ・マイハニー」「パルパル&ロケッタ」(少年画報社)、「侍ばんぱいや」(太田出版)などがある。