ナタリー PowerPush - 今日マチ子「みかこさん」「みかこさん」

4巻を数え切なさを増すティーンズライフ 作品とともに進化し続ける作者の歩みを追う

モーニング×コミックナタリー

「今日さんのこと、勘違いしていたよ」

──そうこうしてる間に、ご自身のサイトで続けていた「センネン画報」が本になって、文化庁メディア芸術祭で賞をとって。

そうですね。こしの先生のところにアシスタントに入ってから、忙しくて佐渡島さんのところにはほとんどネームを持っていけてなかったんです。1年くらいは空いたと思うんですけど、その間に「センネン画報」の単行本が出たので、さすがに黙ったままではいけないと思って本をお送りしたんです。そしたら連絡が来て(笑)。

──どんな感じでしたか。

「今日さんのこと、勘違いしていたよ」みたいな感じだったと思います。「センネン画報」的な感じでいいので、新しい作品のネームを切ってみませんかって。

リコーのGR DIGITAL Ⅲは、資料用の風景撮影に用いるほか、作中にたびたび登場する重要なアイテム。

──そこのところが、佐渡島さんっぽいですよね。あんまり固執しないというか、こっちのほうがいいんだってわかったら、切り替えが早い。

しょうがないと思ったんでしょうね(笑)。

──実は僕、ちょうどその頃に佐渡島さんと今日さんの話をしているんです。「『センネン画報』の人知ってる?」って聞かれたので、知ってる知ってる、って。「あの人にめくりのあるマンガを覚えてもらったらいいんじゃないかって思ってるんだ」って言っていましたね。ただそれを聞いてから「みかこさん」が始まるまで、ちょっとまたブランクがあったから、どうしてたのだろうと。

ネームを書き溜める時間というのが必要で、半年くらい準備のためにひたすらネームを切って、ダメ出されて戻ってとか、そういう時間が、かなりありました。

──どこにダメを出されましたか。

どうしても私はオチがない感じで、「センネン画報」が4枚並んでいるみたいな感じで描いてしまうので、それはモーニング的に言うと「なんだかわからない」と。もうちょっと盛り上げるとか話の流れを作ってあげるとか、そういうことを調整しましたね。

──「センネン画報」のままでいいって言われたのに(笑)。

まあでも、そういう作り方も面白いというか、楽しいと感じていましたね。あと登場人物の気持ちを確かめるとか。

──確かめる?

このときみかこは何を考えていたんですか? って聞かれると、それまでは「読んだ人が感じたとおりでいいんじゃないですか」って答えていたんですけど、それじゃダメだ、って。それで登場人物の気持ちをちゃんと確認しながら進めていきました。ちょうどその頃にいまメインで担当していただいている竹本さんが入って。


最初「みやこさん」だったんです。私の字が汚いせいで……

──その頃はもう「みかこさん」ってタイトルだったんですか?

「みかこさん」135話より、比較的めずらしい、今日の描き文字。。

最初「みやこさん」だったんですよ。それが私の字が汚くて、佐渡島さんが「みかこ」って読んでいて。あ、違います、みやこです、って言ったんですけど「みかこのほうがいいよ!」ってことで、「みかこさん」になってしまったという。

──すごいいい話じゃないですか(笑)。ちなみにみやこはどういった意味だったんですか。

当時の知人に「みやこ」という名前の女子高生がいて、かわいい名前だなって前から気に入っていたので付けたんですけど、あっけなくみかこになってしまいましたね(笑)。「こっちのほうが響きがいいですよ」って。

──それも佐渡島さんらしいなあ。緑川は?

みかこのイメージカラーが赤なので、その補色というか、対抗する名前。佐渡島さんの命名です。すごいネーミングセンスだと思います。

──いまって佐渡島さんは、まだ担当なんですか。

たまに(笑)。たまに校了紙を見て「すごいイイじゃん!」とか言う感じで、実務的には竹本さんと作っています。

──ネームの前にプロットみたいのはありますか。

「みかこさん」のプロットに相当するアイデアメモ。

プロットと言えるものではないんですけど、要点は一応ノートに何行か書き出して、そこからネームを切る感じですね。ただ初期はほんと「リップバーム」とだけ書いて、そこからひたすらコマを割るみたいな感じだったのが、いまはもう、ナオちゃんが悲しい気分で、それを回収するのは誰で、みたいなストーリー上の条件があるので、それを満たすコマ割りというか、ものすごく頭を使う方向になりましたね。

──ドラマが続いていますもんね。

ほんとのマンガ家の人はそういうことをあまり考えないでできるからプロのマンガ家なのかもなって思ったりするんですけど、私は一生懸命書かないと。

──また「ほんとの」マンガ家っておっしゃいましたね。

いやもう、「私は偽物のマンガ家だからスイマセン」というのが抜けませんね。

今日マチ子「みかこさん(4)」 / 2011年10月21日発売 / 930円(税込) / 講談社

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あらすじ

市村みかこ、17歳。高校3年生。席替えで隣に座った緑川はいまどき赤えんぴつを使う変な奴。親友のナオはおしゃべりな女の子。そして、みかこに好意を寄せるカトーくん。

穏やかに終わるはずだった高校生活は、4人の関係の変化とともに徐々にその色を変えていく。みかこ、緑川、ナオ、カトーくん。4人の青春が、もつれて絡まって。

今日マチ子(きょうまちこ)

アーティスト写真

漫画家。東京都出身。ほぼ毎日更新しているブログ・今日マチ子のセンネン画報が太田出版より書籍化され注目を浴びる。無類の猫&カメラ好き。

著書に「みかこさん」1~4巻(講談社)、「cocoon」(秋田書店)、「センネン画報」「センネン画報 その2」(太田出版)、「かことみらい」(祥伝社)など。

連載は、マンガ・エロティクス・エフ(太田出版)掲載の「U」、エレガンスイブ(秋田書店)掲載の「アノネ、」、ジャンプ改(集英社)掲載の「みつあみの神様」など。ブログ・今日マチ子のセンネン画報もほぼ毎日更新中。