コミックナタリー Power Push - おがきちか「Landreaall」
連載16年目にして祝・アニメ化! ランドリ誕生からキャラクターの作り方まで語るロングインタビュー
王位継承候補者・DXと彼を取り巻く仲間たちの成長と冒険を描く、おがきちかの本格ファンタジー「Landreaall」。月刊コミックZERO-SUM(一迅社)にて2002年にスタートし、今年で連載16年目に突入している。このたび、同作がファン待望のアニメ化。主人公・DXが所属するアカデミーを舞台にした約30分のオリジナルアニメが、2月25日発売の最新29巻限定版に付属するDVDに収録される。
コミックナタリーでは初のアニメ化を記念し、おがきにインタビューを実施。アニメ化についての率直な気持ちや、ランドリの誕生秘話、さらにキャラクターの作り方や動かし方、エピソード制作についての個性的な創作スタイルまで、たっぷりと話を聞いた。
取材・文 / 増田桃子
アニメの内容はコンペで決定
──初のアニメ化ということで、まずは感想を聞かせてください。
作者としては、アニメ化されたってことが素直にうれしくて。チェックのために途中段階のものも観せてもらったんですけど、普通に楽しく観てました(笑)。私が考えたお話ではないのもあって、何度観ても新鮮で。自分で考えた話だと、目新しさがなくなってしまうから。
──内容はアカデミーのメンバーが、レースバトルを繰り広げるオリジナルエピソードです。
最初からオリジナルの話をやるのは決まっていて。シナリオを持ち寄って、ちょっとしたコンペをやったんです。実は私も参加したんですけど、全然採用されず(笑)。どうして駄目なのかを、オブラートに包んで丁寧に説明していただいたんですけど、まあ簡単に言うと「地味ですね」と(笑)。私も、多分私が考えたのじゃ駄目だろうなって思っていて。やっぱりアニメのプロの人が、アニメ用に考えたほうが絶対面白い作品ができると思いました。
──マンガで表現できるものと、アニメで表現できるものって違いますしね。
そうですね。やっぱりマンガはマンガ用に描いているので、そのまま映像化しても必ずしも面白くなるとは限らないと思います。
キャラクターさえブレてなければ大丈夫
──制作には監修という形で関わられていますね。
アニメのスタッフさんが原作を読み込んでくれていたので、内容についてはおまかせしました。今まで何度かドラマCDを作っていただいたんですが、その経験で「キャラさえブレなければ何が起こっても大丈夫」とわかっていましたし、私としてはキャラのセリフを確認させてもらえればいいかなと。
──では、セリフのチェックのみ?
はい。セリフだけは遠慮なく直させていただきました。それ以外の部分は、私よりも監督さんがとてもこだわってくださって。監督さんには「監督さんが考えたものを作っていただければ」って言ったんですけど、「作者のこだわりを知りたいから」とおっしゃって、いろいろと細かい質問に答えました。聞かれれば私も言うことはあるから。
──監督さんからの質問に、答えられなかったことはありましたか?
ありましたね(笑)。でも聞かれて「どうだろう?」って考えることはあっても、悩むことはなくて。そこですぐに答えが出てくるのは、自分でも不思議だなと思いました。
──例えばどんな質問があったんですか?
衣装とか町並みの細部、王城の広さ街の広さ国の広さ、そういう部分はマンガで描いていないし……。私は絵に対するこだわりが全然なくて、最低限の労力で済ませたいって心に強く思っているんで(笑)。あとアクションシーンの話もしました。格闘技はどんな流派をモデルにしているとか、武器のイメージとか、主人公たちは忍者の修行をしてて……とか。おかげでアニメは、すごくランドリらしい動きになっているんじゃないかな。
──作画も原作のイメージ通りだなと思いました。
私から見ても、とても似てるなと思います。なんか自分の絵をきれいに整えたみたい(笑)。声優さんたちも、ドラマCDからずっと一緒なので馴染みがあるし、本当に違和感ないです。
──キャストもDX役の鈴村健一さんをはじめ、豪華な方々ですよね。
最初にドラマCDを作ったときに、メーカーさんが候補を出して下さったんですが、当時、名前が出はじめたくらいの方々が多かったんです。杉田(智和)さんですら声のサンプルがなくて。きっと、メーカーさんに見る目があったんでしょうね。
──候補の声優さんの中から、おがきさんも選出に参加されたんですか?
