私の思う「かわいい」が伝えられる絵になっていたらいいな
──この20年間の活動を振り返って、特に思い出深い出来事や印象的な出来事があれば教えてください。
「原稿をデジタルにするぞ!」と決めた日のことはよく覚えています。締め切りの日ヘトヘトでトーンまみれ紙まみれの部屋に突然嫌気がさして、もう次からフルデジにする!と心に決めてがむしゃらにイチからデジタル作画の準備を始めてわからないことを覚えていくのがすごく楽しかったです。あとはアニメ化が決まってから放送までの間はうれしさやら緊張やらでずっとテンパってました。
──いつからフルデジタルに移行されたんですか?
マンガは「学ベビ」の42話からですね。
──現在はどんな環境で作業されているのでしょうか。
パソコンはiMac Pro、液晶ペンタブレットはCintiq Pro 24 PTを使っていて、トーン・仕上げ・カラーなどの作業をしています。ネーム、線画はiPad Proで描いていて、ソフトはどの作業もCLIP STUDIO PAINTが主です。カラーイラストはたまにアナログ水彩で塗ったものをスキャンして、クリスタで調整したりすることもあります。
──絵を描くのとお話を考えるのは、どちらが好きですか?
圧倒的に絵が好きですね。とにかく絵を描く仕事をしたくてマンガ家を選んだので。うまく描けなくて苦しい気持ちにもなったりしますけど好きです。お話を考えるのは「面白いと思ってもらいたい!」という欲のほうが強くて苦しさが大きいです。これは連載を描かせてもらえるようになった頃からかな。その分、面白かったと感想がもらえたときにこれでもかと言うほどうれしくなるので、なんだかんだで楽しいんですけど。
──ご自身の絵柄で、特徴や個性のある部分はどこだと思いますか?
読むときは癖の強めの絵も大好きなんですが、私の描きたいマンガの絵の理想は、上手で個性はあんまりない絵なんです。個性というよりクセがない絵かな? あくまで理想で、自分の絵を見ると自分の絵だなあ、下手だなあと感じるので、至らない部分が個性なのかなと思ったりしますね。描いているときはうまく描けた!と思って描いているんですけど、時間が経って見るといつも、あれ……?ってなります。あとはかわいいものが好きなので、私の思う「かわいい」が伝えられる絵になっていたらいいなと思います。
──それはしっかり伝わっていると思います。ではこれまでのマンガ家としての活動の中で最もうれしかったこととつらかったことはなんでしょうか。
読者さんからのお手紙とかTwitterで感想をもらったりするのがずっと一番うれしいことですね。つらいのは時間がなくて思い通りに作品が作れなかったときかな……。思い通りになんてなかなかいかないんですけど、理想はちゃんと毎回自分で面白いものが描けた!と思ったものを読んでもらいたいので。でも一応そのときにできるベストは尽くしているつもりなので、そういう不安な出来のお話も読者さんに楽しんでもらえたら好きなエピソードになったりします。
現実的になりすぎず、でもちゃんと共感してもらえるような
作品を作りたい
──現在、コミックナタリーにてLaLaの45周年を記念した特集が展開中です。よろしければ感想をいただけますか?
私の大好きな尊敬する作品が並ぶ年表の中に自分の作品も紹介していただけていて、しみじみうれしくなりました。第1回のあきづき先生のインタビュー記事も、ただのファンとしても同業者としても読み応えがあって面白かったです。第2回も読むのが今から楽しみです!(取材は6月中旬に行われた) 今回のインタビューで、前の連載の「お兄ちゃんと一緒」への質問もしていただけたり、自分のことを振り返るきっかけをもらえたのもうれしかったです。
──LaLaの作品にまつわる思い出があれば教えてください。
中1の頃友人の家で読ませてもらってLaLaを知りました。桑田乃梨子先生の「おそろしくて言えない」が載っている雑誌があって、それを読んで桑田先生の作品が大好きになったんです。ギャグとか恋とか友情とかいろんなバランスが本当に好みで理想です。岡野史佳先生の「ハッピー・トーク」も好きでした。絵がかわいいと思ってコミックスを買って、お話も夢があって温かくてワクワクして、好きだったなあ。
──では現在のLaLa連載作品で、特にお好きな作品、毎号楽しみにしている作品などがありますか?
あきづき空太先生と縞あさと先生の絵柄が大好きで、好きなコマの絵とかしばらく眺めていられるレベルなんですが、最近はお話も謎があったりモヤモヤしてたり、脇キャラのロマンスもあったり気になる展開が続いているので毎号楽しみにしています。「機械じかけのマリー」もかわいくて楽しくて好きですね! ほかの作品もいろいろ楽しんでから最後に「夏目友人帳」を読んで、今回もいいお話だったと鼻を啜って毎回雑誌を閉じてます。
──交流のある白泉社作家さんはいますか?
林みかせ先生とか天乃忍先生、仲野えみこ先生、斎藤けん先生、あとはマンガParkで活躍している花宮初先生とか。今は白泉社で描かれてませんが高木しげよし先生、モリエサトシ先生も。頻繁に話すという感じでもないんですけど、みんなでマンガの話をするとすごく楽しいです。あとは新年会で田中メカ先生、緑川ゆき先生とお話しできたり、草川為先生と何回か遊んでもらったことがあるのも自慢です。
──LaLaで連載するにあたり、意識していることやこだわりはありますか?
LaLaは自由さもありつつやっぱり少女誌なので、実際の年齢性別はともかく少女的な目線で作品を楽しみたい人が主に手にしてくれている雑誌だと思っているんです。だからできれば男性キャラはカッコいいと思ってもらえるように、現実的になりすぎず、でもちゃんと共感してもらえるような内容にしたいと思いながら描いています。結局はそれが自分の好みの話という部分が大きいですが。
──45周年を迎えたLaLaに、今後どんな雑誌になっていってほしいですか?
こうなってほしいとかはないですが、新人作家さんの作品をみていて変わらずあるときめきだとか今の時代らしい自由さやパワーだとか、時代に流されない骨太なお話だとか、いろいろな作品の色を楽しみながら、LaLaはこうやって続いていくんだなあとワクワクしてます。
──最後に先生のファン、またLaLaの読者にメッセージをお願いします。
私が20年楽しくマンガを描いて来られたのは、間違いなく作品を読んで支えてくださった読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます! これからもLaLaの素敵な作品と一緒に、私も楽しんでもらえるマンガがお届けできるようにがんばりますね。
2021年9月24日更新