はい、いっぱい聴いて一生懸命考えました……。洋画や洋ドラが好きなので、吹き替えの声優さんはよく知っているんですけど、アニメの声優さんには詳しくなくて。でも凝り性なので候補の方の声を聴きまくっていたら、結構声優さんにハマっちゃいました(笑)。
きっかけは「かたあしだちょうのエルフ」
──ではマンガについてのお話も伺いたいのですが、まず「Landreaall」を描きはじめたきっかけについて教えてください。
ランドリは元々同人誌で描いていた作品で、最初に描いたのは「クレシェンドマリオン」という、1巻の最後に載っているDXの両親とマリオンの話です。きっかけになったのは「かたあしだちょうのエルフ」という絵本。とても強いダチョウがサバンナを守るために戦うんだけど、怪我をして動けなくなって最後は木になってしまう話で、サバンナの動物たちも最初は感謝してるんだけど、だんだんダチョウのことを忘れていく、という展開が子供心に酷いなと思って(笑)。大人になれば、そういう諸行無常みたいなものもわかるんですけど、当時の私はダチョウが忘れられちゃうのは納得いかなくて。じゃあ自分でもそういう話を考えてみよう、と思って描いたのがDXの両親とマリオンの話なんです。
──「クレシェンドマリオン」を描いてみて、何か変化はありましたか?
やっぱり納得できなくて(笑)。「マリオンを幸せにしてあげるべき!」って思って。死んでしまうキャラにも意味があるでしょうけど、好きなキャラには生きててほしいじゃないですか。特に当時、私はパロディの同人誌を描いていて、元の話の続きを自分の好きなように描くことに楽しみを見出していたので……。だから、自分の作品もそれと同じ感覚で続きを描いてみよう、ってことで描きはじめたのがDXを主人公にした「Landreaall」なんです。
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- おがきちか「Landreaall(29)」 2017年2月25日発売 / 一迅社
- コミック 限定版 / 4212円 オリジナルアニメDVD付
- コミック / 626円
- Kindle版 / 432円
クレッサールでの一件も決着し、アカデミーに戻ってきたDX。だが、補講にレポート、報告書と……まだまだ日常は遠そうだ。一方、王城に戻ってきたメイアンディアは、DXに別れを告げてファラオン卿の元へと戻っていた……。
「Landreaall」オリジナルアニメ
DVD総尺約30分 / 折込特典:ブックレット(描き下ろしマンガ、キャスト座談会、キャストコメント、設定資料収録)
キャスト
- DX・ルッカフォート:鈴村健一
- イオン・ルッカフォート:榎本温子
- 六甲:津田健次郎
- 竜胆:平川大輔
- ライナス:諏訪部順一
- ルーディー:杉田智和
- フィル: 鈴木千尋
- ティ・ティ:阪口大助
- 五十四:西村ちなみ
- カイル:高橋広樹
- レヴィ:金光宣明
- チルダ:小松里歌
- ディア:川澄綾子
- トリクシー:弓場沙織
- マクディ:中澤まさとも
- 学長:加藤亮夫
- ゼクスレン:小手伸也 ほか
スタッフ
- 原作・監修:おがきちか
- 監督:合田浩章
- キャラクターデザイン:猪股雅美
- 脚本:木村暢
- 音響監督:原口昇
- 制作:ウィルパレット
おがきちか
2000年にヤングキングアワーズ増刊アワーズ2001(少年画報社)に掲載された「仔羊は迷わない。」でデビュー。2002年より月刊コミックZERO-SUM(一迅社)にて「Landreaall」を連載中。著作に「エビアンワンダー」「エビアンワンダーREACT」(一迅社)、「ハニー・クレイ・マイハニー」「パルパル&ロケッタ」(少年画報社)、「侍ばんぱいや」(太田出版)などがある。